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Review.8:暗雲。

鐘楼に、足を踏み入れる。


目に見えて中の空気が変わった。


シン、と空気が軋み震える。

静かだった湖面に一石が投じられたかのようだ。

この場合、その石とは間違いなくオレの事だろう。

もし、此処に潜んでいるのが自縛霊の類であれば、昼の事も今もやつの領地を侵すというとてつもなくヤバい事をしでかしている…はずなんだが。

そう言えば、奴は近頃になって此処に現れ始めた。

なら、浮遊霊の類でここまで流れて来たのだろうか?

そんな事を考えていた時だった、


何者かに肩を掴まれたのは。


「っ!?」


急いで振り払う。

だがその掴まれた感触は、消えてはくれなかった。


――冷たい。


何と言う冷たさだろうか。

凍てつきそうな程のその温度は、明らかに人のソレでは無い。

前方に飛び退りながら、後方を顧みる。


いた。


まるで、化け物だ。

もとは人間であったとは信じられない。


身長は、ゆうに三メートルを越しているだろうか。

狭い鐘楼で息苦しそうに屈めているその身は、骨と筋ばかりに痩せこけて腐食したように茶にくすんでいる。

本来二本であるはずの腕は――八本もある。

白く混濁した瞳を見れば、完全に理性は欠落していると見て取れる。

出来れば説得または交渉の下で昇天をさせてやりたかったのだが。

――どうやら、そんな悠長な事も言っていられないらしい。

奴からは、激しく黒い怒りが濃密な殺気と共に溢れている。


「オレは……高校ぐらい行きてぇよ」


死を前につぶやく。

そうだ、こんな所で死にたくなんか無い。

まして中三で死ぬなど、真っ平ゴメンだ。

鞘から荒々しく刀を抜き放つ。

磨き上げられた刀身が、暗い室内でも鋭く光り輝いた。


こいつで、やれるのか。


で、当の奴はと言うとだ。

刃向かってくる獲物を知らなかったのか、まるで慄いている様にその歪で醜悪な霊体を震わしている。


今が、チャンス。


「はぁあぁぁっ!」

恐怖をかなぐり捨て、無我夢中で奴に――斬り込んだ。


ズ、グ。


食い込んだ。

生々しい音を立てて、刀身が本当に奴に食い込んだ。

そのまま、肩から袈裟に斬り降ろす。


ギィ、ギギ、ィアァァァアアァァアァ


ポッカリと開いた奴の口腔から、おぞましい金切り声が迸る。

背筋に悪寒が走る。

心臓の鼓動数がどんどん上がっていくのを感じる。

くっ、この脈拍の上昇は、恐怖のせいか、それとも興奮のせいだろうか。

だからか。

そんな不謹慎な事を考えていたからだろうか。

オレは奴の、怒りに任せた一撃を避ける事が出来なかった。

しなり迫る腕。

咄嗟に刀で受身を試みる。


ガギィ…!


っ、中々重い一撃だ。

だが、忘れてはならない。

奴の腕は一本だけではないのだ。

八本もある。

得物を易々ともぎ取られ、残った腕で叩きのめされる。

「ぐぅ…っ!」

吹っ飛ばされて、鐘楼の壁に叩きつけられた。

「ってぇなくそ………なっ!?」

嘘だろ、オイ!マジかよ!?

オレの目に飛び込んできたのは。

蜘蛛みたいな奴の手の中でブスブスと煙を上げ酸化している、悲惨な刀の姿だった。


「や、やめろ…!」


そんな、やめてくれ。


オレの、お前の、希望を壊さないでくれ――


対峙。

欲望に身をやつしたもとは人である化け物。

人間の内面をあらわしているようです。

黙雷は、ソレに勝つことは出来るのでしょうか?

次回にこうご期待!

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