7. 館 ④
夕食の準備が整ったとマルコムに案内され、食堂に入るとそこに見知らぬ男が座っていた。顔面偏差値が非常に高いのだが、人ではないのは明らかだ。頭の上に耳があり、椅子から垂れ下がったふさふさした物はどう見ても尻尾だ。驚いて固まっているとその男は楓太に促すように言った。
「どうしたソータ。早く座れ。食事が冷めてしまうぞ」
「もしかして、セイガなの?その姿はあの、その・・・」
「ああ、お前に見せるのは初めてだったな。これが私の人型の姿だ。食事の時はこの姿の方が便利なのでいつもこの姿でいる。夕食はビーフシチューだそうだ。私もここで食事をするのは久しぶりでな、ずっと楽しみに待っていたんだ」
テーブルの上に、次々と料理が運ばれてくるのを見て、セイガは目を輝かし、尻尾がゆらゆら揺れている。早速食べ始めたセイガを横目に、楓太は疑問を投げかけた。
「ねえ、セイガ、この世界では時間はどうやって計っているの」
「時間か」
そう言いながらセイガは壁掛け時計を見た。その時計は日本でも見たことがあるものだ。今は、7時10分を指している。
「そうじゃなくて・・何というか、年とか月とかの単位というか長さがあるのかどうか」
「あの時計が一回りすると12時間だろう?1日は2回りしたら1日だ。1日が30日で1月、1月が12月で1年になる」
ーーーそうか時間の間隔は日本に近いな。
「それでセイガはアレクがいなくなって300年位経ったと言っていたけど、年号の呼び方とかあるの?今はいったいいつでどの月どの日なの?」
「そんなことを心配していたのか。アレクがいた頃は新生ユークリッド王国歴で読んでいたな。残念なことに新生ユークリッド王国は無くなってしまったから、竜人王国の暦で2080年の6の月の10日だ」
「えっ、新生ユークリッド王国はなくなってしまったの?」
するとセイガは苦い顔になり、「ああ。魔族の侵攻に堪えられなくてね」と言葉少なに言った。
「アレクの部屋にある『パソコン』とやらにいろいろ歴史が書かれているようだから勉強するといい」
そう言って話を切り上げた。
「出来るだけ早くこの世界の事を学んでくれ。ここは今のところ安全だが外の世界はどのように変化するか分からない。それに黄金の道の探索したいんだろう?魔法の勉強もしなければならないし、明日からやることは一杯ある。今は夏だが冬になる前に乗馬も覚えなければな」
食事が終わりマルコムに言って、もう一度アレクの部屋に行って明かりを点けた。この館全体に電力の居級があるようだ。不思議に思いマルコムに聞いてみると、太陽光発電しているという返事が返ってきた。
ーーまあ、何というか異世界で至れり尽くせりということか
引き出しを開け、桜井健太のノートを持ち出し自分の寝室へ向かおうとするとマルコムが、温泉に案内すると言う。驚いたことに地下に浴場施設があった。
温泉を満喫し、寝室に帰ってベッドに横になると、余程疲れていたんだろうか、知らない間に眠っていた。




