003話 嵐の予感
この作品を選んで、お読み頂きありがとう御座います。
誤字脱字があると思いますが、出来れば誤字報告して頂ければ幸いです。
この物語はフェイクションです。
物語中の世界観は独自の世界観で書いておりますので、法律、慣習、習慣、常識等に異質な部分が多々ありますが、其れを含めて楽しんで読んで頂きたいと思います。
美玲は榊家から祖母の家に帰ってから部屋着に着替えベッドの上で横になり、榊のお爺様に伝えられたことを考えていた。
本当に戸籍上の夫である敬に愛されているのか未だに信じられず、敬が渡米してから真面な連絡も何も無く、美玲からも仕事の邪魔になるといけないと思い連絡する事もなかった。
ただ敬とは元旦に行われる榊家本家で行われる新年を祝う為に一族が集う新年会に参加する為に帰国し夫婦として新年会に2度参加するだけで、その2度とも終わると直ぐに本家を出てそのまま渡米してしまった。
なので敬と契約結婚してから2人でゆっくり会話した事もなく、普段から無口で無表情なので何を考えているのか分からず、ただ『待ってくれ』としか言われてなかった。
敬は見た目だけだったら顔も鼻筋がスッキリした美男子であり、背丈が185cmもあり筋肉質でガッシリとしていて足も長く令嬢からも人気が高かった。
一時期は白鳳財閥の御令嬢の白鳳麗奈が敬と交際宣言を行い噂にはなったけど、敬の方が余り興味がなかったのか麗奈を公の場で避ける様になり噂が自然消滅した。
美玲が描く敬の性格は女性に興味がなく氷の貴公子と謂れ程の冷血漢であり、無口で無表情で他人を信じる事が出来ないただの見た目が格好いい仕事をするだけの機械人間にしか思えなかった。
敬は東京大学経済学部を卒業すると直ぐに、廉造の推薦で直ぐに榊コーポレーション株式会社の代表取締役に就任し、会長の廉造の下で厳しい指導を受けながら社長としての業務を務めた。
敬が社長に就いてからは叔父でもある専務取締役の榊圭司との権力争いが水面下で行われており、裏切りや足の引っ張り合いなどで心身共に疲弊していく。
叔父の圭司との権力争いと社長としての業務を熟しながらの忙しい日々を過ごしているうちに、無口となり感情が表に出ない様に無表情となり現在の氷の貴公子と二つ名が付く程に時間を掛けて変貌していった。
敬の女嫌いも社長に就いて3年が経った頃から様々な御令嬢とのお見合いを月に1度から2度熟して来たが、身辺調査をすると叔父の圭司の息が掛かった家の御令嬢達が殆どあった。
それ以外にも私生活でも様々な形でハニートラップが仕掛けられる様になり、女性がいるバーなどの店には一人で行かず、近寄って来る若い女性とは線を引いて避ける様になった。
そんな事もあり敬が唯一心を開いて付き合える女性は幼い頃から妹の様に可愛がっていた従姉の玲だけとなってしまい、妻を娶るなら玲の推薦する女性にしようと決めいた。
玲とは渡米してからも頻繁にメールのやり取りを行っており、契約結婚をした妻である美玲の情報も玲から伝えられており、美玲の写真も時々送って貰っていた。
ただ敬は美玲と何を話して良いか分からず、メールを何度か送ろうとしたが送る勇気が出ず、メール文を打っては消してを繰り返し、その度に玲に『いい加減にしなさい』とメールで叱られる始末であった。
敬が本家の新年会に参加する為に2度帰国して、美玲と夫婦として参加した時に会い、美玲が隣に座っているだけで胸がトキメキ直ぐにでも抱きしめたい感情を強引に抑えた。
叔父の圭司との権力争いを終わらせない限り、美玲とは愛のない契約結婚として押し通さなければ、美玲が圭司に狙われ危険な目に合うのだけは何とか阻止しなければならなかった。
榊家当主でもあり榊コーポレーションの会長でもある廉造は次男でもある圭司に対し、敬の母親で監査室長の千賀子と共に榊グループ会社内に蔓延る人脈の炙り出しを行った。
この際に榊グループ会社内に存在する腐敗した部分を排除し、悪事を働いた者達を悉く解雇や懲戒免職処分や左遷等の処分を行い、それに伴うグループ会社の統廃合を敢行した。
圭司は長い年月を掛けて作り上げてきた裏金資金のネットワークと人脈と権力をまさか実の父親である廉造の手に依って次々と削がれて行くのに対し憤りを感じていた。
更に止めとなる圭司の右腕でもある榊建設株式会社の代表取締役・佐伯まで資金横領の咎で逮捕されたニュースを聞いて激しく憤る。
「クッソ!あのクソ親父め、このままでは不味い、如何したら良いんだ」
圭司は執務室のデスクを叩いて悔しがる。
圭司は会長でもある廉造の命によって目の上のたん瘤でもあった敬がニューヨーク支社に飛ばされた事で油断してしまい、今がチャンスだと思い一気に勝負に出た。
敬がニューヨークに行っている間に一気にトップを狙う為に必要な資金集めを強行し、裏金資金ネットワークをフル活用したのが廉造と千賀子の手によって暴かれ処分されて行った。
圭司は甥でもある現代表取締役社長の敬ばかりを見て様々な工作活動を行い、金と人脈を使い敬の業績の足を引っ張ることに集中して行っていた。
その成果として会長の廉造が敬を見放しニューヨーク支社に左遷したのだと思い込んでいたが、実際は実の父親の廉造が仕掛けた圭司に対する罠だったと今になって気付く。
「専務、会長が午後3時に第1会議室で臨時取締役会を開くとの事です」
秘書の鈴原里香が執務室のドアをノックしてから執務室に入り、一礼してから圭司に伝える。
「なに、会長が臨時取締役会を開くだと、そうか分かった。下がれ」
圭司はドアのノックを聞いて直ぐに冷静さを装い、秘書の鈴原から用件を聞き、会長から何らかの処分が下されると覚悟を決める。
「はい、それでは失礼します」
秘書の鈴原は専務の圭司に用件を伝え、圭司からの退室を命じられると一礼してから執務室を後にする。
圭司は秘書の鈴原が退室するのを確認すると椅子の背もたれに背中を預けて天井に視線を向けて思わず苦笑いを浮かべる。
まさか実の父親である廉造にして遣られるとは夢にも思わず、如何いう処分を言い渡されるのかと思い果てる。
ただ6年前の横浜臨海プロジェクトでの落下事故に関し、これ以上深堀され証拠が出ると実の兄を計画的に殺した事になり実刑判決を間違いなく受け、これから先の人生が詰むことになる。
それだけは何とか阻止しなければならないが、此処は大人しく処分を受けた方が良いのかと思い、先ずは臨時取締役会でどのような処分が下さられるのか、その後に考えるしかないかとタメ息を吐く。
午後3時から第1会議室で行われた臨時取締役会で圭司は榊建設株式会社の代表取締役社長の佐伯の不祥事で発覚した裏金資金問題は圭司が主犯だと断定された。
裏金資金のネットワークを築いたのは当時の社長であった圭司が構築した事が判明したので専務取締役を解任し、更なる内部監査を行う為に自宅謹慎する様に会長の廉造から言い渡された。
「いいか圭司、これ以上の悪足掻きを行い問題を起こせば、お前の家族諸とも路頭に迷う事になるぞ分かっているな」
廉造は圭司を睨みつけて最後通牒を宣告した。
「それは如何いう意味ですか会長」
圭司は廉造から『お前の家族諸とも路頭に迷う事になるぞ』と言われ焦り、何を意図して言ったのか廉造に聞き返す。
「如何いう意味だと、お前はどれだけ榊家の面子に泥を塗ったか分からんのか、これ以上新たな問題を引き起こせば、お前達家族全員を榊家から完全に追放すると言う事だ」
廉造は圭司に対し完全に見切り、これ以上の問題を引き起こせば家族全員を追放すると言われてしまいショックを受けた。
圭司は実の父親の廉造に此処まで見放されているとは気が付かず自分だけでなく、大切な家族までもが榊家から全員追放されてしまうとは考えておらず会議室で一人残り茫然とする。
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