教室の片隅で
スクールカースト、なんて言葉を聞いたことがあるだろうか。
俺はそれに興味がない。
教室の前の窓際。
外を眺めるとそこは銀世界で、今日は雪が積もっている。
そこから教室全体を眺める。
ウェイ系グループにインキャグループ、一目瞭然で。
カバンからヘッドフォンを取り出し、音楽を再生して目を閉じる。
自分の幻想的な世界に入れるのはこの時間だけで。
机の端をトントンと叩きながら、この前作ったボーカロイドの曲を聴く。
パーカーを被り、そのまま少し上を向いて。
カノン進行からサビで王道進行に変更する流行りの曲を作ってみた。それでも形になっているから面白い。
朝のSTが始まると、前の模試の結果が配られた。
東大の文1がB判定で、文3はE判定。早稲田と慶應はA判定。学年順位は1位。こんなところ。
いい成績を取れていたって、陽キャであったって、この世界を支配できることなんてないのさ。
そう、そんなこと、できるはずがないんだ。
生まれてこなければよかった。こんな楽しくない世界。
学校が終わって夜。
俺はポケットに手を入れて、田舎の駅までヘッドフォンをつけながら電車に揺られた。
無人駅に到着する。
なんの躊躇いもなかった。
そこで俺は。
「通過列車です。ご注意ください」
飛び降りた。
汽笛が聞こえる。
気がつくと。
そこはヨーロッパ調の景色。
服は制服そのまま。
周りはおしゃれな人たちばかり。
エルフのような長い耳の人もいれば、ゴブリンのような見た目の人も。もちろん、俺と同じような見た目の人だっていたさ。
そうか。
俺は、異世界転生したんだ。
空を飛んでいる人たちがいる。
俺も空を飛んでみようか。
ジャンプをして、手を広げた。
すると、背中にバサっと翼が生えた。
その翼で、街を飛んだ。
キラキラと輝く民家に、どこまでも青い海。
夜になると星空が綺麗で……
俺は地上に降り立ち、少し歩いた。
バーが見える。
……ダメだ。金がない。
せめて金があればいいのに……
腕を握り締め、パッと開く。
そこには、同じ見た目の金貨が5枚。
……え、嘘だろ!? これって錬金術、ってやつじゃねえか!?
試しに。
「すみませーん」
ランタンで店中が照らされた、木造のバー。
「いらっしゃいませ。何になさいますか?」
言語だって通じる。
「……コーラ」
「かしこまりました。150ミルです」
通貨レートは日本円と同じくらいか。
……試しにその金貨を出してみた。
「あ、1万ミルですね。お預かりします」
そのあとはお釣りを返され、コーラを渡されて、少し先に迷っていると、カウンターに案内された。
……まって、さっき、手を握って、開いただけで、5万ミルを生み出した!?
……なんだこの能力。簡単に空も飛べるし、金も手に入る。
こんなの、チートすぎないか!?




