5. 館 ②
「あのうマルコムさん、それは本当のことですか?」
颯太の問いにマルコムは微笑んで
「『さん』は必要ございません、ソータ様。全て本当の事でございます。ただ、魔石の中の魔力量はまだ50年分ございますのでご安心ください」
マルコムの答えを聞いて少しホッとしたのか、お腹がグウと鳴る。そんな颯太を見てセイガは笑ってマルコムに指示を出す。
「マルコム、ソータに何か消化の良い物を作ってくれないか?体がやっと慣れてきたようだ」
「かしこまりました」
暫くして、マルコムは温かいポタージュスープを持って来た。その匂いに颯太の腹の虫は更にぐう~と激しくなっている。マルコムはスープ皿に盛り付け颯太の前に置いた。颯太はスプーンで恐る恐る口を近づけ一口飲んだ。目を見開き次々とスープをすくう。気が付けば皿は空になった。颯太は物欲しそうな目をマルコムに向けるとマルコムは微笑んでスープを継ぎ足した。何杯目かのお代わりをして颯太は満足して顔を上げた。
「こんな美味しいスープをこの世界で味わえるとは思っていなかったよ」
「これはアレク様が残していったレシピに基づいてつくったものです」
「ああ、アレクの料理は最高だったからな」
「父のレシピ?そう言えば父さんは、気が向いた時に料理作ったことがあった」
「羨ましいぞ、お前」
セイガは随分昔に味わったアレクの料理を思い出したようで唸っている。
「今はこれ位にしておきましょう。夕飯には固形物もお持ちします」
マルコムが下がった後、お腹が満ち足りた颯太はセイガに聞いた。
「ねえ、セイガ。この館の周りはどうなっているのかな」
「この周りには牧場や果樹園、畑があるが」
「見てみてもいいかな」
「そうだな。腹ごなしに館の周りを見てみるか。ソータ俺に乗れ。牧場までは結構距離があるからな」
そう言って、セイガは颯太が乗れる程の大きさになった。
「わあ、凄いね、セイガ。大きさを自由に変えられるんだ」
「いいから乗れ。しっかり掴まってろよ」
そう言ってセイガは颯太を乗せて館の外に出る。そしていきなり走り出した。
「うわあ、セイガ」
「こんなの走っているうちに入らん。ほら、あそこが牧場の厩舎だ。ここではゴーレム達が動物達の世話をしている」
「ゴーレム?もしかしてこれも魔石の力で動いてるの?」
「ああそうだ。馬の厩舎の向こう側に牛、羊、豚等がいる」
「うわあ、すごいなあ」
厩舎や牛舎、その他に多くのゴーレム達が働いている。そしてその奥に広々とした牧場が見えた。馬がいる牧場に行くと、馬たちがゆっくりと彼らの方に近づいて来た。
「セイガ、馬たちはオオカミの君を怖がってないの?」
「当たり前だ。私は神狼だぞ。それに彼らは私に守って貰っているのを知っている」
「へえ、そうなんだね。ああ、あの黒い馬かっこいいな」
「あの馬はアレクの愛馬クロックの子孫だ。まだ大人になっていない若駒だが、お前の馬にするか?」
「ええっいいの?」
「ほら、来たぞ。撫でてやれ。お前が名付けをするんだ」
黒い若駒は颯太の前にに来て不思議そうに颯太を見ている。そんな若駒の鼻面を颯太はそっと撫でた。
「そうだな、君は速そうだ。ウィンディなんてどうかな」
若駒は気に入ったのか鼻面を甘えたように颯太に擦り付けた。セイガはその様子を目を細めながら見ていた。
「良かったな、ウィンディ、良い名前だ。この世界では乗馬は基本中の基本だ。もし乗れないのならば明日からでも訓練しよう」
「本当?宜しくね、ウィンディ」
若駒は分かったと言いたげに一声嘶いた。




