Review.2:発端。
「お前を呼んだのは言うまでも無い。アレの類だからだ」
空調の効いている庫裏の居間で、親父は溜息を吐きながら言った。
「本来ならば説法の一つでもかましてやりたいのだが……今回ばかりはよしておくとしよう。何せ、下の者たちがお前に聞いてくれ祓ってもらってくれと五月蝿いものでな」
奴等には呆れ果てた、とその顔が物語っている。
「……で、何が起きたんだ?」
氷が入った麦茶をガブ飲みしながら問う。
……いや、だって暑かったんだよ。
仕方ねぇじゃんか。
「うむ……今、僧たちの間で噂になっている事があってな」
親父は何処から話せば良いやら、と言った表情で煎茶を一口啜った。
もどかしい。
オレはそれを解きほぐそうと声を掛ける。
「上手くまとめようとか思わなくていいから。とにかく話してくれ」
オレの親父に対する口の聞き方はスルーしてくれ。
これがデフォルトなんだ。
「あぁ。奴等が言うには、昼夜関係なく寺のあちこちに同じ霊が出没するらしいのだ。ソイツは鐘楼―鐘撞き塔で多く目撃されているらしい…私は未だ見た事は無いがな。はぁ、まったく困った奴等だ。今では誰も鐘撞きをやりたがらん」
ふーん、潜り霊…か?
その地に何かしらの因縁を残しこの世を去った霊魂が、現世のしがらみに
束縛され、その地から抜けきれず徘徊する。
それが、この寺に?
そんな噂、オレが生まれて一度も聞いたことは無いが。
……あぁもう、ホントに俗世に犯された野郎ばっかだなこの寺は。
だがまぁ、此処まで来たんだし、確認だけはしておいた方が良いだろう。
無駄足はごめんだ。
何かをしないと気が済まない。
「じゃ、行ってみるか」
麦茶を飲み干して、立ち上がる。
カラン、とグラスの中の氷が澄んだ音を立てる。
「見てくれるか」
「当たり前だ。此処まで来てはいそうですかバイバイキンって帰れるかよ。だけど今日は仲ジィと将棋指す予定があるんだ。なるべく急ぐぜ」
オレは涼しい部屋から再び、地獄のような暑さの中に身を投じた―――。
「新説」と比べたら一話の量が少ないですね(^_^;)
こ、これでも改稿しながらしてるんですけど。
今回は、挿入話と考えていただけたら幸いです。
次回作までのインターバルってことで(笑)
しばしお付き合いください。




