22話 悪役令嬢、テスト結果を確認する
前期末試験から数日後。
王立魔法学園の掲示板前には、多くの生徒が集まっていた。
理由は一つ、試験結果の発表である。
掲示板には成績表が貼り出され、生徒たちがそれを囲んで騒いでいる。
「見えない!押さないで!」
「俺の順位どこだ!?」
「やった!上がってる!」
そんな喧騒の中、ミレイユは少し離れた位置から掲示板を見ていた。
(……来ましたわね)
試験という名の戦争の結果発表。
正直なところ―—
(あまり見たくありませんわ……赤点があったら普通に怒られそうですし....)
だが逃げるわけにもいかないず、覚悟を決めて掲示板へ向かう。
◆
まず目に入ったのは――
ノアとアンリの名前だった。順位は1位と2位。
「流石はアンリだね。まさかクラウスを抑えて2位になるとは」
1位であること驚きもしていないノアがアンリに視線を向ける。
「い、いえ.....今回はたまたま運が良くて...それに皆さんが勉強会を開いてくれたおかげです!」
(ここは原作通りですわ.....ということは2人の好感度が上がるはずなのだけど.....)
「流石アンリさん、すごいですわね!」
「えへへ……本当に、その、皆さんに教えてもらったおかげです!」
本人が少し照れくさそうに笑っていた。
「ノア様も流石です。実技も座学も両方でトップなんて、凄すぎますわ....」
ノアは柔らかい笑みを浮かべる。
「ありがとう、ミレイユ。君に褒めてもらえて嬉しいよ」
その表情は本当に嬉しそうだった。
◆
続いてセシリア。こちらも当然のように上位。
「流石、セシリアですわね」
セシリアは落ち着いた笑みを浮かべる。
「ありがとうございます、ミレイユ様!皆さんとの勉強会のおかげですわ!」
隣ではルインも結果を見ていた。
「私もまあまあでした!」
順位は上の下程度。十分優秀だ。
(まあまあ.......ルイン、謙虚さとは時に人を傷つけるものですわよ....)
◆
少し意外だったのはレオニードの結果だ。ルインとセシリアよりも上位であり、堂々の5位である。
「いや~、少し遊びすぎちゃったかな」
レオニードはいつものように軽い口調で掲示板を見つめている。
「遊びすぎと言っても、レオニード様。5位ですよ。凄いじゃありませんか」
「ノアが1位の手前、俺が5位だと格好がつかないでしょ。次はもう少し真面目にやるか~」
(そのノリで5位ですか.....そういえばレオニードだけ勉強会には来てませんでしたわね....地頭がいいの羨ましすぎますわ......)
「それにねミレイユ。男はカッコイイところを見せたい生き物なんだよ」
「はあ....そういうものなんですのね...」
(カッコイイところ.....これはもしかしてアンリに対してですの!?いつの間にそんなに仲良くなって....これは...動向に注意しなければ行けませんわね......)
そして、その少し上の3位にはクラウスの名前。
当然のように上位にいることにミレイユは思わず呟く。
「……でしょうね」
後ろから声がした。
「当然だ」
振り向くと本人が立っている。クラウスは腕を組んだまま言った。
「お前はどうだった」
(聞きますのね……)
◆
ミレイユは視線を掲示板へ戻し、自分の名前を探す。
……あった....順位は真ん中より少し下。
だけど――
(赤点がない……!)
ミレイユの目が輝いた。
「やりましたわ……!」
アンリが振り向く。
「ミレイユ様?」
ミレイユは感動していた。
「赤点がありません!」
アンリが一瞬止まり、そして笑った。
「よかったです!」
◆
ただし、一つだけ。教師のコメント欄にはこう書かれていた。
実技:非常に優秀
座学:努力を要する
(分かりやすすぎますわね……)
だが赤点は回避した。ミレイユにとっては、それだけで十分だった。
◆
赤点回避に感動している最中、
「ミレイユ」
ノアは掲示板を見て言う。
「実技、かなり高いね」
「ありがとうございます」
「座学は?」
「……なんとか赤点は回避しましたわ!」
ノアは一瞬沈黙し、そして笑った。
「それは大きな進歩だ」
(褒められているのかどうか微妙ですわ……)
◆
ノアはふと思い出したように言う。
「そうだ」
「ミレイユ、夏休みの予定は?」
(来ましたわね)
ミレイユは警戒した。
「特に決まっておりませんわ」
ノアは頷く。
「そしたら、別荘に来ないかい?」
◆
ノアの別荘。湖のある避暑地。大自然。
(原作イベントの舞台ですわよね!?.....ただ...これも少し状況が違いますわ....ミレイユは無理やり付いていく.......少なくとも誘われることなんてなかったはずですわ.....)
ミレイユの脳内で警報が鳴る。
原作ゲームの夏休みイベント、つまり好感度イベント。
(フラグの宝庫ではありませんの……!これは回避する一択ですわ!!)
ミレイユは丁寧に微笑んだ。
「申し訳ありませんが――」
「皆も来るよ」
「え?」
◆
ノアは指を折りながら言う。
「レオニード、クラウス、アンリ、セシリア、ルイン」
「全員誘ってあるよ」
(……はい?)
ミレイユの思考が止まった。攻略対象、ヒロイン、その他主要人物。
(フルメンバー!?完全に原作改変が起きてますわねこれ....)
「もう皆了承してるから、後はミレイユだけだね」
ノアは穏やかに言うが、逃げ道を断っているのは明らかだった。
ミレイユは消え入りそうな声で返事をする。
「....はい.....是非....私も参加させていただきますわ......」
ノアは満足そうに頷き、生徒会室へ戻っていった。




