タイトル未定2026/02/14 22:24
ジョニーと科学無効都市 (前編)
出版社からの序文
ジョニーが失踪した後、彼に関するものはすべて散り散りになってしまった。私たちが捜索・収集し、彼の作品をまとめることができたのは、それらの中からだった。発見されたものには、事実に基づくものと創作、彼の私生活に関係ないものと関係あるものが混在しており、手紙や日記の一部も含まれていた。これらは彼が失踪する直前の最後の作品といえる。なお、この本を印刷している最中に、彼のさらなる作品が新たに発見された。そのため、彼の失踪後に発見された作品集は、二分冊とさせていただく。
ティラユット・ハンジャルパット
編集者
[第一巻]
(手紙)
クソッ、やっと『アカシ・レコード』の話を書いた紙を取り戻せたぞ!
(消えかかった宛名と差出人住所が書かれた封筒が見つかった。封筒は破れており、中の紙も半分に裂けていた。)
(以降の作品は手紙ではない)
オレンジの太陽、青い空、緑の木々、茶色い土、濁った水。
誰も歩いていないこの道を、どこへ向かうともなく歩いている。
空は晴れ渡り、それほど暑くもない。
行き先もわからない。
もう帰る場所もない。
人生に、もう誰も残っていない。
どこへ行けばいいのかも、わからない。
何ができるのかさえ、まだわからない。
完全に目的もなく、ただ当てもなく歩いている。
皆に「頭が良い」と言われ始めたのは、いつからだったか? 覚えていない。
あの頃は、自分は世界で最も賢い人間の一人だと確信していた。IQテストを受ければ、きっとIQ120はある。天才だ、と。
今は、そうは思わない。いや、そうは思えない。
実際にIQテストを受けてみれば、せいぜい100台。ただの普通の人間だった。しかも、結果は上がったり下がったりだ。IQ105だったり、109だったり、90だったり、また100台だったり。
自分の能力を、あまり信じていない。
自分の知性を、あまり信じていない。
何ができるのか、まだわからない。
どんな分野に能力があるのか、まだわからない。どんな才能があるのか、まだわからない。
何ができるのかさえ、わからない。
優れているのか、そうでないのかもわからない。賢いのか、そうでないのかもわからない。
いつまで生き延びていけるのかも、わからない。
自分ひとりで生き延びていけるのかも、わからない。
かつては、ゴジラ/ウルトラマンの映画を監督したいと思っていた。ゴジラ/ウルトラマンの脚本を書きたいと思っていた。ゴジラ/ウルトラマンの特技監督になりたいと思っていた。ゴジラ/ウルトラマンの音楽を作曲したいと思っていた。
怪獣映画を監督したいと思っていた。怪獣映画の脚本を書きたいと思っていた。怪獣映画の特技監督になりたいと思っていた。怪獣映画の音楽を作曲したいと思っていた。
怪獣小説を書きたいと思っていた。
今は、全て諦めた。
一度も実現できないままで、諦めたのだ。
かつては、必ずできると思っていた。
今は、
絶対にできない。
そして、どうすればいいのかもわからない。
これまでに作った全ての作品を、
見返してみても、
それがどんなジャンルの作品なのか、まだわからない。
それがどんなスタイルの作品なのか、まだわからない。
それがどんなものなのか、
それが何なのか、
さっぱりわからない。
どんな作品を創り出したのか、
それさえも、わからない。
ゴジラのスタッフと一緒に、ほんの少しだけ写真を撮りたかった。しかし、彼らは皆、もうこの世にいない。
監督も、特技監督も、作曲家も。
つい先日には、初代ゴジラの主演俳優も亡くなった。
もう、会いに行ける人は誰もいない。
プランクトンのような人生を送っている。自分では泳げないプランクトンだ。
まるでプランクトンのような人生だ。自分では泳げないプランクトンだ。
まるで、自分では泳げないプランクトンのような人生だ。
もう、やりたいことなど、何もない。
[科学無効都市]
いかなる科学法則も、ここでは有効ではない。
ここでは、科学法則は無効である。
ここでは、科学法則は効力を失う。
魔法使いや魔女がおり、魔道書があり、魔法が存在する。
竜がおり、巨人がおり、トロルがおり、サイクロプスがおり、人魚がいる。
神や女神がおり、妖精もいる。
おとめ座の女神にも会えた。
しかし、これが人生の絶頂なのだろう。
初代ゴジラの監督、本多猪四郎。初代ゴジラの特技監督、円谷英二。初代ゴジラの作曲家、伊福部昭。
ここでは、彼らは生きている。
実体として。
彼らに、実物として会えた。
本多猪四郎に名前を呼んでもらい、円谷英二には私が考えた特技を気に入ってもらい、伊福部昭には私が作曲した音楽を気に入って演奏してもらった。本多猪四郎には、彼の映画の一部を監督させてもらえた。
ここがどこなのかは、わからない。
しかし、行く場所もなく、戻る場所もなく、人生に誰も残っていないのなら。
たとえこれが夢だとしても、現実世界には戻りたくない。
ここを離れたくない。もう、どこへも行きたくない。
ここにいたい。
もう、どこへも行かない。




