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第66話 技巧派タレイア

麻里奈は普段から美容のために早く眠る事を心掛けていて、こんな中途半端な時間に眠れるのだろうかと不安もあったが、長旅の疲れが勝ってしまい珍しくウトウトと眠りについた。


夢の世界に行くとそこには大樹が一本生えている公園だった。


公園にはブランコとすべり台、ジャングルジムなどがあったが砂場はなく地面は芝生だけだった。


大樹の方に近づいてみると、一人の女性が何やらクロスボウで的を狙っていた。


「……。」


「うわっ、この緊張感…まるでウィリアム・テルじゃん。ちょっとだけ静かにしてよ…」


「そこだっ!」


「うわっ!?」


「あっ…ごめーん!てっきりダークネスパワーだと思った!」


「もう!いきなり危ないじゃん!アタシじゃなかったら避けれなかったよ!」


「へへへ…ごめんごめん!……ん?アンタ…どこかで会ったこと会ったっけ?」


「え…?いきなり何さ…?」


「あーごめんね。私はちょっと自分とノリが合うなーって思った人には懐かしいなって気持ちになっちゃうんだよね。私はタレイア。一応初代ミューズナイツの技巧派とも言われているよ」


「えーっ!?技巧派って言うからてっきりもっとクールだと思ってた!マジでヤバい!あ…そうだ。アタシは板野麻里奈。ヨロシク♪」


「なるほどー。あのダークネスパワーに対抗できる新しいミューズナイツか。そういや私が開発した技を使いこなせてる?ヒーリングショットレガートっていうの」


「ああ、バッチリッス!なんかさ…ここ一発で放つぞって時になると失敗しない気になれるというか、身体が滑らかに動くんだよね」


「うん。そのレガートっていうのはなめらかにって意味で流れるように演奏するんだ。ガチガチに固まるのも時にはいいけど…やっぱり滑らかじゃないとせっかくの技術とか経験が台無しじゃん?麻里奈だっけ?その滑らかさというのにどんな印象持ってる?」


「えーっと…アタシは…」


麻里奈は突然何を聴きだすんだろうと思ったが予想外の質問に困惑する。


滑らかさとは何だと言われても人生に役に立つのかが分からないので適当に答えようも中身がないと結衣に怒られそうな言葉しか浮かばず黙ってしまう。


しかし麻里奈は考え込むのは自分らしくないと思い、いつものノリと勢いで行きつつ自分なりの意見をまとめてこう言った。


「まぁやっぱりスムーズに動くとか慣れてる感じでいくってのもまた滑らかさなんだろうけど、時には何も考えずに時の流れに身を任せるってゆーか?ここまで頑張ったんだから残るは結果を待つことも大事だって思うんだ。アタシもモデルになる前は何も考えずにしたら太った。努力を怠ったら身を任せるじゃなくてただのサボるなんだよ。そこで考えて努力して突っ走った先に時の流れに身を任せるようになるんじゃないかなーって思う。サボるのと委ねるのは別って感じじゃないかなってね」


「ふーん…。なんか軟派そうだと思ったけど以外にも自分の考えってのがあるんじゃん。私もちょっと技術があるからって努力を怠って時間だけ無駄に過ごして、はじめて騎士団長に負けてさ…凄く悔しかった。だから必死に頑張ってリベンジする時に自分の全てをぶつけて、結果に委ねたら負けたけど剣を弾き認めてもらったんだよね。ある意味その場のノリで突き進むってのも悪くないのかもね。アンタの言う通りだよ。これなら私の後継者に相応しいかも」


「よっしゃ!…かも?」


「んー…でもやっぱりただで後継者と決めつけるのは早いかなーって思ったな。どう?ここで腕試ししない?ここは射撃場にもなってて撃ち合いしながら相手の陣地にある的のど真ん中を先に撃ち抜いた方が勝ち。サバイバルゲームだっけ?それに近いゲームをやるのさ。準備が出来たらこのライトでチカチカさせて。ちょうど夜中だし見えるっしょ」


「へー!面白そうじゃん!パイセンの試練ってやつ?乗り越えてみせる!」


麻里奈とタレイアはノリと勢いで試練を開始する。


お互いに自陣に入り準備が出来たので、夜空に向かってライトをチカチカ点滅させる。


合図を終えるとお互いにいいスタートを切って敵陣の方へ向かう。


ところが…


「ここならど真ん中だしどうせ合流するっしょ!そこだ!ってあれ…?いないじゃん…」


「へへへ…誰も公園の敷地内とは言ってないよ。残念だけど学力はどうあれ頭の回転は早くないと勢いに乗れないよ…」


「あれ…?どこにいるんだ…?」


「今だ…残念でした!私はここだよー!それっ!」


「うっ…!」


タレイアはあらかじめ掘っていた穴の中に入り公園の地面の下に潜んでいた。


ただこのまま進んでも地盤が固くて進めないのも把握していて、あえて麻里奈を待ち構えてそこから正面突破しようと踏んだ。


タレイアの一発が麻里奈の胸に命中し、そのまま麻里奈は倒れ込んだ。


「クッソ…まさかこんな手で来るなんて…!」


「言わなかった?流れに身を任せるには考え込んだ上で成功するんだって。闇雲に委ねてもそんなものはただの無策と一緒なんだよ。闇雲に夢に向かっても叶いにくいんだよ。ノリは計算された上での衝動ってわけさ」


「はは…先輩には敵わないや…。やっぱり初代の人に任せるべきだったかなぁ…」


「えー?もう諦めるの!?後輩って頼りないなー。じゃあアンタはここでリタイア…」


「なーんちゃって…♪こっからが世代交代ッスよ!さっきは凄く痛かったんだかんね!」


「嘘!?サーベル二つ!?アンタ接近戦も出来るの!?そんなの聞いてないよ!」


「ぶっちゃけこれは勘だけど…先輩は最初に会った時にクロスボウの動きには慣れてたけど、アタシの反射神経とスピードに驚いた上に、体のバランスの崩れ方があまりにも酷すぎて体幹力がないって気付いたのさ!おかげで体術や接近戦が苦手ってヤマを張ったんだ!」


「うっわー、もうその一瞬でわかっちゃったかー…」


「アタシの女の勘をナメんな!くらえっ!」


「うっ…!」


「今だ!アタシがここで決めてやるっ!ヒーリングショット…レガート!」


「うわぁぁぁぁぁぁぁっ…!」


「はぁ…はぁ…!どや!」


麻里奈の渾身の一撃がタレイアの全身に命中し、さすがのタレイアも耐えきれずに倒れ込んだ。


麻里奈は全力全開で放ったため疲れ果てて座り込む。


するとタレイアは突然ピンピンしたように起き上がり、武器を置いて麻里奈に近づいた。


「なーんだ、やれば出来んじゃん!麻里奈はただのノリと勢いだけのイノシシちゃんかと思ったけど、勘が鋭く運命に委ねるのが上手いんだね。私の完敗だよ。これで私の試練はもうおしまい。おめでとう!」


「あざっす!って先輩苦しいッスよー!」


「おめでとうのハグだし!遠慮なく受け取れしー!このこのー!」


「あはははっ!」


麻里奈とタレイアは気持ちが調和されたのか、ハグしながらくすぐり合い両者の健闘を称えた。


少し時間が経つと、あっという間に過ぎたかのように感じ、二人はベンチで座り込む。


タレイアはいつもの明るい性格とは逆に、少しだけナーバスになって麻里奈に語る。


「ぶっつけ本番ってのは気持ちで負けたらせっかくの勘も鈍るし、だからって出来なかった事を違う形で受け入れたらそれは成長じゃないってワケ。世の中はノリと勢いだけで上手くいくほど甘くはない事は確かに事実だよ。でも時にはノリと勢いに任せるところもあってそこが上手くいけば人生が滑らかになるんだよ。この音楽のようにね。麻里奈、アンタとはここでお別れだけど悪夢の女帝なんかに負けんなよ?」


「りょ!このアタシにお任せあれ!」


「あーあ。後輩に負けたのは悔しいけどこれで悔いはなくなったなー。じゃあ…現世の世界を頼んだよ」


こうしてタレイアは消えていき麻里奈は彼女の遺志を受け継ぐ。


勘とかノリとか勢いがあると物事がスムーズに進み無駄な力を抜くことも事実だ。


だがそれはちゃんと考え組み立てたから成り立つものであって無計画すぎると得たものがあるのに持ち腐れてしまう。


麻里奈はその心を胸に刻み目が覚めた。


つづく!

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