二十話 負け犬から再出発しよう!
初のTVで大失敗を犯した優月。反省会も開かれますます凹む。反省会も終わり事務所の屋上で黄昏ていると世奈が現れ、二人で話し込む。
番組の収録が終わり、メンバーは事務所に戻った。
「さて、反省会しましょうか!」世奈がはっきり言い切ると陽昇を除くメンバーが苦虫を噛み潰したような顔をした。
「そんな顔したって反省会は反省会です。さぁ、誰か意見はありますか?」そう言うと優月が顔を伏せたまま手を挙げた。
「全部全部全部、僕のせいだから反省会は僕一人でいいです」泣き出しそうな情けない声で言った。
「いいえ、ダメです。連帯責任、運命共同体。あなたたちはあくまでチームですから、一人のミスも全員でリカバリーしていくようじゃないといけません」またもやはっきり言い切る。すると陽昇も手を挙げた。
「僕は反省会とやらから抜けていいか。悪いのは他七人だ」その言葉に秀が立ち上がる。
「んだと!?俺たちは全力で乗り切っただけだぞ!お前のように本番前にヘラヘラしないで緊張感を持って臨んだ結果がこれだっただけだ!」「お前、学校で芸能のお勉強してる割には何も分かっていないんだな」二人はまた口喧嘩を始めた。
「おい、御影。俺、前々から気になってたんだが、お前は何か分かっているんだろう?俺たちの知らない何かを。なんでそれを俺たちに共有してくれない、なんで俺たちの欠点をそのままにするんだ?」要が問う。
「お前らのことなんて信用していないからだ」陽昇ははっきりと言い切った。
その頃、千鶴は別の番組の収録のためバスで都内から出ている最中だった。今日の出来事をDreaming Makerのメンバーに携帯で伝えた。
「...散々で見ていられなかった」そう打ち込んだ。そしてそのまま次の文章も素早く打ち込む。
「御影の弟は、何であんなに打ち解けない。あいつさえ打ち解ければ少しはユニットも前に進むはずだ」そのメッセージに天が真っ先に返した。
「陽昇には陽昇のペースがある。それを見守ってあげよう」安定の甘やかしっぷりに千鶴はため息をついた。
Dreaming Maker+のメンバーは反省会を終えそれぞれ帰路についていた。反省会の後、他のTVへの出演も決定したことが明らかになったが誰もそれを喜べる状況ではなかった。今日はいつも優月と帰っていた秀も優月のことを考えて先に一人で帰っていった。優月は事務所の屋上で黄昏ていた。スマホをいじりながら。調べていたのは今日のDreaming Maker+のパフォーマンスについて。もちろん散々叩かれていた。初っ端からつまづいている、茶色い子大丈夫?wwなど書かれていて優月はため息をついた。
「僕は茶色じゃなくて蜂蜜色だよぉ...」そう呟いて大きく背伸びした。すると屋上のドアが開いた。そちらを見ると世奈の姿があった。
「あれ?桧山くん?」「あ、マネージャーさん、休憩ですか?」「うん、優月くんは黄昏てたの?」「はい...」二人は同じベンチに座り話を始めた。
「あのね、昔私が初めて担当したアイドルユニットがいたの」「えっ!?マネージャーさんすごく若く見えますけどそんな昔からマネージャーやってるんですか!?...ってことは年齢はサバを読んでも...」「しっ...!」優月の声を遮りまた話を始めた。
「あなたたちくらい、いや、もっとアクの強い子達でプライドもはちゃめちゃに高くて、皆デビューするんだ!って意気込んで毎日必死だったの。そんな彼らもある日ついにTVに出て、そして桧山くんと同じようなミスをした子がいた。その時もネットでは散々叩かれた。だけどその子はその記事を見たときクスッと笑ったの」「え...?笑った?」「こんなに俺たちのこと見てくれて感動した...アンチだろうが何だろうが、気にしないよ。負け犬から再出発しよう!俺たちならできる!って言い切った。その子は普段は大人しくてちょっとシャイな子なんだけどその時はっきり言い切った。メンバーも一緒に頑張ろうって誓って、それからいっぱい経験を積んでもう負け犬なんて呼ばれなくなった。彼は今、お茶の間のムードメーカーアイドルとして活躍してるんだ」
「お茶の間のムードメーカーアイドル...何か聞き覚えのあるような...」「さぁ、誰だろうね、そろそろ帰らない?陽が暮れちゃうよ?」世奈の言う通り陽が傾きかけていた。
「あっ、ほんとだ!じゃあ僕帰りますね!お疲れ様でした!」優月は早々に帰っていった。一人になった世奈は携帯を開く。写真フォルダを覗いた。そこには八人の少年に囲まれた世奈の姿があった。
優月は何だかウキウキしながら帰った。世奈の言葉、昔誰かの言った言葉に心打たれて、すっかり元気になっていた。家に着くと暖かい食事と賑やかなTV。ふとTVに目をやるとバラエティ番組。番組が始まったばかりでキャスト陣が自己紹介をしていた。その中に、元Dreaming Makerのメンバー、雪室充の姿があった。そして彼はこう自己紹介した。
「お茶の間のムードメーカーアイドル、雪室充でーす!いや、今となっては元アイドルのおじさんだけど。26歳、まだまだ元気だよー!」その言葉に優月は先ほどの世奈の言葉を思い出した。
「お茶の間のムードメーカーアイドル...?まさか、雪室さんのこと...?人違い...かな?」そう呟くと家族から何独り言言ってんの、と言われ意識を取り戻した。




