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悪役令嬢転生物語  作者: だいふく


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20/25

19話 試験対策を始める

女子会から数日後。

教室の前で教師が淡々と言った。

「来月、夏季休暇前試験を行う」

ざわめきが広がる。

(来ましたわね……)

ミレイユの脳内で警鐘が鳴る。

原作イベント。

だが――

(問題はそこではありません)

寮の自室に戻るなり、ミレイユは机に突っ伏した。

「……終わりましたわ」

隣のリヴィアが静かに言う。

「まだ始まってもいません」

「リヴィアも薄々気づいているでしょう.....私の学力は.....終わっているのです」

悲しい事実だった。

原作のミレイユ・アルノー。

成績は普通で家柄以外は至って平凡。

魔法も座学も中途半端。だからこそヒロインとの差が際立つ。

そして現在のミレイユ。

(魔法実技は……まあ、なんとか)

転生してから努力した。

日用魔法研究。魔力制御訓練。料理実験。

実技はある程度の成績を残せる自信はある。

ただ、当然ながらテストは実技だけではない。

「……魔法史」

「……術式理論」

「……魔力循環構造」

教科書を見た瞬間、頭が拒否した。

(これ....文字が多すぎますわ……あら...睡魔が.....)

「ミレイユ様、まだ勉強を始めてから10分も経っていません。寝ないでください」

言うまでもなく、前世でも勉強は苦手だった。



昼休み、ミレイユは机に突っ伏していた。

アンリが心配そうに声をかける。

「ミレイユ様、大丈夫ですか?」

「……座学が」

「え?」

「壊滅的です」

アンリが目を丸くする。

「ミレイユ様が!?」

「....ええ」

ミレイユは真顔で言った。

「魔法史が読めません」

「読めない!?」

「眠くなります」

「それは皆そうです!」

アンリは慌てて言う。

「よ、よければ一緒に勉強しませんか?」

ミレイユは顔を上げた。

「……勉強会」

流石はメインヒロイン、希望の光を私にもたらしてくれる。

私は心の底からそう思っていた。



放課後の図書室。

「というわけで」

机を囲んでいたのは。

ミレイユ、アンリ、ノア、クラウス。

勉強会のはずが、豪華すぎるメンバーになっていた。

(……増えてますわ....それにノアとクラウスまで....攻略対象とヒロインがいる空間はフラグが立ちそうなので、是非遠慮したいんですが.....)

アンリが恐縮している。

「す、すみません……私が声をかけたら……」

クラウスが淡々と言う。

「試験対策は合理的だ」

ノアは微笑む。

「婚約者の成績が心配でね」

(その笑みはどんな意味を含んでいますの.....まさか!?)

成績が低い→婚約者として不釣り合い→優秀なアンリに惹かれ始める→私邪魔→追放

(いや....しかし、ノアには恋路を邪魔しないと宣言しているのですから、成績が少し悪いくらいで追放にはならないと思うのだけど....)

「ミレイユ様?皆さん揃いましたし、そろそろ始めましょうか!」

アンリの一言で現実に呼び戻され、勉強会が始まった。



クラウスが教科書を開く。

「まず基本からだ」

「お願いします」

「魔力循環理論を説明しろ」

ミレイユは真剣に考える。

「……魔力がぐるぐるする....こと...?」

アンリが吹きそうになり、ノアは堪えることなく笑いだす。

クラウスはこめかみを押さえた。

「お前は.....魔法の実技に関しては特にいうことはない。なのに、なぜ座学ではこうなんだ.....普段どうやって魔法を使っている...」

「どうと言われても....感覚的なものなので.......今のは少し強かったから弱火にしないとみたいな...料理の火加減みたいな感じで調整してやってますわね」

この発言を聞き、怪しい笑みを浮かべるクラウス。

「......お前には.....魔法の基礎の基礎から叩き込む必要があるようだ」

今まで見せたことのないクラウスの表情にミレイユは戦々恐々としていた。



アンリがノートを差し出す。

「魔力は体内を循環して――」

アンリが丁寧に説明する。ミレイユは感動した。

(アンリ……説明が上手ですわ……)

そして、クラウスが補足。

「重要なのは流れだ」

ノアが付け加える。

「イメージで覚えるといいよ。君は頭で理解するよりもそっちの方が合ってると思うから」

三方向から解説。

(なんて贅沢な授業……)



しばらくして、ミレイユが言った。

「分かりましたわ」

三人が注目し、真剣な顔で答える。

「つまり魔力は、血液みたいなものですのね」

クラウスが頷く。

「その理解でいい」

アンリが感動する。

「ミレイユ様、すごいです!」

ノアは感心する。

「普段から魔法を使ってるだけあって、飲み込みは早いね」

ミレイユは胸を張った。

「ええ、なんとなくの理解はできました」

(...まあ.....理解するのと覚えるのはまた違うんですけどね.....)



「第三次属性均衡改革の背景。ここは、今回のメインの範囲と言っても過言ではない」

ミレイユは教科書を広げ黙読する。

「……」

「……」

「……」

そして勢いよく本を閉じた。

顎に手をあて考える。そして一つの結論に至った。

「これは....覚えるしかないやつですわ」

ノアが吹き出す。

クラウスが深いため息をつく。

アンリは笑っていた。



寮の門限の時間となり勉強会は終わった。

「ミレイユ様、またやりましょう!」

「次は記述対策だ」

「ぜひお願いします」

「君が赤点を取ると困るからね」

ノアの真意が分からず、思わず聞き返してしまう。

「……ノア様の体面がですか?」

「それもある」

けど――

「それだけじゃない」

意味深な言葉を述べ、いつも通りの笑みを浮かべる。

(....怖いですわ.......)



寮の机に向かうミレイユ。

意識を失わないよう(寝ないよう)リヴィアの監視のもとノートを見ながら呟く。

「……覚える量が多すぎますわ」

前世でも、勉強会というのはやったことがなかった。赤点さえ回避すれば何とでもなると思い、いつもギリギリを狙う。結果、何教科は赤点を取ってしまう。

(でも、いつもよりはまだ理解が追い付てる気がします...勉強って……教えてもらうと違いますのね)

小さく微笑み、ペンを握る。

「……次の勉強会までには、もう少し覚えておきましょう」

視界の端に映るリヴィアが小さく頷くのが分かった。


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