第10話 クウガの頭が吹きと……
「師匠。暇です」
リビングで珍しく座っていたメルナ。
本日のメルナの健康状態は良好、髪の色も銀髪で魔力も豊富、胸はしぼんでないしケツも丸みを帯びてる。
普段は寝そべってるから……とにかくそのメルナの前に行き組んである足をガバッと両手で広げて俺の思いのたけを伝えてみた。
なるほど、本日は。
「暑いからノーパンか──ぶっ!?」
頭が太ももで挟まれて極楽気分になった瞬間、脳天に物凄い痛みがくる。
きっと読んでいた分厚い本の角を俺の頭にどついたのだろう。
顔を固定している力がなくなり俺は床を転がり痛みを分散させる。
「な、なにすんでえ!!」
「ワラワの台詞じゃ……下着ぐらい履いとるなのじゃ!」
「え、いや見なかった物で」
「黒なのじゃ…………昔の呼び名で呼ぶから何かと思えば……そんなに暇ならアリシアについて行けばよかったじゃろ」
現在アリシアは留守である。
クィル。ミーティア。アリシア。と旧クウガパーティーの親睦会。と言う事で暫くはいない。
「旧クウガパーティー。しかも、クウガ本人も来ない女子会に俺が付いて行ったらどう思われます?」
「周りからは、とことん最低な男として思われるじゃろな。アリシア辺りは喜びそうなのじゃ」
「でしょ!! 俺もそれぐらいの常識は持ってます!!」
メルナは腕を組み黙ってしまった。
「普段の常識も持って欲しいなのじゃ…………まぁいいじゃろ。学生向けにテストを作ってあるのじゃが解いて──」
「しませんよ」
「……まぁロウはもう学生じゃないしの。おっさんじゃ」
一言多くない?
メルナだっておば……おばあちゃん? でも長寿族の基準で考えればまだまだピチピチか。
「風呂でも入って来たらどうじゃ?」
「入った後ですけど」
「……まぁロウの加齢臭はもう取れないのじゃ」
いや。無いからね!?
どっちかっていうとメルナの方で、甘い俺を狂わせる匂いしてるからね。
「ふむ、聖都にでも行ってアンジェリカ辺りと飯でも食ってくればいいじゃろ」
「何で俺がアンジェリカと! あの人、毎回飯たかるんですけど!!」
「ご意見番としての稼ぎしかないらしいからのう」
ページをめくる音。
少し間があってメルナが小さく咳払いをする。
「そ、そのベッドにはまだ早いと思うのじゃ……でもまぁ、ロウがその──」
「犬猫じゃないし年中さかりませんよ」
「…………………………そうじゃの。ロウはもう起ちがわるいなのじゃ」
「頑張れば。まだまだ元気ですけどね!?」
「頑張れば……ぷっ」
ぐぬぬぬぬ!!
これに関しては2人が悪い!!
いくら俺でも頑張らないと枯れる。
「で。何をしたいんじゃ何を」
「それを考えるのが師匠の役目なんでしょ!!」
「…………ライトニングフルバースト」
っ!?
ギリギリで回避すると壁にあたり魔力が散った。
そう、最近のメルナの魔法乱発により魔法に強い壁にしました。
これで多い日も安心である、 室内でも魔法が打ち放題。
メルナが舌打ちをして杖をしまい込む。
「本気で殺しに来ないで欲しい、仮に俺がこれで死んだら周りにどう説明するんです?」
「突然体が崩れた。と説明する気なのじゃ」
「あの……罪悪感って持ってます? 魔女だから無いとか」
「あるなのじゃ! ふう…………これでもロウ。貴様に愛情もあるのじゃ」
「あっそれは解るんで言わなくても」
メルナが杖で床をガンガンと叩き始める。
やーねー物に当たる人って。
「いやーいい暇つぶしになりました。ストレスも一気になくなりました」
「ワラワのほうがストレスで死にそうになったんじゃが!!」
「そう言われましても……わがままっすね」
「死ねなのじゃ」
本当に死んだら泣くくせに……いや、泣くよな?
笑いだしたらどうしよう。
愛情は感じるんだけど、メルナの愛情って薄いんだよね。
俺の事を拾って来た犬ぐらいの感覚じゃないのか? って思う時がある。
「いうて……ロウよ。ワラワは犬とまぐわいはしないなのじゃ。ちゃんと人として見ているのなのじゃ」
「考えを読まないでくれます? いやでもさ、メルナなら犬としても不思議じゃないんですけどおおおおおおおおおお!? あっぶね!! ノーモーションで魔法は危ない。危ない!! 危ない!!!」
「うっさいなのじゃ!!」
杖の構えを解くとどすっとソファーに座り込んだ。
滅茶苦茶つかれてそう、肩でも揉むか。
俺がメルナの背後に立つとメルナも何も言わない。
背中越しに山を見ながら肩を揉む。
「はぁ……まったく……何でこんなドアホウの事を……」
「まぁまぁ」
「ドアホウが言う言葉じゃないのじゃ。ワラワに構わなくても暇つぶしなら沢山いるじゃろ。元聖王や、あの女に、ノラやサクラ達の所にでも行けばいいじゃろうに」
「メルナが1人になりますし」
何て優しんだ俺は。
「要らぬお世話なのじゃ……と、いっても1000年も生きるとやりたい事もほぼないしの。食う、寝る、風呂。読書ぐらいなのじゃ」
「自堕落待ったなしですね」
「登山や水泳、スキーなどしたいと思うのじゃ?」
「思いませんね」
俺もメルナもインドアタイプだ。
引きこもり体質、面倒な事はしたくない、でも暇は嫌だ。
肩を揉む手を辞めてメルナの首の下で腕を組んでみた、メルナの顔ガクイっと俺の方向いてまっすぐに見つめてくる。
俺もゆっくりと顔を下げてメルナの口にキスを────。
「あのー、僕は一応はノックしましたよ」
クウガの声が聞こえた。
俺もメルナもキスを続行、しばらく唇と舌を重ねた後顔を離す。
「よ。クウガ」
「ふむ。茶でもいれようかの……いや、小僧は珈琲じゃったな」
「独身にはつらい場面ですかね。お構いなく」
構うわ! メルナが続行したから続行したけど俺は内心バクバクしてたぞ!!
何とか平常心のふりをして乗り切った。
メルナは俺にはカップでだし、クウガにはどんぶりに珈琲を入れて来た。
「どんぶりです……」
「アリシアがおらんと、客用のカップがどこにあるのか……なに腹に入れば同じなんじゃ」
クウガが俺に助けを求める眼。
あきらめろん。
ってかもしかしてメルナも平気なふりして動揺してた?
「と、言うか。アリシアなら居ないぞ?」
「え。ああ……知ってますよ。ミーティアやクィルと旅行なんですよね。これムーンから頼まれたリボルバーと言う魔銃です。クロウベルおじさまに届けて。と。近くを寄ったので」
ああ。それか……鍛冶師メーリスの魔銃。基本は軍隊式の銃……マスケット銃タイプなんだけど、メーリスやムーンが持つのは小型タイプだ。それを見た俺は特別に作って。と頼んだのだ。
やっぱリボルバー式だよな。
攻撃力うんぬんよりもカッコイイ。
弾は魔石を加工した魔弾、中に魔力を詰めて打てる。
もちろん属性付の魔弾にしたっていい。
回転する弾倉をくるっと高速で回して、クウガに向けて引き金を引く。
ドスン。と音がして……クウガの肩が、頭が吹き飛んだ。
「ぱーんっ………………は?」
「…………なっ!? ロウ!!」
いやだって。弾が込めてあるって知らないじゃん!!
「クウガ校長。今の爆発音は? いえ次の予定が詰まっております。何時までもクロウベル様のご自宅にお邪魔しては迷惑にな…………なっ!?」
玄関からクローディア副校長の声が聞こえ、それが途中で止まった。




