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悪役令嬢転生物語  作者: だいふく


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16/25

15話 学園入学と邂逅

王都の北端——

白亜の塔が幾重にも連なる、王国最高峰の教育機関。

王立魔法学園。

その正門の前に、ミレイユは立っていた。

ミレイユ・アルノー。15歳。

そして――

(とうとう、ここからゲーム本編が始まるのね.....)

胸の奥で、かつて知っていた“物語”がざわめく。

この学園を舞台に、ヒロインが愛され、成長し、攻略対象たちと絆を結ぶ。

本来なら、自分はその障害であり、悪役であり、断罪される存在だった。

けれど―—

「断罪される気はないわ」

小さく呟く。

(やれることは全てやったはず.....攻略対象との関係は悪くない。魔法も一人暮らしで困らないくらいの知識と技量は身に付けられたはず......後はヒロイン登場でどうなるかだけど....それは考えても仕方のないことですね)

私は、私の選択で生きる。誰かを踏みにじるためでも、奪うためでもない。

研究も、魔法も、人との縁も全部、自分の意思で掴む。

「ミレイユ様」

隣に立つのはリヴィア。今日から寮生活を共にする、ただ一人の従者。

「緊張されていますか?」

「いいえ……楽しみよ」

それは本心だった。運命と正面から向き合えることが。



入学式大講堂

円形の大講堂には、新入生と上級生、教員、王族関係者が集っている。

ざわめきの中心にいるのは当然――

「第二王子ノア殿下だ」

「第三王子レオニード殿下も……!」

ノアは穏やかな笑みを浮かべながら、自然とミレイユの近くに立つ。

「同じ学園生だね、ミレイユ」

「ええ、殿下」

「”殿下”だなんてつれないな。今まで通りノアと呼んでくれよ」

呼ばれ方が気になったのか、いじけたような顔を向けてくる。

「いえ、そういう訳には....他の人の目もありますし」

(あまり親しくしすぎて、恨みを買われるのも怖いんですのよ.....)

「君は”僕の”婚約者なんだ。そんなこと気にすることはないさ」

遠回しに断っているつもりだが、ノアは引く気がないようだ。

「分かりましたわ.....学園でもよろしくお願いします、ノア様」

「うん、よろしくね」

柔らかい笑みを浮かべるもその視線は鋭い。

周囲の反応を、彼は見ている。

レオニードは腕を組み、苦笑する。

「面倒な視線だね。君たち、目立ちすぎだよ」

「君たち?どう考えても、お二人のせいだと思いますが....」

「冗談よしてよ。ミレイユも自分に対する視線に気づいてるでしょ?」

(え?全く分からなかったんですが....そんなに見られていたんですか私...)

そこへ――

「ミレイユ様!」

セシリアが駆け寄り、堂々と腕を絡める。

「私、ミレイユ様と同じ学園で学べることが光栄でなりませんわ!」

周囲の令嬢たちの視線がつき刺さる。

関係者席にいるリヴィアは内心でため息をつく。

(セシリア様......牽制が始まっています……)

ミレイユの後方には無言で立つクラウス。その隣で、やや緊張気味のルイン。

「……とうとう始まるのですね、学園生活が...」

ルインの瞳は期待と不安で揺れている。

ミレイユは振り向き、自然に言う。

「あなたの魔法が伸びる場所よ、ルイン」

その一言で、彼の背筋が伸びる。

クラウスはわずかに目を細めた。

(相変わらず無自覚なことだ)

彼女が人を変えていることに。



入学式は予定通り始まった。

「本日より諸君は王立魔法学園の生徒である。身分ではなく、実力で評価する」

講堂に緊張が走る。身分が絶対ではない場所。それは、物語の舞台として理にかなっている。

(彼女...そうこのゲームのメインヒロインが輝く土壌)

ミレイユはまぶたを伏せる。

ならば、自分も実力で立つだけ。逃げる理由はどこにもない。



式後は簡単なオリエンテーションが行われ、明日の授業に備えるための自由時間となった。

この時間を利用し、ミレイユは人波から離れ、校舎裏の回廊へ向かう。

(一度ここでゲームと学園の相違点を確かめておかないと.....ゲームの記憶も大分曖昧になってきてますが、転生した時にストーリを書き留めたのは我ながらファインプレーですわ。まずは....)

まずは学園の立地に変化がないか、構内図の確認に講堂へ向かおうとした、

その時—

角を曲がった瞬間、誰かとぶつかりかける。

小さな悲鳴、書類が宙に舞う。

反射的に魔法を展開する。

柔らかな風が紙束を包み、少女の腕の中へと戻した。

「……大丈夫ですか?」

顔を上げた少女。透き通る蒼い瞳。見覚えのある顔。

(――間違いない...ゲーム本編のメインヒロイン――アンリだ。アンリ・フォルト)

平民にしながら桁違いの魔力、制御技術を持つ、生まれながらの天才。

おとなしい性格であるが、自分をしっかりと持っている。初めのうちは貴族社会であるこの学園に馴染めず、虐められる対象となる。

しかし、彼女もまた攻略対象と出会い、成長し物怖じしない豪胆な精神の持ち主となっていく。

(いやぁ.....魔法を叩きつけて嫌がらせをしてくる令嬢をふっとばしたのは爽快だったな....まあ、吹き飛ばされた令嬢が言うのも変な話ですけど.....今はまだ吹き飛ばされませんわよね.....?)

まさか、入学初日に出会うことになるとは。

そして、今ここにはノア、レオニード、クラウスといった攻略対象は誰もいない。

少女は驚いたように瞬きをする。

「ありがとうございます……」

控えめだが、芯のある声。

その内側に秘められた膨大な魔力を、ミレイユは感じ取る。

(やはり、彼女は特別ね。平凡な私とは大違いだわ)

「同じ新入生よね。迷ったの?」

「はい……少し」

「そう、私もなの。よければ一緒に行きましょう」

それは打算ではく、自然に伸びた手。少女は少し戸惑いながらも、その手を取る。

その瞬間、未来がわずかに揺らぐ感覚がした。

本来ならば、攻略対象たちと順に出会い、好感度を積み重ねていくはずの彼女。

だが最初に手を取ったのは、誰でもない。

悪役令嬢——ミレイユ・アルノーだった。



石造りの個室。窓の外に見える学園の塔。

荷を整えながら、リヴィアが微笑む。

「新しい生活ですね、ミレイユ様」

「ええ」

机に手を置き、静かに息を吐く。

ここが舞台。

愛も、陰謀も、成長も、すべてが交差する場所。

だが――私は悪役ではない。誰かの踏み台にもならない。

研究者として、魔法使う者として。

そして、自分の追放されない人生を送るため!

「忙しくなりそうね」

小さく笑と夜風がカーテンを揺らした。


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