第17話【超未来のこぼれ話】クロウベルを過去に見送った後のノラさんの話
【本編506話の後日談】
過去から来たクロー兄さんが装置の中に消えていった。
残ったのは数多くの研究員と謎の装置。
他には子供姿のナイ大統領。
それとボクと思いっきり目線が合う魔力を使った、お尻と胸が大きい研究員、慌ててフードをかぶるも。
「メル姉さん……?」
「断じて違うのじゃ!!」
涙が出た。
気づけばメル姉さんに抱き着き、優しいメル姉さんはボクの頭を撫でててくれる。
「え、いや……ご、ごめんなさい」
泣き虫なのはかわらないのう。と、言うとメル姉さんのキリっとした声が現場に響く。ボクはメル姉さんの前で泣いた記憶は無いんだけど。
「はぁ……おい、そこのちんまい役に立たない大統領よ。この子を連れて行くのじゃ」
「ちんまいって、しょうがないだろ。魔力がおぎな──話を聞かない魔女だな! これでも思いっきり役に立っているんだよ!?」
ナイ大統領が反論しようとしてるけど、メル姉さんはボクの手を引っ張って歩く。軍用車の荷台にボクを放り込むと、メル姉さんは助手席に。
運転手の男性が何か頷いてすぐにクオンの街まで戻ってくれた。
で、普段入った事がない物凄い高そうなレストラン。
席に座り連れて来てくれたメル姉さんは改めてボクを見てフードを外した。
「長い耳……だ」
「んあ? 魔力が少なくての、この歳なのじゃ。別にもう隠す事もないじゃろ。と……ワラワを知ってる人間ももう……なのじゃ」
「ボクが知ってるよ。やっぱりメル姉さんなんだね」
「ワラワはなのじゃ。ノラのほうは生まれ変わり……じゃな。本来の魂が浸食されるように見えるのじゃ」
「浸食……」
「うむ。本来あるべき記憶や人格が混ざるから、封印するのがいいのじゃが……まっいいじゃろ」
少しビクっとなる。
この半年、過去からきたクロー兄さんとの夢のような暮らしだったのが消える。
それを考えただけでぞっとしたからだ。
「まっそんな緊張しなくてもしないのじゃ……失敗したら廃人になるしの……ワラワも面倒でやりたくはないのじゃ」
「そう……なんだ」
「そうなのじゃ。どこかの帝王に掛けたはいいのじゃが、ぱっぱらぱーになっての。報復が面倒で200年ぐらい結界の自宅から出れなかったしの」
うん。怖いから追及は辞めて置こう。
そういえば昔の歴史で農民になった皇帝って文献があったような。
暴虐を繰り返した皇帝が一夜にして農民になる話、そんな話はあり得ない。と思っていたけど……。
「でも、あのナイさんが生きていたんだ……そうだよね、メル姉さんなら生きていてもおかしくはない」
「ガタは来てるしの、あと数百年もすれば死ぬじゃろ」
「やだ」
「生物である以上死は必ず来るなのじゃ……ドアホウもいないしの」
「え!? クロー兄さんって死ぬの!?」
「…………死ぬじゃろ」
当たり前だろ。と、言う顔をされてしまった。
そ、そうか。
絶対に死なないと思っていた……死ぬんだ。
「まっアリシアを看取ってじゃしドアホウにしては及第点じゃろ。さて……ノラよ。もう会う事もないじゃろ……過去に囚われ過ぎるのも」
「あっ待って! メル姉さん……その。ボクはクロー兄さんとっ」
「ふむ、男女の仲じゃろ? …………気にするななのじゃ」
メル姉さんが席を立とうとする、ボクの前には豪華な料理……追いかけるにも料理作ってくれた人に申し訳ない。後、美味しそう。
「メル姉さん!!」
「………………『刻の横笛』なのじゃ。これを拭けば、まぁ暇じゃったら助けに来るのじゃ」
テーブルに5センチぐらいの笛を置くとそのまま出口から出て行った。
…………と、思ったんだけど出入口で何かもめてる。
「なんじゃ! これが使えないってお金じゃぞ!!」
「ですから、博物館からでるような古銭は当店では……」
ああ。そうだね。
メル姉さんきっと古銭で払おうとしたんだね。
席を立ってメル姉さんの所にいくと案の定、博物館クラスの古銭だ。
「ノラ……この店員がこれじゃダメ。と……そのお金を貸してくれなのじゃ」
「メル姉さんらしいよ。うん十いちでいいかな?」
「ノラ!?」
──
────
「よぅぼっちゃん」
「………………何の様でしょうか先輩。あと私はクローベルと言う名前があります」
私の事をぼっちゃん。と呼んで来るのは宇宙飛行士サラ先輩。
「知ってるよ。ノラ財閥の1人息子……一生遊べる金がある癖に死ぬかもしれない宇宙飛行士になった……って有名なぼっちゃん。一人称は『私』ねぇ男の子でしょー? 付いてるんだよね」
低俗な。
毎日、毎日私をからかうためによくもまぁポンポンと。
サラ先輩から離れるために宇宙飛行士の先発に受かったのに、なんでサラ先輩のほうが成績が上なのか。
「母が財閥でも私は違いますからね、それよりも……選抜隊は私と先輩だけなんです。足を引っ張らないでください、迷惑ですので」
ノラ財閥。
母が一代で築き上げた……数々の失われた魔石鉱山跡地を発見し、旧時代の遺跡も古文書から推理。この私を育児しながらそれをやり退けた。
この宇宙研究のスポンサーにも抜擢されてる。
「はぁ!? こんな美人と一緒なのに迷惑とか!!」
本当に何を言っているんだ、この先輩は……私と入隊したのが一週間しか違わないのにずっと先輩面して毎回毎回。
先日の休みなんて、なぜか私の実家にまでついて来た。
母に説明するのに凄い大変だった……。
「それより、通信来てますよ」
「っと……はいはい、これだからお坊ちゃんは……『こちら小型宇宙船コメット。サラ一等隊員、相棒のぼっちゃんは赤い顔して準備完了。いやーん襲われちゃう』どうぞ」
っ!? 何言うんだこの人。
あちこちの国の人が聞いてるって言うのに。
私の方にも通信ランプが来る。
スイッチを赤から緑に切り替えた。
無線での声がコックピットに繋がり音声がはっきりと聞こえた。
『こちら指令室。クローベル隊員……君の相棒が不真面目なせいで申し訳ない作戦を復唱せよ』
「こちらクローベル。相棒のアバズレと『軌道衛星、ナユタに向け魔石調査へ』の準備完了」
「はぁ!? 言っときますけど!! これでも新品です、下着だってこの日のため──むぐぐぐぐ」
サラ隊員が横からうるさい。
通信中なので口を手で押さえた。
『くっくっく……指令室了解。カウントダウンを開始する通信を切る』
「了解」
スイッチをオフにするとサラ先輩がもごもご……ああ、口から手を離してなかったか。
「ぷっはっ! 死ぬかと思った……酷くない!? アバズレって!!」
「でしたら、ぼっちゃんも酷いです。ほら席についてください最低限なスペースしかないんですから」
「まったく……これからぼっちゃんは」
文句を言う前に手を動かして……動かしてるから腹が立つ。
「ぼっちゃん。そこのスイッチが違う、緑から青。そうすると横の黄色も色変わるよ……母上にいい所見せたいんでしょ?」
「っ……一言余計です」




