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第5章 その8 にぎやかな余韻

 まさに間一髪だった――。

 アーモルから離れ、アルファ号のスクリーンに映っている、アレピオスのあったクレーターから濛々と噴き上がる煙を見つめながらおれは思った。

「い! 痛てぇ! もういいよアミー!」

「騒がないの! 日本男児なんでしょう?ほら、メディアさんとミラクさんが心配そうにしてるじゃない」

 アミーが冷たく言い放ちながら、おれの体中に出来た大小様々の傷口に、消毒液を目一杯しみ込ませたガーゼを遠慮なくぶち込んでくれる。

「そ、そんなこと言ったって……ぐわっ! 痛い!」

 目の前でシーダがニヤニヤと笑う。

 だいたい、ラグ達は無傷もいいとこなんだ。

 メディアとミラクさんだけが心配そうな表情で応急手当てを見守っている。

「はい、おしまい」

 小気味のよい音をたててアミーがおれの患部をペチッとたたいた。

「!!!」

「あらやーね、リーダーったら白目むいてる」

 ルアシがキャイキャイと笑う。

 本当に嫌になるくらい元気な奴らだ。

「でもさぁ、みーんな助かって良かったね。ポクなんか一回もうだめかなぁって思っちゃったもん」

「そう、サミー! お前だ、お前異次元空間に跳ばされたじゃなかったのか?」

「ウン★」

 ウンって……。

「アミーのいる部屋に飛び込もうとした瞬間、ゴムポールみたいに弾かれちゃったんだけど、パラが引っかけてくれたの……っていうのか、ポクの意識がボクからずーっと流れ出していってるのかなって思った時、もの凄い頭痛がしたんだ。それで離れていこうとしてた意識がびっくりして戻ってきたんだ。で今のは何だろうって思ってもう一回エネルギーをそっと流してみたら、真っ暗でわかんなかったんだげど、頭にチクっときて、パラだってわかったの。パラがね、起きろって教えてくれたの。それで、あの空間から抜け出せたんだ」

「でもお前が消えた時は驚いたぞ。あれはやっぱりアミーを見たからか?」

「わかんない……ただあれ見た時、目の前がピカッと光っちゃって何が何だかわからなかったんだ」

 ヒューアスは……おれを精神的に追いつめるために仕組んだことだとは言ってたけど、それは結局、サミーの未知な力を大きくさせ、更に、おれをあの壁に体当たりする様な真似をしないですむ役目を果たしてしまったわけだ。

「ぼくもリーダーが呼びにきた時はびっくりしたよ」

「おれが?」

 おれは帽子をくるくる回しているラグを見つめた。

「うん。リーダーが行っちゃったあと。リーダーが目の前に現われて、来てくれって 手を差し出したんだよ、覚えてないの?」

「あ、ああ?」

 おれは、我ながら呆然とした。何か大切な記憶が失われているような気がする。

「じゃ、サミーやメディアのところにも?』

「うん」

〈はい……〉

 何となく赤面――覚えていないがおれは全貝に助けを求めたらしい。

「わたしね、ヒューアスとリーダーのやりとり一部始終知ってたわよ。リーダー」

「アミーい!?」

 おれほ、穴があったら入りたいと思う……今思うと、何だかスゴィことばかり言ってた様な気がする。

 それから、メディアとミラクさんを送る為にトゥームヘ行く間、ラグやシーダ、ルアシ達が、おれと別れてから自分達がどんな目にあったかをことこまかに話してくれた。

 ルアシなんかもっぱら、ヒューアスが本当の人間だったら良かったのにと連発して、おれの苦笑いをさそった。

 ただ、今だによくわからないのは、一体何者がおれ達をここまで導き、トゥームの神に仕立てあげたのか。何故おれの知らないことばかりを、おれは知っていたのだろうか。

 そしてアレピオスの建物の格納庫で〝小さな翼〟のキャノピーをあけたのは誰なのかということ――

 おれは短剣に戻ったアティヌとを見ながらそう思う。

 いや、一番の問題はアルファ号、ロンについてだ。

 でもロンは自分自身のことはわからないと答えたし……でも、まあ、とにかく、地球へ帰れるんだからいいか。

 ふとため息をついた時、シーダとサミーがアティヌとルメイヤを指さしながら何ごとかを言いあっていた。

「どうした?」

「うん、それ短くなったり長くなったりする剣だろ? 輪っかも光るし、んで何で出来てんのかロンのコンピュータを使って調べてみたいなーって、サミーと言ってたんだ。少しでいいから貸してよ」

 シーダがサミーも一緒に頼めと、頭をこずく。

「しょーもないな、借りもんだから壊すなよ」

「ラジャー〈了解〉★」

 二人は操縦室から出ていった。

「ね! ミラクさん★」

 突然ルアシがラグのそばを離れてミラクさんにペトっと、くっついた、

〈は。なにか?〉

「あたし達が帰っても、あたしのこと忘れないでね。髪の毛一本もらってもいい?」

〈!?〉

 ミラクさんとメディアが驚いた表情でおれを見た。

〈神! まさか……帰ってしまわれるおつもりですかー〉

〈ユウ様!?)

「うん……二人を降ろしたら……ね」

 メディア――、彼女と別れるなんて思うだけでも心が重いのに、メディア、そんな悲しそうな顔をしないでほしい。

〈しかし……〉

「ね、ミラクさん。伝説のトゥームの神も敵をやっつけたあとは、すぐに姿を消したんでしょう?」

〈はい……〉

 操縦席のシートからアミーが静かに言った。

「だから、わたし達も同じことをするだけ。そう思って」

〈…………〉

 ミラクさん、凄く沈痛そうな表情を浮かべる。

〈神――〉

 彼はおれの前までくると、垣例の片膝をついて頭を垂れたポーズをとった。

〈神、我々はあなたの、我々に対して示して下さった尊いお姿を、決して子孫代々忘れはしません。どうか神よ、私には何といって感謝の言葉を延べればいいのかわからないのですが――。神よ、わたしの忠誠をお受け取り下さい。我らがトゥームの神よ!〉

「ミラクさん……」

 まいったな……どう答えよう。

 ラグ達の、しのび笑いを横目に見ながら困っていると。

――全員集合セヨ! しーだー君ノオ呼ビデース。全員こんぴゅーた室二集合セヨ!

「何かしら」

 ロンの声に、アミーがシートから立ち上がっておれ達をうながした。

「行ってみましょう」



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