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悪役令嬢転生物語  作者: だいふく


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22/25

21話 悪役令嬢、試験を乗り切る

数日後、ついにその日がやってきた。

王立魔法学園・前期末試験。教室には普段とは違う緊張が漂っていた。

机の上には試験用紙、インク。そして重苦しい沈黙。

(……来てしまいましたわ.....)

ミレイユは静かに息を吐く。前世でも何度も経験した光景。

(学生時代から思っていましたけれど...試験という制度、あまりにも残酷ではありませんこと?)

どれだけ努力しても、理解しても、一枚の紙で全てが決まる。

(理不尽極まりませんわ......)

――とはいえ、逃げられない。

「それでは始め」

教師の声、試験が始まった。


◆


最初の科目は魔法史。

(……)

ミレイユは問題用紙をめくり、そして固まった。

(問題文も文字が多いじゃないの....)

分かっていた、分かっていたが。実際に目にすると圧倒される。

(落ち着きなさい、ミレイユ・アルノー)

深呼吸し、思い出す。

アンリの説明、セシリアの補足、ルインの図、クラウスの理論、ノアの表現。

そして、カインの整理された解説。

(……大丈夫)

ゆっくりとペンを動かす。

「第三次属性均衡改革の背景を述べよ」

(これは……)

アンリの声が頭に浮かぶ。

“各属性の魔術師の権力争いが背景で――”

書ける、思い出せる。

(勉強会の成果ですわ……!)


◆


次は術式理論。ミレイユは問題を読む。

「魔力循環構造を説明せよ」

(来ましたわね)

例のやつだ。魔力がぐるぐるするやつ。

(……いや、違いますわ)

クラウスの声が脳内で響く。

“圧縮、循環、放出”

ノアの声も重なる。

“流れで考えた方がいいね”

そして自分が例えたものを思い出す。

“魔力は血液に近い”

ミレイユはペンを走らせる。

(これも……書けますわ……!)


◆


筆記試験が終了し、教室に束の間の安堵が広がる。

アンリが振り向いた。

「ミレイユ様!」

「……終わりましたわ」

セシリアも微笑む。

「手応えはいかがです?」

ミレイユは考え、そして正直に答えた。

「赤点は回避できたと思います!」

アンリがぱっと笑顔になる。

「すごいです!」

(笑顔が眩しい....目標が低いと思わないでくださいまし……)

波乱の筆記テストだったが、ミレイユにとっては大勝利だった。


◆


しかし、試験はまだ終わらない。次は魔法実技試験だ。

広い演習場に学生たちが集まっている。

教師が言った。

「順番に術式を展開してください」

やることは単純だが、簡単な試験ではない。

魔力の制御、威力、精度。これらを上手く調節し、総合的に判定される。

ミレイユは前に出る。


◆


(……筆記は疲れましたわ)

精神的に消耗し頭を使いすぎた。

(だからこそ)

ミレイユは微笑む。

(こちらは得意分野ですもの)

魔力を練り、流れを作る。体に馴染んだ感覚。

「炎属性基礎術式」

魔力が走り炎が生まれ、完璧な制御。

炎は大きすぎず、小さすぎず、揺らぎもない。

美しい火に教師が頷く。

遠くで見ていたクラウスも頷いたように見えた。


◆


続けて応用術式。

ミレイユは息を整える。

(筆記の鬱憤……ここで晴らしますわ)

炎を操り、そこに風を混ぜる。

炎が揺れる。踊るように。

不安定に見えるが、規則的に揺らいでおり、制御された魔力。

まるで料理の火加減のように絶妙な調整だ。周囲から小さなどよめきが起きた。

アンリとセシリアは目を輝かせ、ルインも拍手していた。

教師が言う。

「良い制御だ」

ミレイユは軽く一礼する。

(やはり魔法の方が気楽ですわね……)

頭で考えるより感覚で動く方がずっと楽だった。


◆


全試験終了。学生たちの顔は疲れ切っていた。

アンリが大きく伸びをする。

「終わりました……!」

セシリアも息を吐く。

「長い戦いでしたわ」

ルインは笑う。

「これで夏休みですね!」

その言葉に教室の空気が一気に変わる。

そう、夏休みが始まるのだ。


◆


夏休み。学生たちの顔が一斉に明るくなる。

旅行、帰省、研究、自由な時間。

アンリが嬉しそうに言う。

「皆さん、夏休みはどうされますか?」

セシリアは考える。

「私は避暑地に行く予定です」

ルインも頷く。

「私は実家ですね」

視線がミレイユに集まる。

「ミレイユ様は?」

ミレイユは少し考えた。

「そうですわね.....」

(たしか原作では……夏休みに大きなイベントがあったはず)

湖、合宿、魔物騒動、ダンジョン攻略イベント。

(フラグの宝庫ですわね……)

ミレイユは静かに天を仰ぐ。

イレギュラーはあれど、せっかく平和な日々が続いていたのに。

どうやら、まだ波乱は終わらないらしい。

(まあ....とりあえずは....)

小さく笑う。

「皆さん、試験お疲れ様でした」

夏の風が吹く王立魔法学園。

前期は終わり、物語は次の季節へ進もうとしていた。



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