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第2章 その2 トゥームの神になる

 そういうわけでおれ達一行は部屋を出て、メディアの案内に従って歩いていた。

 と、前を歩く彼女がある扉の前で立ち止まった。

 この部屋の中にトゥームの人達がいるんだろうか?……と違うみたいだ。

〈トゥームの神。この部屋にてお召し替えをお願い致しますわ〉

「お召し替えぇ――っ?」

 んなこと聞いてない。

 でも、やっぱり学ラン姿じゃ今いち格好がつかないんだろうか? おれ学生服好きなんだけどなあ……。

〈この部屋はトゥームの神でなければ入れないそうです。長から長へと伝えられた話では、この中にトゥームの神でなくては入ることの出来ない部屋がひとつだけあり、神はその部屋にてお召し替えをなさるとのこと、その部屋がこの部屋ですわ〉

「ヘェー。じゃトゥームの神って奴はこの部屋の人間鍵なのか」

 シーダ。お前なぁ……。

 連中の声を背にの前に立つ。

 扉の上の方に赤外線スコープのようなものがおれの姿を見つめているのに気がついた。そして五秒程、間をおいて扉が大きくいた。

「うわあぁ……」

 思わず歓声。凄いや、この部屋。

 高く広い半円球の天井に天体図。さながらプラネタリウムを想像させるが、それは天井だけでなく部屋全体を小さな宇宙空間として造り上げていた。

 思わず一歩部屋の中に足を踏み入れてしまう。

「ねえリーダーこっち向いて★」

 ルアシの声にドアの方を振り向く。

「キャア★ リーダーの中に融け込んで行くみたい、髪と眼と服の色のせいよ」

 そっ、そうかなあ……思わず照れてしまう。

〈ユウ様どうぞ奥の方へ〉

 メディアの言葉に従がって進んで行くと。

わっ! 突然おれの足下から円形筒状の金属製――だと思う――の壁がするすると出て来ておれの周りを取り囲んだ。

「あらぁ。リーダー本当に融けちゃった」

 ルアシーぃ! なに言ってるんだよぉ、もう。と、明りがついた。

 薄い紫色、紫外線かな。これ。何となく閉じこめられた感じ……。

「リーダー! いるのぉ?」

「おー! いるぞぉ!」

「何やってるのぉ?」

「何もやってない」

 ラグ達とやり取りをしていたら突然この壁がうなり始めた。

「…………?」

 おののいているおれの目の前で壁が四角い口をぱこっと開け、中から何かを出した。

 サークレットに短剣。そしてあとは衣類。

 ひょっとしてこれを身に着けるんだろうか。

 服は二枚重ねになっていて、中に着る服はハイネックの半袖、腕首には金属製のブレスレッドが位置している。そして上着の方は左の肩元で服をとめられるように出来ていて、その上着の襟元から裾にかけて模様が刺繍によって施されていた。あとは布製のとスラックスにブーツ。そしてケープ。

 全体の色が青色で整えられているようだ。

 肌触りがすごく滑らかで、光沢もあって厚みがしっかりあるのにシワはまったくないし、軽い。

 超高価な生地だってことぐらいおれでもわかる。

 本当に……おれが着るんだろうか?この……と、考えあぐねていたらガキ共が騒ぎ出した。

「リーダー、どうしたの? まだぁ?」

「早くしろよぉ!」

 うぐ……。くそお! もうこうなったらやけだ。

 おもむろに学ラン脱ぎ捨て着替え出す。

 鏡がないだけ精神的には気が楽だけど、似合わなかったら最高の悲劇。笑い者になってしまう!

 でもこの星の人逢も似た様なデザインの服を着ていたし大丈夫かなぁ……と、このサークレット頭にはめるんだな。そして短剣は、腰のベルトの間にはさめばいいや、完了。

「こんなもんかな? ――あれ?」

 着替え終わったと同時に壁はスルスルと自動的に下がり始め、あっという間に床に消えてしまった。

 簡易更衣室だったのかな……。

「あ! リーダーよ。早くこっちに来て」

 ルアシの声が飛ぶ中、おれは脱いだ学生服一式持っておそるおそる部屋の外に出た。

「馬子にも衣裳」

「わ――、いいなあ。ボクも着たい」

 双子であってもやはり性格は違うらしい。このふたり。

「キャアっ★ リーダー顔真っ赤。かわいいー★」

〈とってもお似合いですわ〉

「リーダーその短剣はぁ?」

「頭の輪っかはぁ?」

 あー、何て賑やかなんだ……。

〈伝説では、剣はアティヌ。そしての輪はルメイヤと伝えられていますわ〉

 メディア、そう言っておれにやさしく微笑みかけた。

「わ、それ全部貰ったの? リーダー」

 おれのなわけないだろうに。

〈はい。トゥームの神のものですわ、すべて。さ、どうぞご案内致します〉

 ご案内……あ、そうか、この星の人逢に会うんだったっけ。しかしトゥームの神でもないのに、こんなことしていいんだろうか?

 いいわけないと思うんだけど――。


 歓声。歓声。歓声。

 目まいがするほどの歓声の渦。

 数千人の歓声がおれを縛りつける。

 テレパシーの歓声ほど凄まじいものはないものだろう。

 音として耳から入ってくる音は耳を塞げば多少なりとも音は小さくなるけど、テレパシーって直接頭に入って来るし、こういう体験って初めてだから防ぎ方がわからない。

 うーっ。頭の中がガンガンして来た。まるで鐘をついているみたいだ。

 ゴーンゴーンゴォ――ン。

 目まいを起こしかけながら隣りに座っているアミーを見ると、なんだかおれよりきつそうだ。苦しそうに肩で息をしている。

「大丈夫か?」

「う……ん……」

 他の連中は、と見るとサミーをのぞくラグ達はそんなに感じてもいないようだった。

 どうやら、この双子とおれだけがきついと感じているらしい。

 アミーとサミーは特殊な能カがあるとかないとか言ってたから強く感じるんだろうけど、おれの場合は直接攻撃だぜ……。

 この大広間に集まっている人達全てがおれを『トゥームの神』と信じ切った様子で盛んに歓声を上げている。

 このはおれ達がいた部屋と同じ建物の中らしい。五千人は楽に収容出来そうな、そのフロアの正面。奥の奥に段の高くなったところがある。そこは多分、王座。そして、今そこにはおれとラグ達が不安を抱えながら座っていた。

〈トゥームの神よ〉

 歓声の中で威厳に満ちた長の声が響いた。

 歓声が止む。

 長のべーダーはおれの正面。段の下のフロアに白のローブをまとい、数千人もの人々を従える代表者として立っていた。

 そのすぐ後ろにメディアの姿もある。

〈トゥームの神よ。我らトゥームの民は今再び、あなたに救いの手を求めなくてはならなくなったことをどうかお許し下さい。

 我々があなたに願いを乞うたこの“七の時”がどれ程長く感じられたことか――。

 神よ、偉大なる我トゥームの神よ。

 どうか今再びトゥームを救って下され。

 今、トゥームは何者とも知れぬ者により重圧を受けております。

 我孫娘、メディアの申す話によりますと、何者かが自分へ様々な通告を送って来るとのこと。

 そして、それは通告後、ひとつの時の問に実現してしまうのです。

 例えば『数日後にトゥーム全域に対し日照りを起こす』と告げられれば、その通りになり、『水害を与えよう』と来ればその様になってしまう。

 天地をも自由に操つることの出来る恐ろしい者が我らトゥームの民を苦しめ、脅かかすのです。

 そして、ある日とうとう恐るべき通告を申し入れて来ました。

 『我をトゥームの神として受け入れよ。万が一拒否することあらばこのトゥームに、守りの星々が天よりその地へ落ち行くことになろう』と。

 そのような言葉を受け入れることは神にそむく行為。

 どうか今再びお力をお貸し下され。

 神よ!!〉

 ベーダーは言葉のひとつひとつに力を込め、そう言い終えると悲痛にさえ感じる表情でおれをじっと見つめた。 

 べーダーだけじゃない。大広間にいる人達全員が全員、闇の中から光を見い出そうとでもしているかのようにくいいるようにおれを見つめている。

〈神はきっと我々を救って下さる〉

〈神は我々の為にトゥームに降りられた〉

〈トゥームが救われるなら、この命をも神に捧げましょうぞ〉

〈神よ〉

〈トゥームの神よ〉

 言葉として今まで彼らが伝えていたものとは別種の、心の中での想いとでも言ったらいいのか、そんな感じのものがおれの胸の中に、ひとつひとつの想いとして突き刺さった。

 何て言ったらいいんだろう……。

 おれ、おれが本当にトゥームの神さんならこの人達助けるために何でもしてやりたいと思う。

 だけど……だけど、おれただの中学生で……人間で……神なんかじゃなくて……。

 だけど――。

 この人達前になんて言えばいいんだよ。今おれが本当のこと言っても信じるわけないし、ヘタをすると彼らの願いを拒否したと思わせてしまうかもしれない。

〈ユウ様……〉

 メディア彼女の声が胸を貫いた――と、一瞬おれの頭の中は空白化し何ごとかが口をついて出た。

「わかりました。出来る限りのことはさせていただきましょう」



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