茶餐廳
茶餐廳で色んなものに出会った話
珍しく朝早くに目が覚めたんだよね。
それなら、早朝の香港を散歩するのもいいかなって、中環(セントラル)へ来たんだけど……。
「え?」
ここって。
坂道を歩いていて、色鮮やかなフルーツに気を取られてたけど……。
シルバーの看板に赤色の文字。
よく見ると、紅茶、珈琲の文字も。
朝ご飯まだだし、入ってみるか。
って決めたはいいけど、これ、ローカルすぎないか?
昔からここにあるんだろう。
もう入口すら、周りの景色に埋もれてるような茶餐廳。
ここから入っていっていいんだよな?
キョロキョロしながら中へ入っていく。
思ったより広い店内は活気があって、真ん中の丸テーブル以外はほとんど埋まっていた。
指で『一人』とすると、おばちゃんが空いてるテーブルを指差した。
黄色い丸テーブルに、黄色い丸椅子。
必要最低限、座って食事できればいいだろ?って感じが、なんか落ち着く。
目の前に立てかけてあるメニューを手に取り眺めていると、思い出した。
そういえば、この店って菠蘿油と奶茶(香港式ミルクティー)が有名じゃなかったか?
それにするか。
でも、他も気になるよな……。
よし、決めた。
「ンゴイ〜(唔該)」
え?
いつの間にか、隣には金髪の欧米人らしいお姉さん、向かいには地元の人らしい二人組が座っていた。
「これとこれ」
メニューを指さして注文を済ませた。
程なく、菠蘿油と奶茶が目の前に置かれた。
いつも思うけど、おばちゃんたちの置き方、ドンドンドン!って感じなんだよね。
勢いがある。
でも、これすら香港って感じで、なんか好きなんだよな。
少し小ぶりな菠蘿油はきれいなきつね色で、奶茶は……。
あっ、TW(捷榮)のカップなんだ。
初めて見たかも。
いつも見る牛の絵柄じゃない。
とりあえず……砂糖を……。
ドバドバ。
香港の奶茶って、紅茶の渋みもしっかりあるから、つい砂糖入れすぎちゃうんだよね。
スプーンでかき混ぜて一口。
もう少しか?
ドンドン。
おばちゃんが勢いよく、隣のお姉さんの前に料理を置いていく。
西多士(フレンチトースト)とアイスレモンティーか。
俺もそれにするか迷ったんだよな。
やっぱり美味しそうだ。
でも、今日はこっちの気分だったんだよ。
砂糖を追加した奶茶を一口。
うん、ちょうどいい。
さて、いただきます。
両手を合わせ、心の中でひと言呟いてから菠蘿油にかぶりつく。
カリッとザクッの間ぐらいの、ちょうどいい食感。
パンの温かさで、少し柔らかくなったバター。
最高!
これだよ!
そして、すかさず奶茶を一口。
この組み合わせ、考えた人すごいよな。
あっという間に菠蘿油が胃におさまっていく。
「ふぅ〜」
もう一個ぐらい食べれるな。
そんなことを考えてた時だった。
おばちゃんが来たと思ったら、テーブルの中央にあるボトルを手に取り、ドン!とお姉さんの前に置いた。
うん?
見慣れたガラス容器に赤色のキャップ。
あっ、シロップか。
え?お姉さん、シロップかけてなかったんだ。
皿の上には、もう一口しか残ってない。
「……はぁ〜」
隣から大きな溜息が聞こえてきた。
その直後。
テーブルに肘をつき、片手でこめかみを抑えると、もう片方の手でシロップを――。
西多士にドバドバ。
さらに、アイスレモンティーにもドバドバ。
え?
思わずぽかんとしてしまった。
その後、お姉さんは残りを素早く完食して、何事もなかったかのように颯爽と店を出ていった。
アイスレモンティーにシロップ。
案外、美味しいかもな。
今度試してみるか。
俺も残りの奶茶を飲み干し、店を後にした。
ばね指治療中のため、ゆるっと更新になります。
続きも気ままに書いていきますので、ブクマやリアクションなどいただけると、やる気が出て更新が早まる…かもしれません♪




