第7話 【ラビッツ編】ラビッツおばさんですって!?
あの! 〇ソ校長は何なのよ!!
思わず外壁を叩くと、正門前の職員がギロッとにらんだ。
「ちょ、ちょっとつまづきましたの! おほほほ」
職員さんは、深く息を吐いて見逃してくれた。
あぶない、あぶない……今いる場所はファースト学園の出入り口。
なんだったらもう用事は終わった。
ミアーシャ義姉さんからファースト学園のクウガ校長宛に紹介状を貰っていざ会って見た。優しそうな男性ってイメージがあったけど私の顔を見ては警戒した雰囲気を感じた。
アタシって昔からそういう事に敏感なのよね。
それにスゴウベル義兄さんやミアーシャ義姉さんから。クロウベル義兄さんを探すのに、親類って言わないほうがいい。とアドバイスを貰ったのであくまで『ギルド職員』として面会したのだ。
結果。
『クロウベル。と言う人物は学園に出入りはしてるけど、現在どこにいるか知りません。また、今後来ても同じ答えになりますよ』と優しい笑顔で言われたのだ。
いっその事、義妹です!! って打ち明けようかと思ったけどタイミングを逃したし、そこで言うと、何で最初に言わなかった? と言われるのは必然だ。
『それ以外の事でしたらお力になれるかもしれません。学園の教師試験受けて受けてみますか?』とも言われたけど、お断りです!
「………………いや、失敗したかな。お給金が良いのよね。受けるだけ受けても……でも、戦いなんて無理だし」
はぁ……もう。ミアーシャ義姉さん達にも迷惑が掛かりそうなので、こうして外門に出る事に。
「ほんっと。あのク〇校長!!」
もう一度壁を叩く。
出入口を警備してる人が咳払いをして注意してきた。
「だから転んだだけです」
にらむように見ると顔をそむけた。
まったく……。
しかし!! これで振出しに戻った。
いや、もっと悪い。
「だって……ミアーシャ義姉さんの所に戻って何も成果はなかったです。って言えないよね……貴族の面子を潰す事になるだろうし。もちろん2人は全然気にしないと思うよ。でもスタン家と学園の仲が悪くなるのは確実! まさにサーベルタイガーの尾を踏むね」
それまで機嫌が良かったのに尻尾を踏む事で仲が悪くなる奴。
このままでは帰れない。
いや、帰った所でママは行方不明でパパはぎっくり腰、職場に戻っても無能のレッテルを張られて一生窓際。
「もしかしてアタシって大ピンチって奴!?」
「ピンチなのか?」
突然背後から声がした、振り返りざまに裏拳をぶちかます。
メイドの心得え、その23っ! 奇襲には奇襲で返すべき!
「えっ!? 外した!!」
「うおお!? あっぶねえっ!!」
「スミレ君!!」
私と同じぐらいの青年が後ろに飛び距離をとった。
その近くでは女性が心配そうに青年を見ている。
母親……? ずいぶん若い母親……じゃないよね。でも姉弟にしては似てない。
青年のほうは色白でアタシと近そうな、
女性のほうはブロント色の髪で、劇的に違うのはこんがり焼けた健康的な肌。おもに海辺の街にいる女性と言うイメージだ。
このアンバランスな2人から導きだれる答え。
「と、言う事は! お断りします!!」
「何の話だ!」
何もこういうのはハッキリさせて置かないと、相手に悪い。
「え、アタシをナンパしてエッチしたいんですよね。申し訳ありませんが、そう言う女性ではないので」
「はぁ!?」
青年のほうが驚き女性の方を見る。
「……あのやっぱり放置して置きません? 絶対に困ってませんよこの女性」
「ううん。困ってるオーラでてました。あの時のスミレ君みたいにー」
「あの時ってオレ、殆ど覚えて無いんだけど」
「あんなに体を重ねたのに?」
「そ、それは……はい。すみません」
女性のほうが胸チラをすると青年のほうが慌てて下を向いた。
何このカップル。
もしかして女性のほうが青年をナンパしたのかな?
「メイドじゃないのに年中メイド姿を趣味でしてる女性を探すので忙しいので、これで失礼します」
一応は頭を下げる。
ナンパじゃなかった時に困るので、メイドの心得その11。相手の考えを先回りする。
「メイドじゃないのにメイド姿ってアンジュさんみたいな」
「え! ママの名前っ………………彼氏? きっとそうだ! そうだよね。ママったら歳のわりに肌年齢若いし、メイド姿もあって街の人気者なのよね。なんでパパと結婚したんだろう。って思っていたし、財産よりもやっぱり若い男性よね」
「待った! え。アンジュさんがママって……あの! ラビッツおばさ……ん?」
私の裏拳が見事に空をきった。
この子に回避されたのは…………2回目だ。
「やっぱり若い子には当たらないのよね。街では冒険者も含めて8割は当たるのに、皆わざと当たってくれてた……まだ20歳です!!」
「し、死ぬかと思った……」
冗談は止して欲しい、裏拳の一つで人が死ぬわけがない。
「違うんだ。ええっと、クロウベルの息子って言いたくないけど、息子のスミレ……です」
「え!? スターシャ義姉さんが言っていた子供の名前。じゃぁこっちがサクラちゃん? 思ったよりも老けてる」
「シンシアと言います!! 老けていてすみませんでしたね! その……スミレ君の彼女って事です……いいかなスミレ君」
「も、もちろんです!!」
最後だけ照れくさそうに言う仕草は、アタシでも萌えた。
可愛い……。




