9. 新生ユークリッド王国の末路
颯太は1週間目を覚まさなかった。そしてセイガはずっと側で颯太を見守り続けていた。
8日目の朝、颯太はゆっくりと目を開いた。セイガが気付いてベッドの上の颯太へゆっくりと歩を進めた。
「ソータ、気分はどうだ?」
颯太の目がセイガを捕え、大きく見開かれた。
「俺・・・戻って来たんだね」
「お前・・・瞳の色が・・・それに雰囲気も変ったようだ」
セイガは素直に驚いている。
「え、瞳の色?」
「ああ。以前はアレクと同じアイスブルーだったのに綺麗な紅に変っている」
「そうか。セイガ、俺はこの世界の歴史を見てきた」
「歴史?」
「ああ。シン・サクライがこの世界に来た時から新生ユークリッド王国まで、ペンダントが記憶しているこの世界をな」
「じゃあ、我々のことも・・・」
「セイガがどうやってアレクやエルに会ったのか。セイガがアレクと、ロンがエルと契約したことも。最後にエルがセイガにこのペンダントを託した時まで。だがその後の事は分からない。その時から300年は経っているんだろう?エルとロンはどうしたんだ」
セイガは耳を後ろに倒し蹲った。
「エルは・・・魔王の后となった。そしてロンは契約に従い災いをもたらすと言う黒竜となったのだ」
「はあ?どうしてそうなる。彼女は聖女と呼ばれていたのではないか?」
「今から250年程前だ。アレクが作った魔人族との結界が緩んで魔族が頻繁に人間の領域へと出没し始めたんだ。だが、首都ペレスを中心にした王侯貴族達は辺境の出来事など意に介さず己の私利私欲を追い求めることしか眼中になかった。エルはその当時、ずっと神殿の奥深くに引きこもっていて貴族達の横暴を見て見ぬ振りをしていたんだ。だが、結界の緩みを知らせる書状が届き彼女はロンと私と共に結界の調査に乗り出したんだ。そこで彼女は出会ってしまったんだよ。圧倒的な魔力と美を持った若者に。それが目覚めたばかりの魔王だった。そして彼女は一目で恋に落ちてしまったんだ。彼女は迷いながらも魔界へと行き、魔王の后となった。ロンも契約に従い彼女に付いて行ったよ。エルは堕落した貴族政治にウンザリしていたのかもしれない。彼女は后の地位に就くとすぐヴァンパイア達を集め新生ユークリッド王国を攻めた。腐敗していた新生ユークリッド王国は脆かった。あっという間に首都ペレスは陥落し新生ユークリッド王国は瓦解した。今、残って居るのは守りを固めていた自治領だけで殆どが魔王領に組み込まれている」
長い沈黙が落ちた。
「それで・・・セイガはどうしてたんだ?」
「私は賢者シリウスと共に獣王国が魔王領に飲み込まれないよう力を尽くしていた。獣王国は私にとっても重要な場所だったんでな。そうして館から呼び出しが来たんだ。今までずっと眠りについていた館からな。来てみたら地下にある魔石が異常に輝いているという。そしてお前に会ったというわけさ」
セイガの話にはどこか苦い悲しみの様な物が含まれていた。




