4. 館 ①
気が付くと颯太はベッドの中にいた。いつの間にか眠ってしまったらしい。側で蹲っていたオオカミがベッドに近づいて様子を伺う。
「ああ、セイガ、あの後僕は寝てしまったんだね」
「一週間もだが。お前があちらの世界に帰ってしまったかと焦ったぞ」
「それはないみたいだ。でも、寝たおかげで体がスムーズに動くようになった気がする」
「ああ、あの頃のアレクより幼くなった気がする。お前、実は何歳だ?」
「今年16歳になったばかり」
「だからか。その器はお前に併せて変化するようだ。ちょっと立ってみろ」
颯太は起き上がり、ベッドからこわごわ立ち上がった。
「うん、立ち上がれるし、動かせる」
「若いな。年相応になったってことか。私がアレクに会った時はもう彼は立派な大人になっていたからなんだか新鮮だな」
「そうなんだ。それまでアレクはどうしてたの?」
「彼はシュトラウス王国の王子だったんだ。『黄金の道』を探索する為に始まりの街に来ていた」
「黄金の道?」
「ああ。年に2回春分点と秋分点にその黄金の道が現れる。それを調べる為にやって来ていた」
「へえ、不思議だね。それでそのアレクはその謎を解明したの?」
「いいや、彼はエルと言う少女に出会って一緒に黄金の道に沿って旅をしたんだが、いろいろな事があって結局、彼は元の世界に帰ってしまったのさ」
そう言ってセイガは下を向き、「僕と約束してたのに」と小さな声で呟いた。
「ねえ、セイガ、僕、その『黄金の道』に凄く興味がある。僕と一緒に探索しないか」
「それも面白そうだ。だがその前に、お前には学ばなければいけないことが山ほどあるぞ」
「そうだね。この世界のこと何も知らないし」
「ああ、それにな、お前には魔法を学んで貰いたい」
「えっ、魔法?魔法があるんだ、この世界」
「ああ。しかし人族は殆ど魔法が使えない。だがアレクは偉大な魔法使いだったんだ」
「じゃあ、僕も使えるようになるってこと?絶対使えるようになりたい。どうしたらいいの?」
「まあ待て。私はそんなに魔法が使える訳ではないのでうまく教えられない。本当はシリウスに頼むのが一番いいのだが、彼は獣王国を守るので精一杯でな。それに彼はもうそろそろ・・」
そう言ってセイガは唸っていたが思い出したようにこう言った。
「そう言えば、アレクは北の大国、ズデーデン王国で魔法を学んだと言っていたな。この世界の事を学んだ後、ズデーデン王国に行ってみるか」
「うん、セイガ、そこに連れて行ってくれる?」
「ああ。あそこは私の故郷でもある。でも何より、この世界のことを学ばなければな」
そこで静かにノックの音が聞こえ、一人の男が入って来た。
「お目覚めになられたんですね。私はこの館を任されている執事のマルコムを申します。『アレク』様と及びしても?」
「僕は桜井颯太です。『ソータ』と呼んで下さい」
「ソータ様ですね」
「このソータは向こうの世界でアレクの息子だったそうだ」
「成程、そう言う訳だったんですね」
「宜しくお願いします」
「ソータ、このマルコムや館にいる者達は実際に生きている者ではない。魔法で創られたホムンクルスという魔法生物だ。地下にあった魔石で生かされている。お前も魔法が使えるようになったら魔石に魔力を入れてくれ。残りが大分少なくなってきた」
セイガの話をソータは目を丸くして聞いていた。




