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悪役令嬢転生物語  作者: だいふく


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22/25

21話 悪役令嬢、試験を乗り切る

数日後、ついにその日がやってきた。

王立魔法学園・前期末試験。教室には普段とは違う緊張が漂っていた。

机の上には試験用紙、インク。そして重苦しい沈黙。

(……来てしまいましたわ.....)

ミレイユは静かに息を吐く。前世でも何度も経験した光景。

(学生時代から思っていましたけれど...試験という制度、あまりにも残酷ではありませんこと?)

どれだけ努力しても、理解しても、一枚の紙で全てが決まる。

(理不尽極まりませんわ......)

――とはいえ、逃げられない。

「それでは始め」

教師の声、試験が始まった。



最初の科目は魔法史。

(……)

ミレイユは問題用紙をめくり、そして固まった。

(問題文も文字が多いじゃないの....)

分かっていた、分かっていたが。実際に目にすると圧倒される。

(落ち着きなさい、ミレイユ・アルノー)

深呼吸し、思い出す。

アンリの説明、セシリアの補足、ルインの図、クラウスの理論、ノアの表現。

そして、カインの整理された解説。

(……大丈夫)

ゆっくりとペンを動かす。

「第三次属性均衡改革の背景を述べよ」

(これは……)

アンリの声が頭に浮かぶ。

“各属性の魔術師の権力争いが背景で――”

書ける、思い出せる。

(勉強会の成果ですわ……!)



次は術式理論。ミレイユは問題を読む。

「魔力循環構造を説明せよ」

(来ましたわね)

例のやつだ。魔力がぐるぐるするやつ。

(……いや、違いますわ)

クラウスの声が脳内で響く。

“圧縮、循環、放出”

ノアの声も重なる。

“流れで考えた方がいいね”

そして自分が例えたものを思い出す。

“魔力は血液に近い”

ミレイユはペンを走らせる。

(これも……書けますわ……!)



筆記試験が終了し、教室に束の間の安堵が広がる。

アンリが振り向いた。

「ミレイユ様!」

「……終わりましたわ」

セシリアも微笑む。

「手応えはいかがです?」

ミレイユは考え、そして正直に答えた。

「赤点は回避できたと思います!」

アンリがぱっと笑顔になる。

「すごいです!」

(笑顔が眩しい....目標が低いと思わないでくださいまし……)

波乱の筆記テストだったが、ミレイユにとっては大勝利だった。



しかし、試験はまだ終わらない。次は魔法実技試験だ。

広い演習場に学生たちが集まっている。

教師が言った。

「順番に術式を展開してください」

やることは単純だが、簡単な試験ではない。

魔力の制御、威力、精度。これらを上手く調節し、総合的に判定される。

ミレイユは前に出る。



(……筆記は疲れましたわ)

精神的に消耗し頭を使いすぎた。

(だからこそ)

ミレイユは微笑む。

(こちらは得意分野ですもの)

魔力を練り、流れを作る。体に馴染んだ感覚。

「炎属性基礎術式」

魔力が走り炎が生まれ、完璧な制御。

炎は大きすぎず、小さすぎず、揺らぎもない。

美しい火に教師が頷く。

遠くで見ていたクラウスも頷いたように見えた。



続けて応用術式。

ミレイユは息を整える。

(筆記の鬱憤……ここで晴らしますわ)

炎を操り、そこに風を混ぜる。

炎が揺れる。踊るように。

不安定に見えるが、規則的に揺らいでおり、制御された魔力。

まるで料理の火加減のように絶妙な調整だ。周囲から小さなどよめきが起きた。

アンリとセシリアは目を輝かせ、ルインも拍手していた。

教師が言う。

「良い制御だ」

ミレイユは軽く一礼する。

(やはり魔法の方が気楽ですわね……)

頭で考えるより感覚で動く方がずっと楽だった。



全試験終了。学生たちの顔は疲れ切っていた。

アンリが大きく伸びをする。

「終わりました……!」

セシリアも息を吐く。

「長い戦いでしたわ」

ルインは笑う。

「これで夏休みですね!」

その言葉に教室の空気が一気に変わる。

そう、夏休みが始まるのだ。



夏休み。学生たちの顔が一斉に明るくなる。

旅行、帰省、研究、自由な時間。

アンリが嬉しそうに言う。

「皆さん、夏休みはどうされますか?」

セシリアは考える。

「私は避暑地に行く予定です」

ルインも頷く。

「私は実家ですね」

視線がミレイユに集まる。

「ミレイユ様は?」

ミレイユは少し考えた。

「そうですわね.....」

(たしか原作では……夏休みに大きなイベントがあったはず)

湖、合宿、魔物騒動、ダンジョン攻略イベント。

(フラグの宝庫ですわね……)

ミレイユは静かに天を仰ぐ。

イレギュラーはあれど、せっかく平和な日々が続いていたのに。

どうやら、まだ波乱は終わらないらしい。

(まあ....とりあえずは....)

小さく笑う。

「皆さん、試験お疲れ様でした」

夏の風が吹く王立魔法学園。

前期は終わり、物語は次の季節へ進もうとしていた。



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