だいいちむらびとはっけん
私は悲しみつつも仮眠が取れそうな場所を探していた。
その時ふと、そこら中に生えている木々を見つめてこう思った。
この木に登って周りを見ればなんかわかるんじゃない?と。
そして私は一番大きそうな木のてっぺんにいる。
「おぉ~!私、逆に来てる!村みたいなのが見える!」
周りを見渡し、木々のない場所を少し遠くに見つけ、私は嬉しいやら悲しいやらである。
当てずっぽうで歩いた結果、村らしきものがある場所とは反対方向へ歩いていたみたいだ。
簡単にいえば、村、ダンジョン、私である。
村に行くにはダンジョンの方に戻るしかないのだ。幸いにも私は採取する事を楽しんでいたので距離はそこまで遠くない。
それでも危なかった、私が目指してた方を見てみても何も見えないのだ。
森が延々と続いている。
大変な事になる前に気づけて良かったと心から安堵した。
「えっと、あそこまでいくには…うーん。ちょっと仮眠は必要かも?疲れてるし」
ここから村がありそうな場所までは寄り道しないで歩いたとしても多分数時間はかかると予想し、仮眠をとる方がいいと結論づけた。
そして木から降りようとした時、ふと何かが目の端に見えた気がして再度見る。
「あれ?なんか走ってる?追われて…る?ん?」
真っ暗な森の中、小さな光がチラチラ、チラチラと木々の隙間から見えている。
それは木々を避けるようにクネクネと進み、止まらない。
それを見た私は、あの光の主は何かに追われてるか逃げてるのだろうと仮定した。
その光は段々と近づいてきていて、多分数分もしないうちにここの下を通るだろう。
少し興味の湧いた私は、この木の一番下の枝まで降りて座って待ってみる事に。
一番下の枝といってもアパートの二階ほどの高さなので安心だ。
ここから下を見ていれば何が起きてるのかをみることができるだろうと予想して。
耳を澄ましてじっと待つ事数分後…
やっぱり何かが走って近づいてくる音が聞こえてきた。
「お、きたきた。何がきた?」
私は少しワクワクしながらそれがやってくるのを待つのだった。
◇
「はあっ…はあっ…」
一人の少年が森の中を走る。
走りながら何度も何度も助けてくれと繰り返し叫んでいる。
「だ、だれか…だれか…」
けれどこの森に人はいない。
何故ならばこの森は、獣人国との境目なのだから。
少年は何度も叫ぶが、頭では誰も来ないと理解していた。
この森は獣人からも人間からも怖がられる場所だから。
「な、なんで…ぼくばっか…」
口減しの為に捨てられた少年の目からは涙が溢れて止まらない。
兄達でもなく弟達でもなく何故僕なんだと悔しくなる。
けれどそれも当たり前の事。
「あっ…」
周りが真っ暗なうえに涙が滲んだ為、かなり足元が見えにくくなってしまった少年は木の根に足を取られて転けてしまった。
少年は魔法も使えないし体力もない。
兄達のように家の為に魔物を狩ることも出来ない、弟達の様に連携して薬草を取りつつ魔物から逃げ切る事も出来ない。
所謂出来損ないなのだ。
「…っ!いっ…」
上手な受け身も取ることができずに少年は地面へと叩きつけられ、その勢いのまま転がってしまう。
「い、やだ…」
立ち上がる体力はもうなかった。
ずっと走り回っていたのだ。
気力だけでどうにかなるような物ではない。
もう、潮時なのだ。
「たすけ…」
少年は地面に這いつくばったままの姿勢で助けを願う。
誰もいないとわかっていながらも。
その時何か足音のようなものが聞こえ、少年はそちらに目を向けた。
助けが来たのかもしれないという、少年の淡い願いは消え去った。
神に祈る様な気持ちで願い見たその音がした場所。
そこには、少年をずっと追いかけてきていたクマの魔物が居た。
魔物は無様に転がっている少年を見て笑みを浮かべた。




