終章【光に手が届かなかった者たち】その2
「――」
ただ、走る。
魔力を存分に使いつつ、スタミナの配分を意識して、要所要所で立ち止まり、呼吸を整え、必要であれば薬を飲んで、走り続ける。
途中魔獣に遭遇しても、基本無視。
倒す事が時間のロスになるから、必要以上の戦闘は避ける。
俺の全力に魔獣についてこれない。
時折どうしても対処しなければいけない時は、斬るのではなく、剣を当てて、その反動を利用して、魔獣の射程から外れ、また走る。
そうして走り続けて、視界が急速に変っていく。
呼吸と、心臓の脈打つ音。そして風を切るのを全身で感じ。
それと同時に徐々に身体が重く感じるの自覚しながらも走り続けた。
そうすることで、予定より少し遅れた程度で、××山に辿り点く。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
一度強化を切った所で、がくりと力が抜けた。
思わずその場で膝をついてしまう。
長時間走り続けたこと、魔力の消費で身体を悲鳴をあげているのがわかる。
「ああ、そういえば、ここまで魔法を使い続けたことは、一度もなかったっけか」
言葉を吐き捨てた後、呼吸を整えていく。
ぼんやりと、あの人達が戦っている姿が脳裏に浮かぶ。
「きっと、あの人達だったら、もっと簡単に――」
俺よりも上手くこなすのだろう、と思った。
こんな所で息なんか上げず、さらには一瞬で行って帰ってくる、なんて事ぐらいするのかもしれない。
さらには、俺達が治すよりもずっと早くにスフィアを治すことだって、できるのかもなぁ。
「だから、カッコイイって思ったんだよな」
幼い頃、本当に憧れた。
強く強くて、絶対に負けない。
あの人達がいるから、俺達の国は平和なのだろう。みんな幸せに暮らしていけるのだろう。
そんな場所を作り上げる人達みたいに。
そうなれたら、どれだけ良いか。
それだけを思って、鍛え続けた。
その結果が、今の自分だ。
「足りないってずっと思ってた……」
事実足りていないし、あの人達にみたいにで出来る事はほとんどない。
けど、今はそれでも構わないと思っている。
そう自然に思う事が出来て、苦笑した。
「休憩は、おしまい。さぁ行こうか」
息を整え終えた事で再度魔法を発動し、山の中へはいっていく。
山の道のりは、更に過酷だ。
高低差がある上に、上れば上るほど空気が薄くなり呼吸がしづらい。
そんなかでも、スピードを緩めずに進むのに、神経を使い、更に体力が奪われていく。
時間が無い上に、薬も数がない。
魔物の対処だって厳しい。
平地ならともかく、崖を足場に素早く動けるモノや、何だったら飛んで襲ってくるものもいる。
必要以上に時間を使わず、対処するためには、避ける動作が枷になることがある。
そのため、受ける場所を限定し、あえてダメージを負うことで、動きを最低限にして戦闘を回避。
機動力となる足だけは避けても、肩や、背中、腕、頬。傷が蓄積される。
血が流れていく。
頭が重いうえに朦朧とする。
それでも止る事はせず、走って飛んで繰り返し、目的地に到着すると薬草を回収。
「――――」
少しの時間休息した後は、再び来た道のりを引き返した。
そうして――――。




