二十八話 あの場所に行けるかな
レイヤからのメールが気がかりだった誠。実はメールにはまだ続きがあったようだ。四人はメールの最後の行に書かれている通り相談し合うことにした。
そして番組の収録が始まった。内容は以前陽昇の言った通り座りながら受け答えするトークバラエティ。度々レイヤを中心にcafé au laitの四人はいじられることが多かった。新人への手荒い歓迎と言ったところだろうか。皆、番組収録に集中している様子だったが誠はやはりメールの内容が気がかりだったようだ。それでもなんとか長い収録を乗り切り撮り終わった。
「お疲れ様ー!」レイヤが四人の頭をわしゃわしゃと触る。
「俺は次は今日番宣したドラマの収録だから急がなくちゃ!それじゃーね!」と手を振り背を向けようとした時、レイヤは何かを思い出したのかもう一度振り返り誠にこっそり耳打ちした。
「...メール、最後の文まで読むんだよ」と言った。誠はぽかんとしつつはい、と返事をした。
また車に乗り込み帰路についていた。誠はすぐにメールを確認する。
「ここまでは読んだよね...あっ、まだ終わってない」確認するとまだ読んでいない箇所があったようだ。スクロールする。何行も何行も改行してあって手こずりながらも最後までスクロールし終わった。
「...ん?」読んでみると、「皆で相談するように」と書いてあった。やはり皆で読め、ということなのだろうか。
事務所に到着した時、誠は真っ先に三人に声をかけた。
「三人とも、あとで時間ちょうだい、話したいことがあるから」三人はうんと頷いた。
「それで、話ってなんだ」四人はレストランで昼食をとりつつ話すことにした。
「実は躑躅森さんからメールもらってて。この間話そびれた織さん、久瀬さん、蔦屋さんからの僕たち宛のメッセージがあるんだ」
「ちょっと!なんで早く教えてくれなかったの!!」千尋は身を乗り出す。
「見せて見せて!」誠から携帯を奪い取り千尋が真っ先に見る。
「へー、アドバイスとかも結構書いてあるね〜雄大くんはべた褒めだけど」自分宛のメッセージを確認する。
「僕にも見せて〜」「僕にも見せろ、貸せ」三人は携帯を奪い合いながら自分宛のメッセージを見た。
「それで、重要なのは一番最後の行、皆で相談するようにって言われたんだけど...」誠が声をかけると三人は最後の行までスクロールした。
「相談?アドバイスし合うってことかな?」「そうだろうな。自分だけで考えるとどうしてもプラスの意味で捉えてしまう。客観的視点で厳しく見ることも必要だろう」陽昇は真っ先に理解する。
「じゃあ例えば〜、誠くん宛のこれ、夢半ばで折れないようにってどういう意味で捉えてる?」
そう言われて誠は考えた。一度マイナスイメージで捉えようとしたが、どうしても自分の頭の中ではプラスになってしまった。正直に言った。
「僕のこと、応援してくれてるんだと思った。お前はこれくらいで折れない人間だって言ってくれてるんじゃないかって」
「ふーん、僕は嫌味にしか聞こえなかったなぁ。とにかくDreaming Makerのブランドを汚されたくないのも見え見えだし」やはり客観的に捉えてそうなる。と誠は心から理解した。
「じゃあ、僕はどうすればいいんだろう。その言葉を受けて」誠は言いながら考えた。
「諦めないで、向こうを振り向かせるほどに完璧に近づくこと、かなぁ」渡が言った。
「お前の欠点は、ここに書いてある通り心から笑顔になれていないことだ。相手を喜ばせるほどの余裕を持てるようになれば、少しでもこの人を振り向かせることができるだろう」陽昇も付け足した。
「...そうだよね、ちょっとだけショック受けちゃったけど、これで折れちゃ蔦屋さんを見返せない。よーし、頑張るぞ!」誠は顔をびたんと叩いて気を入れた。
帰宅後のその晩、誠はまたレイヤにメールを送った。
「メール、最後まで読んで皆にも見せました!客観的視点も必要ですよね、よく分かりました!いつか蔦屋さんたちを見返すつもりなのでご本人たちにも言っておいてください!」と送った。その返信を受けてレイヤはすぐに三人にメールを送った。
「これは期待大だよ。しっかり意図が伝わったみたい。今後とも応援してあげてね」
その時雄大、凰太、永遠はたまたま共演していた。収録が終わり携帯を確認して、レイヤのその返信を見た。
「これは、今後が楽しみだね」凰太が笑みを浮かべながら真っ先に返信した。ゆるキャラの絵文字だ。
「あいつらも、いつか俺たちがたどり着いたあの場所に行けるかな」「...俺はそう遠くないと思う。あくまでDreaming Makerの看板を背負っているからメディアがおだててすぐにライブ会場を満員にする」雄大の問いに永遠はそう答えた。
「お前は相変わらず素直じゃないなぁ、俺はあいつらの実力だけでライブ会場を満員にできると期待しているぞ」
「さ、帰ろうか。永遠は高校生だしこれ以上遅くまでいられないから、また送ってあげるよ」
「いいって...」三人は駄弁って笑いながら帰路に着いた。




