十一話 俺とお前の絆の在り方だ
決闘、と称して陽昇を呼び出した秀。陽昇に話したい言葉が色々溢れ出す。
秀が屋上で待っていると、陽昇が来た。
「お、待ってたぞ、って...何だそれ」陽昇を見ると鈍器のような長い鉄の棒を持っていた。
「決闘と言っただろう。龍ヶ崎から借りてきた」至極真剣な顔で答える。
「いや、そうじゃねぇんだ。俺が悪かった。それは下ろしてくれ、俺から話があるから...」秀は陽昇をベンチの隣に座らせ話を始めた。
「俺はお前をあの御影天さんの弟として見ている。それ以外の視点で見ることは、今はできない。だからどうしたってお前と天さんを比較しちゃうんだよ。お前はやっぱり、比較されるのは嫌か?俺は誰かと比較されるとか、あんまりないから分かんないんだけど」
「...嫌に決まってるだろ、僕は自分の実力でこの賭けに勝利した、Dreaming Maker+のメンバーとなったと思っていたんだ、でも現実は違った。...この話はお前と僕だけの内緒だぞ、誰にも言うなよ」と話を始めた。
「事務所に集まった初日、僕が真っ先に部屋に入った。そこに行くまでの道のりで少し迷ったんだが、間違えて違う部屋に入りそうになった。恐る恐るその部屋を覗いてたらこんな声が聞こえたんだ」陽昇は俯き唇を噛む。
「新しいアイドルユニット、どうですかね。オーディション内容はちゃんと見てなかったけど、あのDreaming Makerの御影天の弟は即採用でしたよ。オーディションでどんなパフォーマンスしてたっけ?...だとさ」陽昇はますます俯き拳を固く握り締めた。
「僕の実力を見てくれる人は誰もいない、肩書きだけなんだ結局は。いくら努力したって、僕はこの八人でやっていけるのか分からないんだ!あのDreaming Makerの後続ユニット、あの御影天の弟がメンバーの、頭でっかちで中身はスカスカなユニットになるんじゃないかって、不安なんだよ...僕はただ、皆に見てほしいだけなのに」声を震わせる陽昇の背中を秀は恐る恐るなでおろす。
「多分偏見の目は消えることはない。でも一人でも多くのファンにお前を知ってもらう方法はきっとある。俺たち七人も、それを全力で探す。そして八人で、やっていこう。今はまだ、道無き道を歩いてる状態だけど、これは決して叶わない夢じゃないと思う。がむしゃらに歌い続けて踊り続ける。お前らしく。そうしてまた一歩前に進めたら、俺は御影陽昇だ、って声を張ればいいんじゃないか。あー、俺何もいいことも言えないし情けないし、お前には突っかかってばっかで...性格は正直合わないからこれからも許せないことあったら全力で突っかかりに行くけど、これが俺のお前との絆の在り方だ。こればかりは捻じ曲げられない。よろしく頼むぞ」陽昇の固く握った拳を解き、無理やり手を握り締めた。強く、強く。
「お、宮田、御影!」すると急に屋上に翔が現れた。
「うわっ!?どうしたんですか急に」繋いだ手を慌てて解いて向き直る。
「いや、俺と社長もう帰るから最後に別れの挨拶をと思って...あー、俺邪魔者だった?」
「うん...」「っておい!うんじゃねーよ!失礼だろうが!!」頷く陽昇の頭を秀はポンと叩く。
「お前らに個人面談したのはな、お前らが一番迷宮で迷ってそうだったから。俺、先輩としてどうしてもほっとけなくてお節介焼いちゃったわけ。でもまぁこれでお前らが少しでも前を向けたら俺は嬉しい!Dreaming Makerの中には正直お前らのことをよく思ってない奴らもいる。俺もあのメンバーの中にいたらメンバーに同調してお前らを嫌うかもしれない。でも俺の心はいつでもお前らのそばにいるし、寄り添っていくつもりだからしつこくても許せよ?そんじゃ、バスが出ちまうから俺はこれで。早く戻らないと風邪でも引くから気ぃつけな!バイバイ!」そう言って翔は戻っていった。それからしばらくして二人も屋上から降りた。
「よし、御影、今からメンバーに謝りに行くぞ」「は?」廊下で唐突に放たれた秀の言葉に陽昇は疑問を抱いた。
「今まで俺たちが散々喧嘩して迷惑かけまくったこととか謝って、あと、これから頑張ろう!みたいな景気付けもしようぜ」「喧嘩って、お前が一方的に突っかかってきただけだろ」「んだと!?」そんな会話を交わしつつも、メンバー全員を食堂へと呼び出した。
「そんで、話って何だよ」怪訝そうに要が問いかける。
「あー、今まで俺と陽昇が喧嘩ばっかして場の雰囲気壊し続けて悪かった。ほら、陽昇も頭下げろ」「何で僕まで...」
「ぷっ!ちょいちょい、今更何だってんだよ!」要は思わず吹き出した。
「お前らの喧嘩は日常茶飯事すぎてもうどうでもいいんだよ!」と続けた。
「それに秀ちゃんはすぐキレるけど、自分なりにこの状況を変えたい!って思ってるから声を荒げてくれるんでしょ?謝る必要はないよ」と優月も秀を見つめる。
「お前ら...」思ってもいなかった対応に秀は言葉も出ない。
「残りの合宿期間も頑張ろう!これでまた皆の結束も強まったことだし!」「うんうん!きっと今までの自分とは違う自分を見せられるから!」誠、千尋も笑顔で返す。
「よーし!それじゃ皆でアレやるか?Dreaming Maker+ー!って言ってえいえいおーするやつ!」裕一が円陣を組むように誘うと八人が輪になり手を重ねる。
「行くぞ、Dreaming Maker+!」皆おう!と声を揃え手を天に掲げた。今は蛍光灯の小さな光の下だが、いつか観客の数多のペンライトの光に照らされることを信じて。
「ただいまっと...」自宅に着いた翔はDreaming Makerのグループチャットにて帰宅を報告した。今日のレッスン見学はこんな感じだった、とか色々と書き連ねた。すると真っ先に返信が来た。自撮りのアイコンの、明石圭人。
「楽しそうでよかった。俺もいつか彼らを指導したい」と返信が来た。すると、焼き鮭のアイコン、織雄大が続けざまに返信した。
「俺は千尋以外大して期待していないがな。千尋はよくやっていただろう。昔から努力家でプライドがあるいいやつなんだ」と返ってきた。するとすぐに
「千尋くん以外も期待してあげなよ、皆きっとダイヤの原石だ」「いいや、どうせ骨抜けな奴らの集まりだ。信用できないな」と怒涛の口喧嘩が始まり圭人が怒った顔のクマのスタンプを送ると雄大も怒った顔のリアルなクマのスタンプを送りつけた。そこで会話が途切れた。
「相変わらずだなー...明日のためにもう寝よう」携帯を枕元に置き、翔は眠りについた。




