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終章【光に手が届かなかった者たち】その1

 

 梨花につられてやってきたのは、いつも賑わうギルドの大広間。


「やあ、大樹」


「レオ」


 いくつも並ぶテーブルの一角に幼馴染みのレオがいて、その周りには大勢のギルドメンバーが取り囲んでいる状態。


「なに――」


「はいはいはい! 時間がないんだから悠長な事やってないで、本題に入る!」


「……」


「はは、そうだね。確かに時間が無い。だから要点を説明するから、聞いてくれるかな?」


「わかった」


 俺が近寄ると「君にやってほしい事がある」と言った。


「やってほしい、こと?」


「ああ、スフィアさんの病気……いや、呪いか。それを解く手段が見つかった」


「本当か!?」


「僕、君に嘘なんてついたことないけど?」


「ま、まあそれはそうなんだけど」


 救うと決めたし、梨花も治すと言っていた。


 けど、スフィアはその方法を見つけられなかったし、レオも簡単にはいかないと言っていた。それをスフィアと話している間に見つけた、というのだから、驚くのは可笑しくないと思う。


 けど、今はそんなものどうだっていい。


「――で、俺にして欲しい事ってのは?」


「梨花に聞いたんだけど、大樹は前にスフィアさんと桜華山で薬草を採りにいったんだよね?」


「あ、ああ」


「場所や、薬草については覚えている?」


「薬草についてはボンヤリとだけど、場所が場所だったし、そこに生えているものなんて、あれ以外なかったから、行けばわかる」


「なるほど、じゃあ今から行って取ってきて欲しい」


「それがあれば、治せる、のか?」


「それだけじゃあ無理だね」


 確かに、スフィアが既に使っているものだ。それだけで治せるわけではないだろう。


「じゃあ、他になにがいるんだ?」


「それは他のみんなに用意して貰う」


 俺が問いかけると、周りにいたギルドメンバー達が「任せておけ」と声をあげた。


「いるものは数種類の薬草と、後はこの国で国宝扱いになっている天ノ滴(あまのしずく)の壺。そして大量の魔力」


 その中で、一番重要度が高く、危険度が高いモノを君に頼むとレオは言った。


 聞く限り、難易度が低いものはない。


 必要な薬草はどれも険しい所にしか存在しないし、何より国宝。


 閲覧するだけならまだしも、使わせてくれ、なんて通るのかどうか。


 疑問は次々に浮かぶが、今はレオの言うとおりにしよう。


「わかった」


「……あともう一つ言わなければいけない事があって」


「言わなければいけないこと?」


「無茶というか、無謀を承知で言うんだけど、今日中に戻ってきてほしいんだ」


「……」


 桜華山は徒歩で数日。


 急げばもう少し縮める事はできるけど、それを今日中。


 しかも帰ってこいという無茶


 確かに無謀と思える内容だった。


「……時間、もう、本当にないんだな」


「……多少の時間なら、薬や魔力を送り込んで伸ばす事はできるんだけどね、けどそれでも、数日は保たない」


「……そっか」


「いくつか回復薬は用意したから、持っていって」


「わかった、サンキュ」


 テーブルに置かれた瓶をベルトのポーチに突っ込む。


 そして、何度か深呼吸を繰り返した後で、魔法を発動させる。


 淡い緑の魔力光が全身を包まれた。


 俺が使える、唯一の魔法。身体強化。


「――じゃあ、行ってくる」


「気を付けて」


「ああ」


 全身に魔力を回して、走り出す前にぽつりと「俺はやっぱり駄目だな」と呟いた時。


「大樹!」


 それが耳に届いていたのか、梨花が俺を呼び止める。


 何だよと振り向いた直後。


「こんの馬鹿大樹!」


 拳が顔面に飛びこんできた。


「――っ」


 鈍い痛みを感じて視界が変わり、一瞬何が起こったのかわからない。


 なにも考えられないまま、顔を梨花に向けると、怒っている梨花がいた。


「昔に戻ってたとか思っても、まだまだいじけているみたいだから、渇をいれてあげた!」


「り、梨花?」


 隣にいるレオが呆気にとられている。


「もういいでしょ! そうやって自分を卑下するのはお終い! 出来ない事は……あるのかもしれない。この国の魔導騎士団の人達には、及ばないかもしれない。けど違う! 大樹は、出来ない事を嘆くことなんてしてこなかった。出来る事を精一杯、ボロボロになるまでやり続けた! だからあなたの言葉がみんなに届いた! そうやってあなたは周りを奮い立たせてきてくれた! それがあなたなんだよ! それが私達の英雄なんだ! 周りを助けて引っ張り続けるようなそんな英雄にはなれなくても、みんなを奮い立たせて、一緒に歩む英雄がいたっていいじゃない! 一人で何でもこなせなくなっていい! 大樹の行動や言葉でみんなが立ち上がれる! 一緒になって行動できる! 私達は英雄に守られたいんじゃない。英雄と一緒に、生きていきたいんだ!」


「――――」


 時間がない、といった割に、随分と長い説教だった。


 けれど、レオはなにも言わず、周りは「そうだそうだ!」「俺達だってやれる!」「やれること探して、見つけて、手伝う!」と口々に言い、最後には。


「「「「「自分でも何か出来ることがあると、俺(私)達に教えてくれたのはお前なんだから!」」」」」


 言葉を合わせて、俺に言ってきた。


「……そう、か」


 夢には手が届かなかった。


 だから希望なんて何処にもないと諦めた。


 ずっとそう思い続けてきた。


 けど。


 この手がそこに届かなくても。


 希望(光)はなくなったわけじゃない。


 ちゃんと、そこに、あった。


「……じゃあ、頼む。俺は知っての通り、何でもこなせるわけじゃないけど、やれることが限られてるけど、それでもスフィアを助けたい。だからみんなの力を貸してくれ」


 そうやって頭をさげれば。


「「「「「任せろ」」」」」


 みんながそう言ってくれたから。


「――ありがとう、じゃあ行ってくる」


 俺は笑顔でお礼を言って、その場を後にした。



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