星が降る夜
隣の席には女性。
白い神、白いまつ毛。
とっても綺麗。
「……あなたは? この店では初めて見るかも」
そうして俺の方を向いた。その目は奥の方から透き通っているような感じがする。
透明感の塊って、こういうことを言うのかな。
「ああ、そう。僕はこの店には初めて来たから」
「そうなのね。……ここはとっても楽しくて、初めて会う人たちでも、仲良くなれたりするのよ」
「それはいいね」
お分かりいただけただろうか。俺は普段のコミュニケーションがとっても苦手なのである。
彼女は、少し首を傾げた。
「その首につけているものは?」
「これはヘッドフォン。耳につけて聴くと、音楽が聞こえてくるの」
彼女は驚いた顔をしている。
「本当だよ! ほら」
俺がヘッドフォンを渡すと、おぼつかない手つきで、耳に当てる。
そして、俺が作ったボカロ曲を、スマホから再生した。
彼女は、自然と目を閉じて、気づけばその音楽に魅了されるかのように。
その横側はとても美しく、ずっと眺めていたいようで。
俺の作品を、誰かがこうして楽しんでいるところを見るのが初めてで。
そもそも、リアルで誰かに聴いてもらったことも初めてだったから。
なんか、とっても泣きそうで。
曲が終わった。
彼女はヘッドフォンを取り、俺の両手を握って言った。
「すごい! とっても綺麗な曲! 私この曲大好き! 誰の曲?」
「これは、俺が作った曲で、コンピュータに歌ってもらって……」
そしたら彼女は両手をグーにして、とびっきりの笑顔で。
「すごーい! こんな曲作れちゃうなんて、まるで神様みたい!」
「いやいや、神様だなんて……」
待てよ。
簡単に空が飛べて。
お金を錬金できて。
そして、作曲もできて?
俺はもしかして……本当に……
神に、転生したのか!?
「私はアリア!」
「アリア……とっても素敵な名前……」
「あなたは?」
キラキラした目でこちらをみてくる。少し緊張しながら、絞り出した。
「俺は、流星。流れ星のようにきらめいて、なんて覚え方をすれば」
「本当にそう! だってこんなに綺麗な曲を作るんだもん」
俺たちは2人で外に出た。
空には本当に、流星群が舞っていた。
アリアの青い瞳孔は、それを綺麗に映し出していた。
「星が降る夜、だね」
「……うん、星が、降っているね」
「とっても綺麗」
そうして俺たちは、路地を歩きながら、たわいもない会話を続けた。
それがとっても楽しくて。
まるでずっと続いているかのように感じた。
通り過ぎる猫たちも、そんな俺たちに心なしか優しく微笑んでいるように感じた。




