十二話 いただきます
合宿も終わり、いつものレッスン室での久しぶりのレッスン。新しい衣装、そしてCD化が決定。そんな中、渡は特別な思いを抱いているようで...
長い合宿期間も終わり、今日はいつものレッスン室での久しぶりのレッスンとなった。
「それでは、本日もよろしくお願いします!」DreamingMaker+、百花繚乱の合同練習だ。
「合宿期間中に花咲くんから色々教わりましたよね!DreamingMaker+は団結力、チームワークを鍛え、百花繚乱はパフォーマンスをとにかく向上させること。レッスン内容も花咲くんと色々相談して変更点は変更してみたりしたので確認しましょう!」そんな感じでレッスン内容の確認から始めた。
愛央は横目でDreamingMaker+のメンバーを見た。個々のパフォーマンス力はそれぞれある、見習わなければ。と感じた。翔に指摘されたポイントを頭に思い浮かべる。
合宿中のこと。「百花繚乱の皆、指導に来たぞー!」翔がドアを勢いよく開けて入ってきた。
「とりあえず基本パフォーマンスを見せてくれ!」その言葉に、四人は各々パフォーマンスを披露した。
「...以上です」みかんまでパフォーマンスを終え、翔と社長は思案した。
「なるほどねぇ、翔くん、まぁ大体こんな感じで指導を頼むよ」紙切れを渡された翔は四人の前に立ちはだかった。
「それではまず一人一人に指導しよう!まずはリーダーの森山さん!」「はっはい!」名前を呼ばれて愛央は跳ね上がった。
「気持ちは伝わってきます。経験もあると思うので平均値のパフォーマンスはできています。あとはリーダーとして皆のパフォーマンスを引き立てることと、心の奥底の気持ちまで伝えきることが大切です!だそうだ!俺もそう思う!」「はい!気持ちを、伝える...ですか」愛央は考えてみる。
「続いて嶋崎さん!同じく経験がものを語っている!しかし愛央さんもですが全般においてさらに上のパフォーマンスを見せることでファンも増えていきます!共にパフォーマンス向上を目指しましょう!だそうだ!俺もそう思う!」「パフォーマンス向上ですね、分かりました!」了解、と敬礼の仕草をしてみせた。
「次はきぃちゃん!元気があってよろしい!笑顔も素敵です!あとは皆と足並みを揃えることを意識しましょう。一人で突っ走っていくのではなく集団でステージを作るのです!だそうだ!俺もそう思う!」「えっとー皆で仲良くするってこと?分かった!」分かってない返事をした。
「最後、最上さん!子役経験が物語っているファンサービス精神!実に素晴らしい!そしてアイドルですから歌とダンスにもっと注力するべきです!だそうだ!俺もそう思う!」「はい。パフォーマンス向上を目指します」一つ頷いて納得した様子だ。
「そして俺から、一つ大切な言いたいことがある。それはな...お前ら、お互いの顔色伺ってないか?」その言葉に四人はきょとんとする。
「ここはもっとこうした方がいいとか、もっと言い合うべきだ!拍手ばっかりするような大層なパフォーマンスとは正直言えない。改善点の方が多い。仲良くすることも大切だが、パフォーマンス向上にもっと意識を持つこと!プロの名を冠している以上、もっとプライドを持ってごっこ遊びから卒業するんだ!」そう言い切った翔に四人はまだきょとんとしていた。
リーダーだから、もっと皆をまとめることを意識しなければならない、そして指摘もしてあげれないと、と愛央は感じていた。
「三人とも、ちょっといいかな」休憩中、葵、きぃ、みかんを呼び出した。
「ここで、お互いパフォーマンスを指摘しあってみる、ってのはどうかな?」
「翔さんに言われたことね。正直よく分かんなかったけど、反省点を述べて次に活かせばいいんだよね」葵も半分納得した様子だ。
「まずは私について、何か改善点はあるかな?」そんな具合にお互い反省点を述べ合った。
「休憩終わりましたね、次は宣材写真の撮影に入ります!」
「せんざいしゃしん?」裕一、要、きぃが頭にハテナを浮かべる。
「ホームページに乗せる宣伝用の写真のこと、だと思うよ」優月が付け足す。
「そこで今日衣装が届いているので皆さん衣装に着替えて順番に撮っていきます」
「衣装、持ってきました〜!」世奈と大地が大きなダンボールをレッスン室に運び込む。
「これです、これがあなたたちの衣装ですよ!」二人が箱を開けてみせる。
「うわぁ〜!キラキラしてる!すっげぇ!!」裕一は目を輝かせ、自分用の赤い衣装を手に取る。
「可愛い〜!これが私たちの衣装?きゃー!!るみちゃんに自慢しちゃお〜!」きぃもはしゃいだ様子だ。
「とりあえず更衣室で着替えて来てください、順番に呼び出しますので!」その後、一人一人呼び出されて宣材写真を撮影した。
「皆さん、撮影終わりましたね!お疲れ様でした!」着替え終わったメンバーが床に座り込む。
「僕、めっちゃくちゃ時間かかっちゃった...営業スマイルがどうも苦手で...」誠は愚痴を垂らした。
「僕なんて、衣装の採寸間違っててまた新しい衣装に作り直しだって〜、ひどいよ秀ちゃん〜」「知るか」優月と秀も会話を交わす。
「今日のレッスンはここまでなんですが...皆さんに、お知らせがあります!」世奈の突然の発言にへたっていた皆が注目をする。
「この初ライブが終わった後、今回ライブで歌唱する各ユニットの二曲の楽曲がCD化することになりました!」
皆ぽかんとした後、声にならない声を上げた。
「具体的な日程はライブ終了後に通告が来ますので。喉を大切にしてくださいね!」
皆それぞれ喜びを表現する中、渡はぐっと拳を握った。
「ただいま」ドアを開けると人影が二つ。渡の母親と妹。返事は無く、椅子に座りっぱなしだ。
「今からご飯作るからね、今日は青椒肉絲だ」返事を聞くことなく、渡は肉やら野菜やらをエコバッグから取り出して調理を始めた。フライパンで具材を炒めながら、鼻歌を歌い出した。具材が焦げていく音で二人には聞こえなかったが、渡は二人に届ける気持ちで鼻歌で新曲を歌ってみせた。そして青椒肉絲をテーブルの真ん中に置いた。
「いただきます」渡一人だけの声で、たった一つの電気の下、三人は慎ましく食事を始めた。




