第9話 【ラビッツ編】もしかして実のパパってクロウ……
結局クロウベル。と言うアタシにとっては叔父さん? にも会えずフユーンの街でスミレ君が『後で連絡して置くよ』と、言ってくれた。
でもさ、『後って』『いつ!?』数件隣に住んでるんじゃないんだし、連絡ついた。って今日の夜にでも会えるわけがない。
それよりも今は出来る事を先にする。
あてにならないクロウベルと言う人物を探さなくてもママ本人を探せばいい。
フユーンの街に戻り馬車に乗り数日。
周りからの情報で誰も住んでない小屋がある。と言う事を知りそこに向かった。
高台の上にあり、周りには森と言うには小さいが木々が沢山。
事前に知らないと小屋がある。なんて全くもってわからないだろう。
「にしても、本当にいるのかしら?」
道のような場所を歩き小屋があり中に人の気配がする。
窓から覗くと何時ものメイド服姿でハンマーを握って何かを叩いてる。
その顔が90℃曲がりアタシの目線とがっつりあう。
「うぎゃああああああああああああああああああああああああ」
──
────
ママから貰ったお茶を飲み一息。
場所は小屋の中で小屋の中はトンカチやハンマー。大きなハサミみたいのや棚にはいろんな色の石が見えた。
「落ち着きましたか?」
「びゃい」
「ならよかったです」
ママは静かに言うと大きな溶鉱炉の前に座った。
え、いやこの状態で放置する?
「っていうか、ママ……これって鍛冶だよね?」
「鍛冶ですよ?」
「いとも簡単に……言うんだ」
「他に何と言えば? それよりもラビッツ……ママのおっぱいが恋しくなったのですか? 貴方もいい大人なのです、何時までもおっぱいを欲しがる年齢では。伴侶を見つけ……いえ。浮気者の男性は困ります。どうぞお代わりのお茶はいりますか?」
いつもにまして他人行儀だ。
ママってメイドに徹してると言うか、でも別に厳しかったわけじゃなくてちゃんと育ててくれてるし。
「いる」
「では」
溶鉱炉の上にあった鍋からお茶を入れてくれる。
さて……ママは溶鉱炉からでた金属をカンカンと叩く。
物凄い話しかけにくい空気。
メイドポケットから魔石を混ぜるとまたたたき出す。
綺麗な横顔。
初めて見る顔かもしれない。
「…………用があったんじゃないのですか?」
ハンマーで金属を叩きながら顔もあげずに話しかけてくる。
アタシはそれを椅子に座って見てるだけだ。
「え? まぁ……ママを探しに来た」
「それで?」
「それでって……」
なんだろう。
帰ろう。とは言いにくい。
「クロウベルおじさんの言葉じゃないから駄目って事!?」
「ぶっ!」
「あっ」
それまでカンカンカンとリズム良く叩いていた音が崩れ真っ赤な刀身が割れた。まっすぐに私の顔に飛んでくる、かわさないと眉間のど真ん中。
顔を強制的に動かすとアタシの髪数本を切り裂き真後ろに飛んで壁にぶち当たる。
「ママ!! っし、死ぬかと思った」
「…………ラビッツ。よ、よく避けました」
「本当に奇跡だよ!」
「その。クロウベル様にお会いに?」
ママが様を付けるだ何て、本当にすごい人なのかもしれない。
「会えなかった。この場所も息子の? スミレ君に教えてもらったし」
「そうでしたか……どうやってこの場所に来たのか考えていたのですが納得がいきました。スミレ様と会ったのですね」
「様付ける必要ないような」
「クロウベル様の息子です」
うーん。
頑固だ。
「で、でもさ。ママってパパと再婚したんでしょう? ええっとパパの息子は義理の息子になるわけだし様は要らないでしょ?」
「それとこれは別問題です。サンドベル様とご結婚をしましたが、クロウベル様やスゴウベル様の母親になった覚えはありません」
飛んだ真っ赤な刃を水につけママは作業を終えた。
どうやらもう叩かないらしい。
「そういう者なのかなぁ」
「ラビッツもその内にわかります」
「ってか、クロウベルおじさんって何者? ギルド長も何か隠してるし、ミアーシャおばさんも、ファースト学園の校長も教えてくれないし」
「…………一言で言えば『偽物』です」
ママの声が何時もよりするどく聞こえる。
怒っているような声、いや……褒めてる声色?
「偽物…………本人じゃない? え。それって影武者って事? 良くある王様が死んだ時に実は生きてましたって出るアレ?」
「いえ。クロウベル様はクロウベル様です。確かに記憶もクロウベル様でした」
まったくわからない。
「さて……気分を落ち着かせるために久々に剣を作ろうと思ってましたけど、中々うまく行きませんね」
「ママが剣を打つ。なんて知らなかったんだけど……家でもすればいいのに」
「………………」
「アンジュの剣って名前で売り出せばすぐ売れるよ。あっそういえばクロウベルさんってママの名前の剣を使ってるとか。スミレ君が教えてくれたけど、ママが作った剣って事?」
「………………」
おーい。
作り笑みをしたママの顔が怖い。
表情から感情が読めない。
「譲った時は直ぐに売る。とまで言っていたのに、本当に嘘吐きの子供ですね……あの剣は使い手によって成長します。クロウベル様が望むならいくらでも、強い武器があるでしょうに」
ブツブツと一人事だ。
小言なんだけど声は嬉しそうな?
「おーい。ママーアタシにもわかる話して欲しいな」
あっあれだ、まるで乙女顔だ。
こんな顔をするママはパパ以外の所で見たことが無い。
え!? じゃぁ。
「あ!!!」
「どうしました?」
「え、いや……ママの顔を見ていたらその」
「何か隠している顔ですね。今の私は気分が良いです、少しの悪い事であれば許しますよ」
こういう時は本当に正直に言うのが一番だ。
過去に同じ場面で、アタシがちょっとお金持ちの息子を怪我させた時に解決してくれた事もある。
「もしかしてアタシのパパって、クロウベルおじさんだったりする?」
「ぶほっ!?」
「あっ。その顔あたった!! おかしいと思ったんだよね。ほらサンドベルおじさんやミアーシャおばさんには会ったのにクロウベルさんの家や家族って会った事なかったしさ。そりゃパパとの結婚もおくれ……あれ。ママ……? お、怒ってるよね? ええっと《《少し》》の悪い事なら許してくれるって」
「《《少し》》では無いですね」
──
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お尻が痛い。
この年齢でお尻が腫れるまで叩かれるとは思ってもいなかった。
ちゃんと塗り薬もらったけど、まだ痛む。
鍛冶小屋の中でテキパキ仕事をするママを眺める、アタシのために夜食を作ってくれてるのだ。
ほら、ここからフユーンの街に戻ってさ、その間にママが逃げても困るし。
そう言ったら大人なんですし好きになさい。と滞在許可を出してくれた。
その大人の尻を普通叩く? 変な癖ついたらどうするのよ全く。
「本当、ママって何でも出来るよね」
「出来ませんよ……出来ていれば親友を2人を亡くす事など」
ママの親友でパパの前妻の2人の事、2人とも病気で亡くなった。と聞いてる。
「ママのせいじゃないんでしょ?」
「……どうでしょう。あの時に少しでもやましい気持ちが無かったのか? 言い切れない私もいます。ですからサンドベル様。スゴウベル様。クロウベル様……もう1人……いえ一生忠誠を誓い……と思ったのですが。ラビッツ明日には帰りなさい。私はもう少しここに居ます」
「迎えに来たのに帰れるわけないじゃーん。あっもう少しパンを大きく切って欲しいです」
ママは要望通りパンを大きく切ってアタシに渡してくれた。
狭い小屋の中で2人で食事をする。
「サンドベル様の事でしたら、別にもう怒ってませんよ。あの人は不器用ですが嘘は言いません。何か事情があるのでしょう。元々帰ろうと思ってましたし……用が終われば帰ります」
「だったら一緒に帰ればいいじゃん」
「いえ。クロウベル様の話を聞き、やはり1本の剣を作り上げます」
「じゃっ手伝うよ? あれよね。そこの溶鉱炉に石をどばーっといれて出て来た金属をカンカン叩いてじゅわーって水に入れて叩けば出来るんだよね?」
ママが黙ってしまった。
それ所か、こめかみを押さえている。
アタシを怒ろうか迷ってる時に良くするポーズ。結局怒らないけど。
でも、まちがってないしギルド専属の鍛冶師ダンドンさんが何時もこう言っている。
「鍛冶師ダントンさんの言葉ですね……貴方は何時も説明が大雑把です。再生の魔石を取りに行きます」
「え! ママが!?」
「他の誰が行くというのです?」
「え。でもママはネズミも殺せない……よ……ね……?」
「ラビッツ、何か勘違いしますね……普段は殺す必要がないからです。いいでしょう……ラビッツ、貴方の成長も気になります。手伝ってくれますよね?」
ママが鋭い目をし、アタシの背中がぞわっとした。
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後日。家には1本の片手剣が置かれる事になった。
鉄のようで鉄よりも軽い、装飾もなく見た目だけで言えば、そこらの鉄の剣よりも弱そう。でも実際は魔石率90%と言うとんでもない魔剣だ。
ママがクロウベルおじさんのために作った剣…………だったんだけど、送ったら断られギルド便で戻って来た。パパはその事に対してクロウベルおじさんに怒り出すし、ママは断られたのに笑顔だし。アタシも使う予定はないし、ママが言うには『剣はあるべき人に必ず行きます』っていうし。
結論! アタシの有給を返して欲しい。




