三章【私の“英雄”】その2※スフィア視点
百年程前、私は平民の両親から生まれた。
そんな私は、人より魔法の才があり、それを誇らしく思っていた。
自分には秀でた力があるのだと。
だからその力を伸ばす事を苦に感じた事はなかったし、当然の事だと思っていた。
将来は、この力を使って大きな事を成し遂げる。
今思えば漠然としている内容だったけれど、当時の私はその曖昧な目標を信じて疑わなかったんだよ。
それぐらい、自分の力を信じて疑っていなかった。
当時の悩みとしては……十二を過ぎても変わらないこの“見た目”。
周りが成長していく中で、一人取り残された感は否めなかったが、それでも私には魔法があったし、それにね、そんな私にも恋人はいたのさ。
彼はとても誠実で、見た目ではなく、その前向きな姿に惚れたのだと言ってくれた。
だから悩む事はあっても、それに囚われる事はなかったんだ。
あの日、国一番の宮廷魔導士に出会うまでは。
私はそれまで自分が天才だと疑っていなかったし、仮に自分より上が現れても。絶対に乗り越えてやる。
そう思っていた。
けれど、彼女に出会い、その魔法に触れてそんな自信は吹き飛んでしまった。
知識、魔力、魔法。
そのどれもが彼女の足下にも及ばず、背伸びしても触れもしない。
自身が天才だと、自分は人よりも特別だと思っていた場所は、人が歩める道の上でしかなかった。
それを自覚して、それでも自身の才能を疑いたくなかったから、ただひたすらに努力を重ねた。
心配する家族や友人、恋人を振り切って。修行に明け暮れた。
本当に愚かな事だ。
得た力がなくなったわけでも、認めて貰えなかったわけでもない。
ただ、手が届かなかったという事実と。
自分に誇れるものは“天才と呼ばれる魔法の実力”しかないという思い込み。
この二つが、自分を見てくれる人達を遠のけ。
見た目だけで判断する人間の言葉ばかり拾うようになった。
少し冷静になって、周りを見る余裕があればよかったのだけれど。
元々、この姿をコンプレックスを持ち、魔法だけが私の寄り所だった。
これがあるから、胸を張って生きていける。
そう思っていた所に事実を突きつけられ、悪意にある人間から散々こき下ろされた。
私は天才に及ばず、中途半端な実力しか持ち合わせていない、年をとっても子供のままの姿をした、どうしようもない女だと。
だから、どんなに塞ぎ込んでも、みじめな思いをしても、私は努力を重ねた。
魔法しか持っていない私が、魔法以外で、人を認めさせる方法を知らなかったんだ。
いつか、いつか私を認めさせてやる。
その一心で努力を重ねた結果。
私の周りから少しずつ、人が離れていき。
その結果も「私が天才でないからだ」と信じて疑わず。
最後には、恋人すらも、私の前からいなくなって。
それでも、他にどうしていいかわからなかったから。
魔法の腕を磨く事しか、してこなかった。




