第8話 【ラビッツ編】彼氏いない歴=年齢
ファーストの街にあるテラスカフェ。
学生や主婦などが利用する時間らしく、デートするにはいい場所だろう。
「話は聞いていたんだ。アンジュおばさんには子がいる。ってでも会いに来なかったから……」
「会には来てましたー! っても、いやだって。スタン家とは親戚といっても、関係あるのはパパとママだけだし」
そういうのはアタシのおいっこ? になるのかな。ほぼ年齢の変わらないスミレ君。その横には年上のシンシアさんが微笑みを崩さない。
別にさぁ……パパが元貴族だからって、一般家庭生まれのアタシがホイホイと遊びに行く事ないでしょ?
「付き合いあるほうがおかしいのよ。ママも言っていたけど。アタシは一般人! 貴族様の親戚がいるだけで貴族じゃないし」
ミアーシャ義姉さんはよくしてくれ手紙のやり取りはありますけどー……サンドベル義兄さんとは深い付き合い無いですしー! 良くてママ止まりよ。
「だったらオレもそうだよ? 親父は追放されてるし……オレもサクラも貴族の地位はないし、でも顔ぐらいは見せるけど」
「一番は…………だって遠いんだもん」
「だよな」
一瞬で移動できるような魔法でもない限り、馬車のって船乗って馬車乗って徒歩で歩いて、さらに──……何ヶ月かかるのよ!!
「まっそういう事で、貴族様じゃないから挨拶も楽でいいかも。改めまして……アンジュの娘。ラビッツ」
「ああ……ええっとクロウベルの息子。スミレ」
改めて握手をする。
「サクラって妹もいるけど、リーカ会長と生徒会の問題でどこかいった」
「誰……?」
「ああ! ええっとリーカ会長って言う親父の弟子で生徒会長の女性がいるんだけど、生徒会にエーゲル海に雪女の影があるとかで、エーゲル海ってのは火山が1つあるエーゲルの島。その周りの──」
「まったまった! 全く分からない」
スミレ君の隣にいるシンシアさんが、小さいため息を出す。
「スミレ君?」
「ご、ごめん。シンシアさん、ええっと……かっこ悪いよな」
「激しい夜の時はシンシアって呼び捨てだったのに」
「ちょ! シンシアさん!」
あの、彼氏いない歴=年齢のアタシはこういう時どうすればいいのよ。
わかりますよ!? この短いやり取りがカップル特有の甘いえっちな冗談ってのは、わかってますけど!! どこ見ればいいのよ。
あれですか? シンシアさんの胸でもみればいい? 柔らかそう。
「…………揉んでもいいです?」
「はい?」
「ラビッツっ………………おばさん!?」
はっ!?
思わず口から出ていた。
シンシアさんがささっと胸元を腕で隠す。あまり意味ないけど。
「ラビッツさんでしたよね」
「はい。そうです」
「胸を揉みたいって……クロウベルさんの奥さん見たら驚くわよ。私の倍はあるわ」
「えっ!? 人間!!?」
「ううん。魔女」
思わず息を飲む。
周りを見るも私達の会話には誰も聞いてないようだ、魔女と言う言葉は一部では禁忌に近い。不老不死や見えざる魔法を使う。魔族大戦では1人数千の魔族を焼き払った。などなど逸話が出てくる。それもこれも1人の魔女の話では無くて……おっと仕事先の癖ね。
「大丈夫。この辺で魔女って言うと良いイメージしかないはずよ。たまに学園に講義しにもきてるし。頼んだら揉ませてくれる、ねースミレ君」
「ぶっほ」
「ちょ! あんたアタシと年齢近いんでしょ!? まだママのおっぱい揉んでるわけ!!」
「揉んでない!!!」
スミレがカフェテラスの席から立つと、静まり返る。
すぐに『あの子って、え。ママのおっぱい揉んでる?』『吸ってるとかじゃなくて?』『うわぁ性癖終わってる』などのヒソヒソ声が。
スミレ、椅子に座り直して顔を腕で隠して伏せてしまった。
「可愛いスミレ君。夜になったら揉ませてあげるからねー」
「うわっ……」
私が『うわ』って引いたのは、顔を伏せているスミレの体がビクって反応したからだ。これだから男って……。
「………………あの、アタシも揉ませてもらえます?」
「うーん? さすが彼の……クロウベルさんの血筋ね」
「血は繋がってませんよ。義父は同じでもママは再婚相手ですし、結婚する時にはアタシ生まれてますし。ん?」
顔を伏せているスミレの体がまたビクっと動いたような気がした。
もしかしてテーブルの下でエッチな事してるとか? スミレの隣に座るシンシアさんって女性、小悪魔なような笑みなのよね。
聞くわけにはいかない、でも、テーブルの下を確認したい。
「おっとスプーンをおとしちゃったー!!」
手でスプーンを跳ねのけて地面に落とす。
素早くテーブルの下にもぐって確認するとえっちな事はしてなかった。
《《ママとは違うか》》。
まさか小さい頃に見たアレがえっちな事とは思わなかったし。
別にアタシは変態じゃない。
ほら、将来彼氏だ出来た時にだ! 知識として備えて置かないと……昔からママに情報だけは教えました。って言われてるけどこういうのは経験よね。
素早く顔を戻す。
ほら大丈夫、シンシアさんも気づいていない。さすがアタシである。
「で……話を戻しますけど。クロウベルさんや、ママの事を知っているならママの居そうな場所知りませんか?」
「んーアンジュさんとは1回しか顔を合わせた事がないのよねぇ、スミレ君?」
未だ顔を伏せたスミレがちょっとだけ顔を上げた。
「オレもアンジュさんと会う事は少ないし。でも親父なら何か知ってるかも」
「だから、会えないって言ってるの」
もしかして頭悪い!?
「だよな。そうじゃなくて……親父が知ってるアンジュさんとの話に、誓いの剣技って場所があるとか」
「どこ?」
「フユーンの北にいって────……」
「ふんふん」
フユーンの街にからの森。小さい教会があるらしく、そこでパパはママの誓いを聞いたそうな。ロマンチック。
「──で、この剣を貴方に捧げます。って言ったらしいんだけど……」
「ん? ママって普通のメイドよ? 何で剣が出てくるの?」
「え、でも親父の剣の師匠だろ?」
「何で?」
スミレもアタシも話がかみ合わない。
「ママはゴブリン1匹も退治出来ないわよ?」
「親父は事ある事に『アンジュの剣』って言ってはゴブリン何で一振りで斬る」
「…………?」
「…………?」
そんな訳が……訳が……あれ、でもよく考えるとママって運動神経は昔から凄いのよね。鬼ごっごで捕まえた事ないし。街の防災訓練でもメイド姿でどんどん高い場所に登るし。
もしかしてママって。
「ううん。行ってみるのがいいのかも。デートの最中なのにありがとうございます。今後は庶民同士仲よくしましょう」
「ああ。今度サクラにも会いに来て……いや、こっちから行ったほうがいいかな?」
「遠いわよ?」
「そこは『転移の──』」
「スミレ君!!」
シンシアさんが突然にスミレの名前を大声で呼ぶ。
「あっ! っと……何でもない」
「何が!?」
シンシアさんが『余計な事を言わないように』と言う顔である。
何も変な事は……てんい……たぶん、店の許可とかそんな感じよね? バイトでもしてるんでしょう。
「と、オレだけじゃ多分怒られるからその、親父の許可得たら行くよ」
「はぁ……じゃぁ待ってるけど……パパとママが別れてなければ」
握手をして2人と別れる。
さて……フユーンの街に逆戻りか。




