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悪役令嬢転生物語  作者: だいふく


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14/25

14話 悪役令嬢の誕生日は静かに終わらない

ミレイユ・アルノーの誕生日当日。

本来ならば格式ある晩餐会になるはずだった。

しかし今年は――

「身内だけで、ささやかに」

と言ったはずなのに...なぜか、なぜなのか。

庭園は装飾に彩られいつも以上に煌びやかだった。

「ささやかとは」

ミレイユは遠い目をする。


◆セシリア


「本日はお誕生日おめでとうございます、ミレイユ様!」

庭園に響くセシリアの声。

今日は完全に彼女が仕切っている。

「……随分と準備が整っておりますわね」

「当然です」

何と真剣な表情なのだろう。

「”わたくしの”ミレイユ様の誕生日ですもの!」

(セシリアったら、本当に張り切って...まあ悪い気はしませんが.....ん?わたくしの?)

「ミレイユ様!こちらお誕生日プレゼントですわ!」

先程の発言に引っ掛かりを覚えたが、プレゼントを渡され思考が中断する。

「あ、ありがとう、セシリア。これは....髪留めかしら?」

「はい!ミレイユ様といったら炎!その炎の色に一番近い色の髪留めを選ばせていただきました」

紅く光る髪留めは私の魔法の色と良く似ていてた。

「ありがとう、セシリア」

そういって、貰った髪留めをさっそくつけてみる。

「どう、似合っているかしら?」

「とってもお似合いです!!」

セシリアは目を輝かせ、そう答えた。


◆ レオニード


「誕生日おめでとう、ミレイユ」

レオニードにしては少し角ばった声だった。

「ありがとうございます、レオニード様」

「怪我の具合はどう......?」

ミレイユは苦笑しながら、

「レオニード様は合う度に怪我の心配ですね。ほら、この通り元気いっぱいです」

その場でふわりと回って見せる。

「そっか.....それなら良かった」

(いつも通りになるのはもう少しかかりそうですわね。まあ確かに火傷に関しては少し痕が残ってしまいましたし。まあ、ルインの色彩魔法のおかげであまり目立たないので、私自身は何も気にしておりませんが...こればかりは時間の問題ですわね)

「ミレイユ、これを」

レオニードは執事に持たせていた箱を差し出す。

「ありがとうございます、レオニード様。中を開けても?」

「ああ...気に入るかは分からないけど」

ぶっきらぼうに言い放つ姿が新鮮だった。

さっそく中を開けてみる。箱の中には、装飾されたアームカバーが入っていた。

「耐熱性のアームカバー。これで魔法を使用しても君を守ってくれる」

「……まあ」

素直に驚く。

「レオニード様、お心遣い感謝いたします。とても嬉しいですわ。さっそく明日からの訓練に使わせていただきます!」

レオニードは苦笑する。

「誕生日の翌日にもう訓練を始めるの?」

当たり前だと言わんばかり腰に手をあてる。

「ええ、2日もサボったら訛ってしまいますから!」


◆ クラウス


「誕生日おめでとう」

いつも通りの淡白な声で祝われる。

「ありがとうございます、クラウス様」

「これを」

手渡されたのは魔力安定用のブレスレットだった。実用一点張り。しかし、ミレイユの目が輝く。

「流れを分散させる術式ですわね?」

「流石だな、分かるのか」

「当然です、誰に魔法を教わっていると思ってるんですか?」

見たからには試さずにはいられない。装着して試してみるといつも以上に安定感が増す。

「素晴らしいですわ!」

その笑顔を見て、クラウスの胸がわずかに締まる。

(……こんなに嬉しそうに)

意識してしまう自分に、少し戸惑う。


◆ ルイン


おずおずと前に出たのはルイン。

小さな包みを両手で抱えている。

「ミレイユ様、お誕生日、おめでとうございます……」

中身は――色彩魔法で染めたハンカチ。

淡い青から紫へとゆるやかに移ろう布。

「時間が経つと、少しずつ色が変わります……」

ミレイユは目を見開く。

「まあ……綺麗」

純粋な感嘆。

「素敵ですわ、ルイン」

即座に受け取り、大事そうに触れる。ルインの顔がぱっと明るくなる。

セシリアはその様子を見て、満足げに頷く。

(ミレイユ様の隣は、価値を認められる者だけですわ)


◆ ノア


最後はノアだった。

にこにことした顔で、細長い箱を差し出す。

「誕生日おめでとう、ミレイユ。これ、僕なりに考えたプレゼント。受け取ってくれると嬉しいな」

最近のノアとも砕けた会話ができるようになってきた。向こうもそれを感じ取ったのだろう。言葉遣いが柔らかくなっている。

中身は精巧な魔力計測用のペン型器具だった。

「まあ!」

ミレイユは満面の笑みを浮かべる。

「これ、微細な流れも測れますのよね!?」

「もちろんです。ただ、精密なものですから、魔力の注ぎすぎには注意してください」

「うっ.....も、もちろんです!ノア様から頂いたもの。丁重に扱わせていただきますわ」

ノアが柔らかな笑みを浮かべる。

「君の笑顔が見れてよかったよ、真剣に選んだかいがあったなかな」

「ええ、とっても嬉しいですわ!これで明日からの魔法訓練がより捗ります!」

喜んでいるミレイユをノアはじっと見つめている。

普段のノアでは見ることのできない優しい眼差しに、従者たちは驚きを隠せなかった。


◆ 祝宴

五人でテーブルを囲む。

「ミレイユ、次の誕生日までに何か目標は何かあるのかい?」

「魔法制御を安定させることですわね」

クラウスが静かに言う。

「急ぎすぎるな。時間はあるだろう」

「急いでなどおりません。備えあれば憂いなしですから!」

(いつ追放されるか分かりませんし....)

レオニードは目を細める。

「ミレイユ....やっぱり強いね」

ミレイユは首を傾げつつ、

「強い...?何を言ってるんですか。レオニード様の方がお強いですよ。拝見させていただいたあの剣技。大人ですら太刀打ち出来ておりませんでしたわ」

「いや、そういう意味では.....いや、分からないならそれでいいや。君はそういう奴だ」

頭に?マークを並べているミレイユを見て、ルインは小さく笑う。

そしてセシリアが誇らしげに言う。

「流石です、”私の”ミレイユ様!その向上心私も見習わなくては!」

「ええ、セシリアも頑張りましょうね」

(セシリアの発言の後、一瞬寒気が....気のせいかしら.....)


◆


談笑の中、クラウスの視線が自然とミレイユに向く。

レオニードも穏やかに観察し、ノアは楽しそうに茶化す。

ルインは尊敬の眼差し、セシリアは常に隣をキープ。

その中心で、ミレイユは本当に楽しそうに笑っている。

「皆さま、本当にありがとうございます」

真っ直ぐな言葉に全員が思う。――この笑顔を、守りたいと。

ただ一人、ミレイユを除いて。

(今年も平和に一歩前進です。後6年...出来ることは全てやってやりますわ!!)




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