世界がバグりすぎて家に帰るだけで命がけな件について
皆様、こんにちは。かるみあです。
ぜひゆるーく見ていってください。
「もうやだ早く帰りたい……」
あの全米が泣いた五時間目から少したって、今は帰りの会。
相変わらず机ごと天井に突き刺さってる奴や後ろの壁に紙は数枚突き刺さったままなのだが、やっぱり誰も気にとめない。
ちなみに、体操服のテクスチャが終わってた子は制服のテクスチャも入れ替わっている。シュールで逆に笑えてくる。あれで歩けるのが不思議だ。
「……ということだ。それでは、日直」
「はい。起立、礼」
「「「ありがとうございました」」」
「それじゃあ、気をつけて帰れよ〜!」
ようやく帰りの会が終わった……早くこんな学校からおさらばしないと……
靴箱が混む前に全速力で階段を駆け下りて下駄箱へ直行。
ちなみに、この学校に部活はある。私は入ってないけどね。
……なんでかって? 今日一日見てみてよ、これで部活入ったら私救急車行きだよ。
1の5、36番と書かれた靴箱を開ける。
……中から靴が、ポップコーンのように無限リスポーンしている。
靴箱から靴が溢れ出てきて、床を埋め尽くす勢いだ。
「……は?」
さらに連鎖反応が起き、隣の下駄箱では、別生徒の靴が下駄箱と座標が重なって完全に融合。
男子が引き抜こうとした瞬間、下駄箱全体が目にも留まらぬ速さで「ガガガガガ!」と激しく振動し始めた。
……あ、これ触れたら即死するタイプのギミックだ。
「……はぁ?」
どうしたらいいんですかこれ。……いや放心してる場合じゃない、あの靴箱こっち来るじゃん。というかあの靴箱、触った瞬間時速100キロで宇宙の彼方に飛ばされるやつ。絶対そう。
というか処理落ちする!!! 靴の増殖バグやめて!!! 一足でいいわ靴とか!!! あと隣の下駄箱は早くメンテ入れて!!!
やばーい!!! 早くここから退散しないとーーー!!!
私は必死に自分の靴(本物)を回収して、オリンピック選手並の速さで下駄箱を飛び出す。
慌てて履いた靴は踵を踏んだままだ。
「もうやだー!!! この学校どうなってんだー!!!」
◇◆◇
「ごほっ……げほっ……はぁ、はぁ……」
走りすぎて咳き込んだ。喉痛い。
でもここまで来ればバクはあんま無いだろうし、大丈夫でしょ。(n回目のフラグ立ち)
「よし、OK!」
ようやく息が整い、歩き出す。
ここを右に……ここをまっすぐ……ここを右に……ここをまっすぐ……ここを右に……ここをまっすぐ……
……ん?
「ここ、さっき見た景色……?」
もう一回同じ行動をしてみる。
看板を右に、飲食店をまっすぐ。
……やっぱり、同じ景色だ。
早く通っても、ゆっくり通っても、別の迂回ルートでもダメ。
曲がっても曲がっても、いつもの看板、いつもの電柱……全く同じ景色に戻ってくる。
学校の外でもバグに捕まるのか……
「……どうすれば?」
道端に座り込み、ふと空を見上げる。
……背景の空の雲が完全にフリーズしている。しかも、遠くの街並みのグラフィックがペラペラになっている。
まるで――
「ロード追いついてないじゃん?! ゲームの世界なのここ?!」
……いやどうすれば?
まじでここで一生を過ごすことになるけど???
でも、ここ人居るんだよな……聞いてみるか……
私は勇気をだして、道端の人に声をかけてみた。
「すみません、ちょっといいですか?」
『あぁ、バグった方ね。それならあの店の壁に「バグ脱出すいっち〜!」ってのがあるからそれ押しな』
名前どうなってんの? バグ脱出すいっち〜!って。
仮にも命関わるバグだと思うんだけど……?
「あ、ありがとうございます。でも、なんでわかって……?」
『命に関わるバグはね、行政がボタンを設置するようになってるんだよ。あとバグる人が多くてね』
「へぇ、そうなんですね! ありがとうございました!」
バグる人が多くて行政がボタン設置……年間何人出てるんだろう。
で、あの店の壁に――
「あったあった、「バグ脱出すいっち〜!」。……名前どうにからなかったのかな本当に」
ボタンの下に、『動けなくなった方はこちら(スタック救済ボタン)』という説明がある。
ボタンを押すと、体が不自然に直立不動のポーズ――そう、Tポーズのまま、光に包まれていく。
「ちょっとまって、このポーズ何?! どこの芸人だっての?! あー! そこの人見ないでー!!!」
叫びも虚しく、視界の端にシステムログが流れる。
【警告:「バグ脱出すいっち〜!」を実行します。転送まで、3、2、1……】
「だからその名前どうにかならなかったの!?」
そのまま視界がホワイトアウトして――家の玄関へ転送された。
……Tポーズのまま。
「そうだこのまま……!」
慌てて手をおろして周囲を見渡す。
幸い人はいなかったみたいだ。これで見られてたら恥ずかしくてやばかったよ……
というか早くベットにダイブしたい……寝たい……
そう思いながら鍵を挿そうとするが、なかなか鍵が刺さらない。
……あ、またですか? はい。
もう諦めの境地で鍵穴を見ると、今度はドアノブと鍵穴のグラフィックが高速でズレているみたいだ(残像しかなくてわかんない)。
「インターホンからか……親いたっけな……」
インターホンを押すと、こんどはスピーカーから「ピンポーーーーン!!!!(鼓膜が破れるレベルの音割れ大爆音)」が炸裂。
「うるっっさ!? どうなってんのうちのインターホン?! 近所迷惑すぎる!!!」
近所迷惑すぎる爆音ノイズに私の精神防御力はゼロになる。
しなしなになったキャベツぐらい防御力がない。
『はーい……あら、おかえり美沙!』
「ありがとお母さん」
ガチャ、と内側からドアを開けてくれたのはお母さん。
そのままリビングのドアを開ける。
「ただい――……うん、そっかぁ……」
リビングの床がない。床(?)一面には黒が広がっている。
だけどお母さんは、床がない真っ暗な空間に当たり前のように浮遊して座り、最近ハマったと言っていたお茶を飲んでいる。
ちなみに家具も浮いている。
……私って家具以下なの???
『今日のご飯はお茶漬けよ。病気なんだから体にいいもの食べないと』
……まぁ、この世界で私は難病を患っている扱いだ。親でさえね。
というかどこに座るの床がないでしょお母さん!!! なんで浮いてるのお母さん!!! あとお茶漬けの器が解像度低すぎてすぎてトゲトゲの鈍器になってるよお母さん!!! 凶器だよお母さん!!!
「いや浮けって言われても……」
『じゃあキッチンで食べたら? 床はそのままだからね』
「おっけー……」
◇◆◇
制服のまま虚無顔でお茶漬けを掻き込んで、階段を上がる。リビングを経由しなくても二階上がれるのには、初めて感謝した気がする。
「今の私に必要なのは睡眠。そう、絶対に睡眠」
そう言いながら自分の部屋へ入り、ちゃんと着替えて、愛しのベットへスライディングダイブを遂行する。
そしてそのまま、ふかふかの布団に包まれて最悪な一日を忘れる――はずだった。
「おやすみなさ――」
――ズボォッ。
「わぁぁぁぁぁぁお?! ちょっとまってぇ?!」
突如として身体が落下する。
ベットも床も、私の身体を一切認識してくれない。
――ベットの判定バグが、このタイミングで発生した。
「運が悪すぎるーーー!!!」
私の身体は自室の床を突き抜け、下の階のリビングの天井を通って、お母さんがくつろぐリビングのテーブルへと落下した。
「いった……!」
『あら美沙、はした――……そうだったわね、ごめんなさい。そんなにベットが嫌なら、ここで寝ても……』
「違う違う!!! ベットで寝るから!!!」
『無理しなくても……』
「大丈夫だから!!!」
我が家すら安全地帯じゃないし、親には勘違いされるし!!!
私どうしたらいいんですかーーー!!!
ここまでお読みいただき、ありがとうごさいます。
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