第24話 普通に考えれば実の娘に使えだなんて、そりゃそうっすよね
「すまないな。また寝ていたようだ」
「い、いえ! 馬車の旅ですもんね眠くなります!! よ……」
馬車の中でリーカ会長がそう言うので何とか声を絞り出す。
王都クラックまではもう半日で着きそうな距離。
リーカ会長は自らの衣服をチェックし始めた、おかしな所は無いのを確認し、オレの顔を見る。
「そういう君は目元が凄いな。くまが出来てるぞ? 寝ているのか? いや……寝ているな。私が起きると君は寝ているし……」
「寝てます!!」
「そうか……では……先に寝ている私を見てるわけか」
「見、見てません!!」
「ふむ。そうだよな私には女性としての魅力が少ない」
そんな事はない!
そりゃ保険医のセラーナ先生のようなママ的要素はない。
でも自覚して欲しい、8年連続生徒会長。
生徒会長を降りたい。と言っても辞めさせてもらえないぐらいに男女ともに人気が高いのだ。そんなリーカ会長と何も無くても同室……学園に帰ったら殺されそう。
「そこはツッコンでくれると嬉しい話で」
「え、ああっ!! 魅力が多くて困っていたんです……ってかオレ以外の候補は無かったんですか?」
「スミレ君とサクラ君は私から見て手のかかる弟や妹みたいな物だからね安心感もある。さてクラックについたら起こしてもいい、眠くなったら寝るといい」
胸が痛い。
別に病気じゃないけど胸が痛い。
例の催眠アプリを見つけてから数日、実はほぼ寝れてない。
色々混乱するので親父式脳内メモを整理する。
解った事。
対象者に催眠アプリを見てもそれを不思議に思わない。
これは初日でわかった事。
次に対象者を変更すると最初にかかっている人間は正気に戻る事。
可愛い給仕さんに見せた時に、会長にかかっている催眠が切れたのだ。
突然に戦闘態勢に入り周りを驚かせた。
【で】
考えた結果答えは出ました。
その答えは!! さすがのクウガおじさんも『こんなに優しいリーカ会長』に使え! ってのは無いな。と。
何時ものオレの早とちりである。
ちょっと考えればわかる事で……クウガおじさんはリーカ会長の父親だよ。
『娘に催眠アプリを使ってエッチな事をしてね』ってよくよく考えれば無い。
危なく、クウガおじさんに殺される所だった。
親父曰く『クウガは俺の何倍も強いよ』って、オレ自身親父にも勝てないのにクウガおじさんに勝てるわけがない。
以前その事をクウガおじさんに伝えた事がある。
そうするとクウガおじさんはオレに『君はクロウベルさんにそっくりだよ』って。
意味が解らない。
親父は親父。オレはオレだ。
全然違うからね。
周りの女子クラスメイト『スミレ君のお父様ってミステリアス過ぎて何者なの?』って聞いて来るけど、ちょっと強いだけの普通のエロ親父だよ。
それを伝えると『じゃぁスミレ君と同じだねー』って……親父とオレが似てるわけがない!!
そもそもさぁオレとサクラを学園に預けるって親からしてどういうわけ?
同室のフレンスなんて『君の家は愛があふれてるだろ』と言い争いになった事あるけど、愛はあるのか? サクラは確実に愛されているのをわかるんだけど。
「とにかく……勘違いして危ない所だった」
「何が危ないんだい?」
「い、いえ!! 《《その、選択の失敗する》》とオレの体が危ないなって」
「ふ。やっぱり君は師とそっくりだ。師も良く『選択』と言う言葉を使って物事を整理する」
また親父の話。
しょうがない。
「リーカ会長。これを見てください」
「また変な板の話かい? 見たよ」
「ぐっすり寝ていてください」
「今起きたばっか……り……で……ね…………」
寝た。
これで馬車の中は吐息だけが聞こえる静かな世界に。
こうなると、オレの役割は今度は寝ちゃ駄目なのだ……だって問題が起きた時にリーカ会長を起こす人がいないから。
これも数日の実験の結果で、一度寝ると催眠アプリで強制的に起こさないと何が起きても起きない。
「さらにさ……オレの役割ってリーカ会長が王都で自由に動けるための盾というか……何か妨害が来るかもしれないって言うし。余計に寝れないです」
ハーレム計画所じゃないってか。
催眠アプリの画面を見ながらため息がでる。
「じゃぁ誰に使えばいいんだよ!!」
思わず叫ぶと馬車が揺れ動いた。
うん。静かにしよう……御者の人に叫んだのを聞かれた。
──
────
「うーん。良く寝た……すまないな君にばかり見張りを頼んで」
「大丈夫です」
周りが二重に見えるぐらいはまだ大丈夫。
っ!? 突然体を引っ張られた。
リーカ会長が俺を真正面からハグしてくれた。
会長の肩に俺のアゴが乗るほどのつよいハグ、慌てて離れると真面目な顔になっている。
「これはリーカ嬢、遠い所をはるばる用こそ」
男性の声が聞こえ俺が離れると、高身長で白いタキシードを着た青年が立っていた。髪の色は透き通る赤……赤色の髪は貴族に多い。とも。
「やぁアズヴァール君。いづぞやの闘技大会以来だね」
「あの時は貴方の美しさに見とれ負けてしまいました」
「はっはっは。じゃぁ次は勝と?」
「いえ。本日も見とれ負けるでしょう」
オレは2人の空間に入って行けず、首を交互に動かす。
あの……オレの事見えてるよね? あっやっとこっちを向いた。
「この方は……? ご友人……でしょうか? 失礼、人は選ばれたほうがいいかと。先ほどの抱き合い。人に見られて悪い噂を流されますよ」
「はっはっは。彼は恋人のスミレ君だ」
アズヴァールがスーツのジャケットを突然地面に落とした。
その落としたのを目で追うと、顔面に拳が飛んできた。
左手でガードして腰を落としながら後ろに下がる。
会長の嬉しそうな口笛が聞こえた。
殴って来たアズヴァ―ルは何事もなかったかのようにジャケットを拾うとオレに微笑みかけた。
「すまない。ジャケットを拾おうとして足がもつれたようだ」
「え。今のってこうげ……」
「足がもつれてしまって。当たらなくて良かった……さて。リーカ嬢、話ではクウガ様はいらっしゃらないと。話は伝わって無いかな?」
「さぁ何の事かな……もしかして。これは妄想の話で言うんだが大貴族であるアズヴァ―ル君がこの私を婚約者にしたい。と言う話だろ? 私の誕生会で申し込む予定だったとか。しかし残念だ……御覧の通りスミレ君という恋人がいてね」
オレは首を交互に動かす。
何かとてつもない事に巻き込まれているような。
「あの…………リーカ会長っちょ!? え」
リーカ会長が突然にハグをしてきた。
耳元もささやく声。
「まさか、師のように『面倒だから帰る』とか言わないだろうね……スミレ君」
「い、言いません!」
言いたかった。




