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悪役令嬢転生物語  作者: だいふく


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15/25

閑話 リヴィアの見る景色


庭園の灯りが少しずつ落とされていく。

笑い声が遠ざかり、夜風が静かに花を揺らしていた。

リヴィアは少し離れた場所から、その光景を見ていた。

ミレイユ様の誕生日。

「身内だけ」と言っていたはずなのに、あれだけの賑わいだった。

けれどそれは、決して虚飾ではない。

心から祝う者たちだけが集まった、温かな輪だった。


セシリア様

第三王子であるレオニード様の婚約者。

しかし、あの方は隠す気がない。

“わたくしのミレイユ様”と堂々と言い切るあの姿勢。

独占欲のようでいて、実際は信頼と尊敬の塊だ。

ミレイユ様が褒めれば、誰よりも嬉しそうに笑う。

側に立つことを誇りにしている。

(レオニード様が少し気の毒ではあるけど)


レオニード様

第三王子、剣技の天才として威厳を纏っているが、どこか飄々としている。

しかし、誘拐事件以降、視線はいつもミレイユ様を追っている。

怪我の痕を気にしていたのも知っている。ただ、あれは責任でも義務でもない。

守るべきものを守れなかった。あまつさえ、自分が守られてしまったという悔しさと尊敬。

本物の強さ、守りたいものがある者は皆そういう顔をする。


クラウス様

表情は変わらない。

けれど、今日だけで何度ミレイユ様を見ていただろう。

普段の訓練と異なるミレイユ様に心を奪われているようにも見える。

彼女が笑うたび、無表情の顔の中に色が付く。

自覚はまだ浅い。だが確実に何かが芽生えている。


ルイン様

憧れの眼差し。救われた者の目だ。

初めて自分の魔法を肯定された日のことを、きっと忘れないだろう。

ミレイユ様の言葉は、誰かの世界を静かに変える。

本人は気づいていないけれど。


ノア様

ミレイユ様の婚約者であり第二王子。

柔らかい笑みの奥。あれほど真剣な視線は珍しい。

初めのうちはミレイユ様を鬱陶しがっていた。穏やかな笑みをしていたが、心から笑った姿を見たことがない。しかし、あの日を境にノア様の日常も大きく変わることになる。

今は誰よりもミレイユ様を観察し、好いているのではないだろうか。

そして、誰よりも早く気づいているかもしれない。

ミレイユ様という存在の重さに。


(みんな、慕っている)

リヴィアは静かに思う。

中心にいる本人だけが、少しだけ鈍い。

研究のこと、魔法の制御、将来への備え、そればかりを考えている。

けれど――だからこそ、人は惹かれるのだろう。

リヴィアは昔を思い出す。まだミレイユ様が我儘だった頃。

周囲に自信の権力を振りかざし、荒れ狂う嵐のような存在のようだった。

けれど今は違う。

怪我をしても前を向き、誰かの魔法を当たり前のように肯定し、失敗しても静かに立ち上がる。

そして、自分にも優しく手を差し伸べてくれた。

“リヴィアはどうしたいの?”

あの日の問いは、今も胸に残っている。

命令でも義務でもない。ただ、私の意思を尊重してくれた。

あの時から、私はこの人の側にいたいと思った。


◆◆◆


庭園の片隅。

ミレイユ様が一人、星を見上げている。

穏やかな横顔。少しだけ大人びた表情。

(来年で十五歳……)

15歳という年齢は物事が大きく動き出す。社交界への本格的な登場、魔法学園への入学。

立場、責任も、きっと今より重くなり、周囲の視線も変わるだろう。

けれど、きっと変わらないものもある。

彼女は誰かに寄りかかることなく自分の足で立ち、そして誰かの手を自然と支えてしまうだろう。

だから――私はその隣に立ちたい。

守られるだけではなく、共に歩く者として。

夜空に一つ流れ星が走り、声が重なる。

「リヴィア!星がとっても綺麗よ!こっちに来て一緒に見ましょう!」

リヴィアはそっと目を閉じ、静かに頷き願いを込める。

(どうか来年も、あの方が笑っていますように)



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