ピー音まみれの英語授業と壁抜けバグ
皆様、こんにちは。かるみあです。
ぜひゆるーく見ていってください。
「……あ、リビング戻った」
結局、あのままリビングのソファで夜を明かした。
身体がバッキバキすぎて痛い。どうしてくれるんだすり抜けバグ。
戻った床に降りて、脱衣所へ。
顔を洗って、歯を磨く。朝風呂はしない派です。ちなみに、ここまで一切バグなし。いい一日です。
『おはよう、美沙』
「おはよー」
途中で母とすれ違って、そのまま二階の自室へ戻る。
自室のドアを開け……ここじゃない、ここお母さんの部屋だ。
今度こそ自室のドアを開け、中に入る。
そしてクローゼットを開けて、制服に着替えようとする。
「ちょちょちょちょ、待って待って」
クローゼットから出した制服のスカートの物理演算がバグっていて、ハンガーから外した瞬間に「フワフワ……」と天井に向かって浮いていき、ライトに引っかかった。
……地味にジャンプしても取れないし。前言撤回、やっぱり最悪の一日です。
椅子を持ってきてスカートを回収する。まったく、手間をかけさせるな。イヤイヤ期の子供じゃないんだから。
もうまじで、平穏に行かせて。
朝から疲れきってリビングへ行くと、そんな私にお母さんが「朝ごはんよー」とお皿を出してくれた。
だけど、今日の白米は解像度が低すぎて、昨日のお茶漬けの器並みにトゲトゲした何かになっていて口に入れる気にならない。
……いや食べられたとしても食べる気は無いよ? こんなトゲトゲしてるもん食べる方が頭おかしい。
まぁ、それ以外のやつはまともなので食べるんですけどね。
◇◆◇
「ご馳走様でした。じゃあ学校行ってくる」
『行ってらっしゃい美沙。気をつけてね!』
朝食(まともな部分だけ)を済ませ、通学路へ足を進める。
ちなみに、昨日スタックした十字路は直ってる。
でも、今度は散歩をしているおじさんの犬の首が、バグで三メートルくらい上にびよーんと伸びている。
犬の首キリン超えてない??? サファリパークにでも行っとけ!!!
脳内でツッコミを繰り広げているそんな私の横を、他校の生徒が通り過ぎていく。
こいつはバグってない。セーフ。
「あぁー……朝から疲れた……」
正門には相変わらず、壁スタックの民による壁ふきタイムが始まっている。
朝からご苦労なことだ。
そして靴箱は……おーけー、バグは治ってる。触ったら宇宙の彼方に飛んでいきそうな靴箱も、靴が増殖してた靴箱も綺麗さっぱり元通り。
靴箱から上履きを取り出し、履き替える。
幸先は……良くないな。昨日よりかはマシだけどさ。
この学校って、バグの頻度が高いって言うか、バグが起こらないことが逆にバグって感じの学校だよね。
校則での見た目の制限無いから、一見やばい学校って思われがちなんだろうけど、なんか学校の評判高いんだよね。感性豊か()な人達でいっぱいだし、そんな意味ではいい学校なんだろうね。
いつの間にか教室にたどり着き、ガラッとドアを開けた瞬間、昨日以上の地獄が広がっていた。
教室に入ると、いつも通り天井に机ごと突き刺さってる学級委員長。
自分から気にしないでって言ってるし、別に考えなければオブジェクト扱いにできるので特に考えないようにしてる。
問題は、霧香の制服のグラフィックがプリンセスドレスにすり替わっていること。
本人は全く気づかずに「おはよーみさち」と普通に話しかけてくる。
「おはよ……服、凄いね……」
「そうっしょ? 今日一日王位継承権持ってんじゃんうち〜!」
隣がこれだと気になって仕方がないんだけど。どうすればいいんですか。どうすればバグと向き合えるんですか。だって向き合おうとしても向こうが斜め上の方向から飛んでくるんですよ。
……待って霧香のドレスめっちゃ光反射するじゃん。眩しい!!!
◇◆◇
……朝の会? 何ともなかったよ。先生はフリーズしてないし、プリントも壁に突き刺さってない。
……隣が眩しすぎる以外はね。まともに黒板見えないんだわこれ。
当の本人は楽しそうに次の数学の授業の準備してるよ。というか一時間目が数学ってなんなんだろう、嫌がらせ?
数学の先生が入ってきて、準備を始めている。
そしてチャイムが鳴り、一時間目――数学の授業が始まった。
先生が教科書を読み上げ、黒板に数式が書かれていく。
で、早々に問題発生。
……まじで霧香眩しすぎる問題。
黒板が一ミリも見えない。まじで見えない。どの角度に行ってもドレスのスパンコールで目が確実にやられる。
……待って、そもそも数式が文字化けしてて読めない。あと教科書を開いたら今やってる箇所のページだけ真っ白。
全てのタイミングが悪い!!!
何も出来ない!!!
Q.どうしますか?
A.諦めます。
◇◆◇
何とか一時間目が終わりました。もう何もしたくないです。
板書? 逆に問おう。できたと思う?
次は英語……よし、音声主体だからどうにかなる。
英語の準備をし、精神統一。この後何が起こってもいいように。あとバグってもどうにかなれ精神の構成。
そしてチャイムがなって、英語の授業が始まった。
音声主体なので霧香のドレスは大丈夫。目を閉じれば……どうにか……なるはず。
「Hey美沙! ここをヨミアゲテくださーい!」
「は、はい!」
なーんでネイティブスピーカーの先生に指名されるんだよ。運悪いな。
立ち上がっていざ教科書を読もうとした瞬間、口から出る音声がバグって、規制音――謎のピー音が口からばら撒かれる。
「ピーーーー、ピーーーー!?」
「いい発音デース! 次も行っちゃってクダサーイ!」
「ピーー! ピーーーー、ピーーーー」
「そのチョウシで最後オネガイシマース!」
「ピーー、ピーーーーーー、ピーーーーー」
「Excellent! 皆さん、美沙さんをミナラッテクダサーイ!」
見習うなよこんなピー音だらけの英語。
私は普通に『This is a pen.』って言いたいだけなんだけどなーーー!!!
というかなんで高校の英語でこんなレベルの授業してんの???
あーもう、誰かどうにかして……
◇◆◇
……席に座ってばっかだからダメなんじゃ? ほら、猫背になってると運気が悪くなるみたいなジンクスあるじゃん?丁度休み時間だし、廊下出て気分転換でもいいじゃん!ってね。どこの霧香だっての。
廊下に出ると、色んなクラスの人がいる。
別クラスの友達と喋る子達、どこかの移動教室へ移動しているクラス、廊下の特定の角を曲がって壁抜けバグを起こすやつ。
……まて、最後だけおかしかったな。
廊下の特定の角を曲がると壁抜けバグが起こるってなんだよ。
しかもあれクラスメイト。
「ここだよね?」
「そこそこ」
「じゃ、行きまーす」
そう言って角を曲がったクラスメイトは、どこかへ消えた。
どこいったんだ? まさか校庭とか?
「おいあいつ校長室いるぞ!」
……なぜか校長室の天井裏にワープして、天井を突き破って落ちてきた。
それを見た校長が呑気に挨拶してる。
それを見た周囲が「あー、あの角の判定消えたんだねー」とのんきに噂している。
なにこれ。いやまじでなにこれ。
なんかもう全部放棄して家で寝てたい。
……そういや家にも安全って無いんだ。どうしよう。
……早退、ありかなぁ。
ここまでお読みいただき、ありがとうごさいます。
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