第86話 アイドル戦国時代
シンデレラロードというダークホースのパフォーマンスを前に、SBY48だけでなくスマイリング娘。、アルコバレーノ、月光花まで大きなプレッシャーとなる。
加奈子はそんなかつての敵だったきららの本領発揮に燃えてきた。
だがその次であるスマイリング娘。の吉原かえでは、あまりの重圧に前進が震え上がっていた。
それも無理もない、何故ならかつてスマイリング娘。は二十年前までは世界中を笑顔にして世界一のアイドルグループと言われ続けたのだから。
しかし十年前にSBY48が現れて急に失速し、堕ちた王者とも揶揄されて、その王政復古を目指してきたのだからシンデレラロードの存在はプレッシャーなのだ。
そんな時に清楚なまとめ役の川島清美はかえでのほっぺたを指でツンツンする。
「清美…。」
「私たちはスマイリング娘。よ。ファンの前ではスマイルを絶やさない、それが私たちの王者としての誇りよ。でも…かえではスマイルになってる?」
「え…?」
「あなたがかつての栄光にこだわって復権を目指しているのは私たちも知っているのよ。」
「でもそれってウチららしくないじゃん。いつも時代の先取りをして未来を明るくってのがモットーじゃん。」
「たとえ強敵が相手でも問題ありません。リーダーは無責任にファンを楽しませて私たちをも巻き込むことだけを考えてください。あなたをリーダーに任命したのは…私たちなんですから。」
「みんな…うん!弱気になってごめんね!私たちのスマイルは世界のスマイル!政権奪還がなんだ!私たちは私たちらしくいくよ!」
「ゴー!ゴー!スマイリング!」
いつもと掛け声が変わったことに、アルコバレーノやあかり世代より以前のメンバーたちは驚いた。
スマイリング娘。のパフォーマンスはファンが笑顔になれるなら何でもしてきて、今回もまた最高の笑顔にするべくパフォーマンスを続けた。
お姉さんが初期メンバーでお笑いでも何でもやる天王寺あかね、台湾人で日本のアイドルが大好きなファン・メイユン、インド人とのハーフでカレー屋さんを経営する霧島モカ、日本人ながら石油王で中東の発展に貢献した父を持つ新川ありさ、女子バレーボールの全国大会経験者で全日本強化選手にもなった稲垣奈津美、星のような明るさで天真爛漫な月島星乃、いつも眠たげでゆるふわマイペースな花園ゆめ、元々は在日韓国人だったが日本が大好きで日本国籍を取得した金子香織、そして日曜大工が趣味でお祭り女の長谷部梨花というそうそうたるメンバーだった。
吉原かえでは心配性でありながら責任感が強く、そしてメンバーの笑顔を絶やさないように健気に励ましてきた。
そんなスマイリング娘。のパフォーマンスが終わった時、月光花は燃えてきたのか戻る前に円陣を組む、
「あの…えっと…緊張するね」
「私たちは花柳先生の厳しい稽古にずっと耐えたじゃないか。自信を持ってもいいのだぞ」
「そうだね。私たちは京都のみんなの星だからね。私なんて殺陣でウォーミングアップしたくらい興奮しているよ」
「それに…アルコバレーノの皆さんにもSBY48さんにも挑めるだなんて光栄なことでございます。私たちローカルがこの大舞台に立てているのでございますから」
「みんな…。」
「さぁ時間です先輩。こんな大舞台では一筋縄ではいかないですが、私たちにはこの世界だけではない方々も応援に来ているのですから期待に応えなければなりません」
「そうだね…。でも…その事は秘密だよ?」
「ええ、私たち月光花だけの秘密…。妖魔界のみんなも見守っているわ…。」
「すぅ~っ…。みんな…掛け声しよう!」
「うん!はなが率先して掛け声出すなら私たちも頑張るよ!」
「日ノ本に咲く黒き花!」
「「夜空を灯す淡い月!」」
「月光花!」
「「いざ参る!」」
月光花の番になると和の雰囲気に欧米のネットが大反響で大和撫子の再来というコメントが多かった。
ところが日本ではUMD48を破ったことで嫉妬なのか誹謗中傷の被害に遭い、月光花を窮地に立たせた。
そんな中で新たにプロデューサーになった焔間ひめぎくの敏腕さで乗り越えてきたのだ。
あかりたちは月光花を尊敬し、同時に同じ不思議な力を持っていると感じた。
月光花を終えると今度はあかりたちの番だ。
「さぁみんな、今までの集大成をここで出そう!」
「ええ、もちろんよ!」
「よーし!オレも興奮してきたよ!」
「うん…頑張ろうね…!」
「エリスも輝いたのでワタシも頑張るよ!」
「ショータイムはこれからのようね!」
「今日はあいつのためだけじゃなくて…みんなのために歌うよ!」
「日菜子ちゃんの幼馴染みって秋山プロデューサーの弟子になったんだよね?」
「うん!作曲をプロ目線で教わって、今日の新曲で勝負曲を作ってくれたんだ!」
「それじゃあ負けられないわね!」
「それに私たちにはドリームパワーがあるわ!それじゃあ行くわよ!」
「待って!センターじゃないみんなも総選挙で残念だったみんなも…今日は全員がセンターになってファンのみんなを盛り上げようね!SBY!」
「48!」
あかりが掛け声を仕切り、48人のメンバーは心を一つにそれぞれのポジションへ立った。
曲目は最初は新曲でツインテールに恋する男の子の歌で始まり、二曲目のミューズナイツの曲を四十八人がカバーし、最後の人気曲のファンのみんなに会いたかった気持ちを爆発させるアイドルの歌で締めくくった。
そして最後のアルコバレーノの番が回る。
「みんな凄いよ…!ボクたちこんな凄い子たちと競い合うんだね!」
「私、普段は冷静だって言われるけれど…こんなの見せられて燃えないはずがないわ」
「早くファンのみんなの笑顔が見たい!もう勝ち負けなんてどうでもいいよね♪」
「そうだな!私たちは希望を導く存在である!」
「よっしゃあ!燃えてきたぜ!」
「さくらさん!いつものあれ、やりましょう!」
「うん!希望を導く七つの光!輝け!」
「アルコバレーノ!」
「さぁここで最後の出場者になります!」
「えーーーーー!」
「では最後の大取り、アルコバレーノです!」
アルコバレーノのパフォーマンスはいたって普通のアイドルそのもので、目立ったところは何もなかった。
というより今大会はハイレベルで今までのパンチの効いたパフォーマンスと比べる取ってだけで実際はとてもハイレベルなのだ。
しかし本題の三曲目に入ると…審査員の黒田純子の顔が急に変わり始める。
「え…そんな…!」
「この曲って日本語じゃなかったかしら…?」
「しかもこれ…振り付けも手話に変わってますよ…?」
「ああ…オレたち…」
「完全にやられたって感じ…」
「これ…完全に英語デス…」
「世界を意識しているって事…?」
「ふっ…これはもう…決まったかなぁ…。優勝して…みんなとの最高の思い出にしたかったなぁ…。こんな形で引退したくなかったなぁ…。悔しいなぁ…」
「加奈子先輩…!」
加奈子はアルコバレーノの三曲目のパフォーマンスで、世界の人や障碍者をも意識したパフォーマンスに急遽変更したことに真っ先に気付き、もう自分たちがどんなに最高のパフォーマンスをしても勝てないと確信した。
そのせいか加奈子は、最高のメンバーと最高の形で有終の美を終えたかったと未練を残して引退することとなった。
その事を悟った加奈子は悔し涙を流し、声も出ないほどに泣き崩れた。
それを見たあかりたちミューズナイツのメンバーは、加奈子を囲んで抱きしめ慰めた。
結果は…
「さぁここから得点です!スマイリング娘。の九十六点!シンデレラロードの九十七点!月光花の九十八点!そしてSBY48の九十九点を果たして超えられるのか!?アルコバレーノの結果は…来ました!これは…百点です!ということは…文句なしの優勝です!!」
「やったーーーーーーっ!」
有償が決まったアルコバレーノは一斉に抱き合い、嬉しさのあまりに涙を流した。
ミューズナイツ以外のメンバーは自分たちが負けたことで悔し涙を流し、加奈子に最高の形で引退してほしいという気持ちが叶わなかった事でショックを受けた。
一方のスマイリング娘。はホッと一息をつき、シンデレラロードはやりきったし悔いはないという顔つきで、月光花は悔しさで涙を流したけれどリーダーの常盤わかばが大人の対応で優勝をお祝いし握手をした。
同時に月光花には世界ツアーがあり、そのために準備をしなきゃともう次の事を考えていた。
一方SBY48は…
「加奈子先輩…」
「もう大丈夫だよ…。でも一人にしたら多分また寂しさと悔しさが溢れて泣いちゃうから、みんなにはそばにいてほしいな…。悔しいけど…SBY48は引退するのは私たった一人。アルコバレーノは桃井さくらさん以外の全員が引退するんだよ。有終の美に対する気持ちの重さが違いすぎる。私の引退の重さの六倍の差があった。そこは認めないといけないよ。アルコバレーノこそが…伝説のアイドルグループであり、真の王者なんだ。だから…あかり、結衣、日菜子、麻友美、ひかり、麻里奈、エマ、そして萌仁香…アルコバレーノのみんなの楽屋に行ってお祝いしよう」
「先輩…はい!」
こうしてワールドアイドルオリンピックは閉幕し、アルコバレーノの優勝に終わった。
表彰式ではアルコバレーノが金メダル、SBY48が銀メダル、そして月光花が銅メダルを授与され熱かった世界はゆっくりとクールダウンされていった。
あれから加奈子たちはアルコバレーノに御祝いの言葉を交わし、加奈子もアイドルを引退する事を知らせ、アルコバレーノのさくらは加奈子ほどのトップアイドルを越えられたことを誇りにファイナルライブをしてきますと宣言した。
そしてSBY48は…秋山加奈子の卒業引退ライブに向けて準備を進めた。
つづく!




