第3章 その1 新しい仲間?
「わああっ! ワープするなぁ!」
「アルファ号が壊れちゃうよぉ!」
「リーダー、捕まえたわ!」
アミーがコンソール〈操縦盤〉上のパラを抱き押さえた時、船中に響いていた不気味な音が消えた。
そしてその代りに、今度ははっきりとした言葉がどこからともなく聞こえてきた。
『故障箇所ハナイヨ』
「へっ?」
おれ達はその声に驚いて操縦室中を見廻す。が、おれ達四人と一匹以外誰もいない。
「何……今の確か、日本語よね……?」
「うん日本語だぁ……」
アミーとサミーが同じ顔をつき合わせて首をひねっている。
〈ユウ様〉
メディアが心細気におれを見る。
「ねえ……リーダー、今の誰?」
「そんなこと知るもんか」
「お化けかなあ……リーダー! お化けだったらどうしよう?」
おれの学生服の袖をぐいぐい引っぱりながらサミーが騒ぐ。
「冗談じゃない! これ以上の面倒はもうご免だ」
その時再び先刻の声が聞こえてきた。
『私ハ、オ化ケナンテ名前ジャナイモン“ろん”ッテ言ウンダモンネ』
「…………!!」
『ドウシタノ? 私何カイケナイコト言ッタノカシラァ?』
「ろ……ろん?」
『ソォーヨォ。私ハ“ろん”ナンダ』
「ぷっ!」
おれとアミーとサミーの三人が吹き出した。
今までの緊張感はどこへやら、あまりのおかしな言葉使いに思わず笑ってしまう。
「な、何てしゃべり方」
「名前が〝ロン〟。だってぇ!」
「マージャンのロンかよ」
『何ガオカシイノヨ!』
「何が……って、もう」
アミーがくっくと咽を鳴らして笑っている。
「あなた一体誰なの? 何者? どこにいるの?」
『ダカラ私ハ“ろん”ナノ。コノ船ツマリ皆ノ言ウ“あるふぁ号”ナンダヨ。あみー。さみー。りーだー・ゆう』
「へ? おれ達のこと……全部知ってるのか? それに、ロンがアルファ号?」
おれはロンの返答に戸惑いの表情を浮かべた。と、声が答える。
『ソウヨ。私ハ、りーだー・ゆうガ私ヲ見ツケタ時カラ知ツテルノヨ。アト、らぐヤるあし、しーだノコトモ、初メカラズウーット知ツテタノ』
あん? おれがアルファ号を見つけた時からぁ?
意味わかんねぇし。
しかし、アルファ号って生き物だったんだろうか? するとロンは頭脳ってところか?
おれが次のセリフを言い出せずに黙ったままでいると、双子がロンと掛け合いをしだした。
先手はいつもの通りアミー。
「ねぇ、ロンがわたし達のことを最初から知っていたなら、なぜ最初から出てこないで、今頃になって出てきたの?」
『さみーガ私ノ音量調節きーノすいっちヲ、消シテシマッタジャナイカ。私ガアノ時、翻訳作業ヲ全テ終了スル直前ニィ。ダカラ私、今マデ何モ言ウコトガ出来ナカッタノヨ』
「えぇ――っ? じゃあ、あの時理解不明のわけのわからない変な音を放ったのはロンだったの? それじゃ今はパラが押したポタンが……」
『私ノすいっちヲ入レタンダヨ。さみー』
サミーはロンの返事に飛び上がって喜んだ。
「ねえリーダー聞いた? ボクが押したスイッチって音量調節のやつだったんだって」
「言っとくけど、お前の押したボタンはひとつやふたつじゃないんだぞ」
「あ、そーかあ」
サミー、一度考えてから、
「でも良かった★」
良くない! 良くない!
そんなおれ達をアミーが苦笑いを浮かべながら見た後、どこへともなく問いかける。
「ねぇロン。それにしても変な言薬使いね。あなた、わたし達六人の言い方を真似したの?」
『ソウヨォ★』
「あ……」
アミーが疲れた笑みを浮かべた。
今の言葉使い、ルアシの喋り方だ。
「ねー、ねー、ロンはぼく達の味方なの?」
『モチノロンロン。決マッテルジャナイ。ダカラ私ハ――』
「やったあ! ね、メディアさん聞いた? ロンはボク達の味方なんだって」
と、メディアはなぜか困った様な顔をした。
〈いいえ。わたしにはこの音がユウ様方と同じお言葉を話しているのだということは分かるのですが、意味はほとんどわかりませんわ〉
それを聞いてアミーが頷いた。
「仕方ないわよ。ロンと精神感応なんて無理だものね」
ああ、だからメディアは今まで、おれ達と音のやり取りを不思議そうに見ていたんだ。
しっかし、それがすぐ分かってしまうなんてアミー、本当に十歳の女の子だとは信じ難い。それともおれの方がアホなんだろうか。
「それじゃ、ロンはシーダ探すの手伝ってくれるよね」
『エェイイワ。ソノ前――-』
「その前にその話し方を少し直してもらわなきゃね。くすぐったくて仕方ないわ」
『ダケドォ――』
「いいから、いいから」
アミーは座席を操縦盤のそばへ移動させて座り、ロンの言葉使いを直すという作業に入った。
〈どうしたのですか? ユウ様〉
メディアがほとんど理解不能といった顔つきでアミーのやっていることを見つめている。
「あのね、メディアさん。この船がシーダ達探すの手伝ってくれるんだよ。アルファ号はロンっていう名前だったんだって」
〈まあ、シーダ様方を? 本当に? 良かったですわ。やっぱりトゥームの神の乗物。ユウ様方とだけ意志の疎通が図れるのですね。素晴らしいですわ〉
メディア……おれ神さんじゃないんだよぉ。それにこのロンだって、きっとアルファ号の中に仕組まれたコンピュータか何かなんだろうし……。
でもいくら説明しても結局は『トゥームの神のお力』なぁんてことで収まるんだろうなぁ。
おれ仕方ないから、あやふやな笑い方して話をそらす。
「ところで、シーダの言ってた島――ここから三十分位離れた所に島なんてあるのかい? メディア」
〈島……〉
しばらく考え込んでいた彼女は、突如何か思い出したように顔を上げた。
〈わたしには良く分かりませんが、ミラクに聞けばわかると思いますわ〉
メディアは何か、とても嬉しそうに瞳を輝かせて答えた。ミラク? 一体誰のことだろう、
〈“翼人の休息所”。にいると思いますわ。ミラクならきっとユウ様のお役に立てることと思います。今すぐ呼んでまいりますからユウ様方はここでお待ちになっていて下さいませ〉
そう言って一礼すると彼女は、駆けるようにして操縦室を出て行ってしまった。
何だか……恋人にでも会いに行くようだ……。
「メディアさん嬉しそうだね」
「ん……? ああ」
と、操縦席についているアミーが座席ごとくるりと回っておれ達の方を見た。
「ミラクって恋人かもしれないわよ。メディアさんの。リーダー、後追っかけてみなくてもいいの?」
メディアの……恋人……?
「べ、別におれは――」
「リーダーってすぐ顔に出ちゃうのよね」
アミーは抱いているパラの頭をなでながら、意地悪そうに笑う。
そのアミーの背後にあるスクリーンにはアルファ号から降りて行くメディアの姿が映っていた。足どりも軽く、楽しそうな後姿が駆けていく……。
思わず後を追いたいという衝動を押さえ、おれはアミーに笑いかけた。
「な、何が顔に出るって?」
と、アミーはわざとらしくおれの言葉を無視して――。
「やっぱり行った方がいいわよ」
「メディアさんの恋人ってどんな人かな?」
サミーの奴まで一緒になって……。
「お、お前ら、一体何が言いたいんだよ……」
げ! サミーとアミーがわけ知り顔に、にーっこりと笑った。
「だあーってリーダー、メディアさんのこと好きなんでしよう?」
双子の声がきれいにハモる。
「あ、あの、あのな、お、おれは、おれは、別に……その」
思わず……後ずさり。
赤面しているおれを見てアミーがくっくと笑っている。
「わあー! リーダー早く行かないとメディアさん見えなくなっちゃうよ!」
「え?」
うろたえるおれに、アミーが更に追い討ちを掛けるよううに、すっくと立ち上がりおれを指さして叫んだ。
「行け! 日本男子、リーダー・ユウ!」
おれが操縦室を飛び出したのは言うまでもない。
――が、しかし……。
アミーとサミーの二人にけしかけられてメディアの後を追った帰り道。
おれは、ブラック・ホールを背負って帰還した。
ああ、女性の後をつけるなんてみっともない真似をしたおかげで、見なくてもいいもの場面を見てしまった……。
遠目ではあったものの、“翼人の休息所”の建物から出てきた人影にメディアが駆け寄り、その腕の中に飛び込んだまま、何言か言葉を交わしているシーン場面。
最初から高嶺の花だとはわかってはいたものの……ああもはっきりと見てしまうと――背の高い男。あの男がメディアの恋人かぁ――もう言葉もない。結局、これ失恋というものなんだろうか……。
「どうしたのリーダー? まあーっ暗だよ」
操縦室のソファでホケッとしているおれのそばをサミーの声が通り過ぎる。
「あら、本当にミラクって人、メディアさんの恋人だったの? わたしはそう思わなかったんだけど、今度ばかりはカンが狂ったかな?」
『ドウシタノデスカ? りーだー・ゆう』
ロンはアミーに修正された通りにおれに話しかけた……が、今はそれに応える気も起きない。
「かなり落ちてるわねぇ。はいリーダー、パラよ」
アミーがわざわざ操縦席から立って、ソファのおれのところまで、パラを持って来てくれた時だった。
操縦室のドアがスライドして、メディアともう一人、男が入ってきた。見なくても気配でわかる。
〈遅くなって申し訳ありませんでした。ただ今戻りましたわユウ様。そしてお話ししました者を連れて来ました。“翼人の休息所”の護人として五年程前からその任に就き、トゥーム一の物知りと言われる者です〉
メディアの紹介を受けた男は、一瞬おれの腕の中にいるパラを見て立ちすくんだようだったが、腹を決めた感じでおれの足元まで近寄り、片膝を床について、その流れるような長く青い艶のある髪の毛が床に着くのを苦とする様子もなく、こうべ頭を深く垂れた。
〈トゥームの神よ。この度の謁見、誠に感謝申し上げます。メディアより神のお話は伺いましたが、このミラク未熟者ですので行き届かぬことも多いものかと存じますが誠心誠意を尽くし、お役に立てるよう務めさせていただきます。神の御意思の赴くまま、この身をお使い下さい〉
ミラクがひと言ひと言、言う度に腕の中のパラはうさぎのような耳をぴんと立て、体勢を低く構えた攻撃体勢で咽を低く唸らせていた。おれもその度にパラの耳元に「こらこら」と言うようにして話しかける。と、パラは安心したように吃るのを止める。
「それじゃ……」
何て返言葉を返せばいいのか困ってアミーの方を見ると、彼女はわかったと言う様に頷いた。
「あの、顔を上げて下さい。あの、あなたに聞きたいことがあったので……アミーが説明します」
〈はっ〉
う……。顔を上げたミラクの頼、目鼻立ちといい容姿といい、いかにもモテそうなタイブの背の高い男だった。きっとおれより年上に違いない。十八歳位だろうか。
アミーがミラクのそばに来て、両膝を折り両手を組んで彼の顔を覗きこんでクスクスと笑いながら言った。
「さあ立ってわたしにシーダのいそうな島のこと教えてくれる? 今リーダー、深ぁ~い考えごとをしているから。でないとわたしもこのままずーっとこうしてなきゃならないわ」
〈はっ。しかし……〉
「いいから。いいから」
サミーもやって来て、ミラクのあいた片手をとって立ち上がらせた。そしてそのままコンソールの方へと導いていく。
〈ユウ様?〉
その声に見ると、メディアがひどく心配そうな顔をして立っていた。
〈どこか御加減でもお悪いのですか?〉
「何でもないんだ。アミーの言う通りちょっと考えごとしてただけだから。その……シーダやラグ達のこと……」
ちょっと笑ってみせる。そのおれにサミーが突拍子もない声で叫びかけた。
「リーダー! シーダ達ね、“小さな翼”っていう奴でフロラ島まで行ったんだって! その“小さな翼”っていうの小型飛行艇みたいなんだけど」
「小型艇? 何でそんな物が……」
「詳しいことは後で語してくれるって、だから早くフロラ島へ行こ!」
サミーがいかにも今すぐ飛んで行けそうなことを軽々と口にする。
「どうやって行くんだよ」
ソファから立ち上がってサミー達の方へ行くと、アミーがからかうような眼つきでおれを見た。
「リーダー、わたし達が今、何に乗ってるのか忘れちやたのぉ?」
「あ……でも……」
「大丈夫だよ。ロンが飛んでくれるって! ミラクさんが持ってきてくれた地図をコンピューター・ルームの指定装置にセットすればすぐ行けるって! ね、ロン」
サミーがミラクから受け取ったという地図をピラピラさせながら部屋を出て行った、
『りーだー・ゆう。安心シテ下サイデス。入カ済ミシダイ、スグニ飛ブコトガデキルワヨ』
「あた……」
アミーが頬に手を当てて舌をペロッと出した。
「メカって一度癖がついたら直りにくいのよね。人間と同じで」
「しかし一体何でシーダ達小型艇なんかで
……誰か大人の人が操縦して行ったのか?」
頭を掻きながら空いているシートに腰を落とす。
ん? 待てよ。
この星の人達、昔ならともかく、今は全く機械というものに対しての知識や理解が失われているはずだ……だとすれば小型艇なんか操れるわけがない! それに、それ以前に、「祖先の遺産だ」とか「トゥームの神が」云々とか言って、勝手に触るはずがない。
すると……まさか……まさか……。
『入力完了。あるふぁ号離陸準傭OK。あていしょんぷりーず。あていしょんぷりーず。出発進行。離陸シマス』
サミーの奴が教えたのだろう言葉を告げた後、アルファ号は浮遊感のふの字も応じさせない程、音もなく静かに飛び立った。
「わーい★ 飛んだぁ」
部屋の外からサミーが駆けて来てスクリーンに飛びつくようむにして段々遠ざかって行く地上を見下ろした。
〈こ、これは……〉
〈……………〉
これでシーダを救助に行ける。と安心顔のおれ達とは反対に、メディアとミラクは天地がひっくり返ったとでも言うような顔をして立ちすくんでいた。
無理もないか。自分たちが空を飛ぶなんて――いくらトゥームの神のご一行が空からやって来た、と理解していても――全く観念外のことだったんだろうから。
「大丈夫★ 落ちたりしないから」
アミーも気づいてか、二人に似笑みながらウインクを投げかけた。
その言簑に多少は安心したのか二人ともいく分か肩の力を抜いたが、その拍子にメディアがよろめいて倒れそうになったのをミラクが抱き止めた。
あ――。また暗くなって来た。
だけどいつまでもイジけているわけにもいかない。
「ミラクさん。メディア……さんと一緒にソファに座ってた方がいいと思うんだけど」
首を少し傾けて親指で奥のソファを示す。
〈は。わたしは大丈夫ですが、お言葉に甘えてメディアだけでも座らさせていただきます。さ、メディア〉
〈いえ。わたしは……驚いただけですから〉
〈それならいいが……それにしてもわたし達は本当に空の中を飛んでいるのですか?〉
「そうだよ★ トゥームの星って綺麗だね。ビルや工場なんか全然ないやぁ」
サミーは言いながら、おれにパラを貸してという仕草をする。
〈ま、まさしく神の乗り物。“翼人の船”〉
目一杯感動してるなあ……。いいけど。
おれは隣の席のサミーにパラを渡すと席を立ってメディアに勧めた。
〈でも、ユウ様は……〉
「いいから。おれソファ。で、ミラクさん、さっきも言ったんだけど何でシーダ達その何とかの翼って奴でその島まで行ったのかな」
途中まで歩いて振り返り、しばらくは空の上からこの星の景色を見ていようかなんて気になって、おれは立ったままで話すことにした。
〈は。シーダ様方が“翼人の休息所”の建物に来られたことは御承知のことと思われますが、その折わたしと数名の護人達とで、調査をしておりました建物の中を御案内しておりましたところ、“小さな翼”をお目に止められ、一度是非乗せて貰いたいとのお申し出がございましたので〉
「で、乗っちゃった……の?」
〈はい〉
アミーが呆きれ果てたという顔をした。
「あの三人ならやりかねないわ」
じゃ……やっぱりもしかして……。
「アミー、誰が操縦したのか見当ついてるのか?」
思わずアミーが座っているシートの背もたれ部に手をかける。
「シーダに決まってるわ」
「シーダあー?」
呆っ気にとられいるおれを見てパラを抱いたサミーが手を上げた。
「だってリーダー、シーダのうち家ティド財閥だよ。ボクも遊びに行くと時々やらせてくれるんだけど、シーダの家の地下室にね、宇宙局にあるのと同じ特別製の戦闘機操縦装置室シュミレーションルームがあるんだよ。本物の! シーダ凄く上手いんだよ。ボクはね、少し飛べるんだけどすぐ墜突しちゃうの。地面と」
ははは……何も言えん、
九歳のガキが小型飛行艇を操縦だと?
「でも何で島なんかに?」
〈はい。飛び立たれる際に、この辺りで一番近くにある無人島はないかと聞かれましたので、フロラ島の印をつけた地図をお渡し致しました〉
探偵ごっこの延長線だな。あいつらの頭は。
ん? 無人島だって?
一瞬おれの頭の中をシーダの、救援を求めた時の声が横切った。
――ラグとルアシが変な奴らにとっ捕まえられて……
「まてよおかしいぜアミー。シーダ達が無事、無人島であるフロラ島に着いたとしたなら、何でラグとルアシが襲われたりするんだ? 人のいないはずの島で」
「それは……」
アミ…が解答なしというように首を振った。
ミラクとメディアは口を閉じたまま、おれ達を見ている。
――動き出した。
何だ今の……また空耳だろうか。
とにかく。とにかく今は、一人島でおれ達が迎えに来るのを待っているだろうシーダのところへ行くことが出来れば何か分かるはずだ。
操縦室中に何か重っ苦しい雰囲気が広がる中で、一人だけ意にも介さぬといった感じでサミーが叫んだ。
「ボクおなかがすいたあ! もうお昼過ぎてるよねぇ。何か食べようよぉ」
あっけらかんとした調子のサミーにアミーが微笑みを浮かべた。
「まだよサミー。シーダを無事救出してから。そしたらルアシのサンドイッチがあったでしょ? それ食べましよう」
「うん★ それ聞いたらボク急にシーダに会いたくなっちゃった」
何て安直な奴だ……。
おれは肩を軽くすくめるとソファに歩み寄り、ス二―カーを脱ぎ拾て、あぐら胡座をかいて座った。
何かが心の中に引っ掛かっている。何だろう。
軽く瞼を閉じる。
それさえ分かればすべての疑問が解けるかもしれないのに……多少の疑問は……。
だけどその何かは考えれば考える程遠くに行ってしまう。まるで今思い出してはいけないとでも言うようにだ。
それともおれの思考能力が低下しているのかな。まあそっちの方の可能性が多過かもしれない。
何と言っても昨日から、おれの身に振りかかって来た出来事はあまりにも多すぎたものだから、疲れてるのかな? こっちはガキ共と違ってバイタリティの消耗も激しいし……それに。
〈ユウ様?〉
遠くの方で微かに誰かが呼んでいる。まるで夢の中からおれを呼ぶように。
妙にフワフワとした心地になり、再びその声が何か言ったようだったがすぐに忘れてしまった。




