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護衛士ハルトとふたりの姫様  作者: サイトウ純蒼
第七章「紡がれる二るの想い・前編」
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96.妖艶なヒトナキモノ

「にゃむにゃむ、にゃむ……、う~ん……」


旅の夜。眠る一同。

野営を張ったハルト達は、静かな森の中でその夜を過ごしていた。


「喉、乾いたな……」


ひとり目覚めたハルトは、寝惚けまなこのまま近くにある川へと向かった。静かな森。満天の星空。ハルトは川までやって来るとその澄んだ水を一口飲んだ。


(あれ、何だか甘い水だなあ……)


ハルトはまだはっきりとしない頭で何となくそう感じた。気のせいかなと思っていると、段々眠くなってきてそのまま倒れるように寝込んだ。



「ん? こんなとこで寝ちゃったんかな」


朝方、川の近くで目覚めたハルトは、ふらふらと野営地へ歩いて戻り再び眠りについた。




翌日、先へ進むハルト達。その前に魔物が現れる。

戦闘態勢を取る一行。剣を構えるクレア達と共に、ハルトが召喚を行う。


「我が名はハルト。その名に契りし盟約により汝を呼ばん!! 召喚【メタルゴーレム】!!」



「……あれ?」


いつもはハルトの横に現れる魔法陣からドーンと出て来る【ヒトナキモノ】が出ない。


カンカンカン!!


「ちょ、ちょっと、ハルト!! 何やってるのよ!!」


魔物と戦うクレアがハルトに言う。


「いや、出ないんだ。テッちゃんが……」


ハルトが汗を出しながら答える。クレアが叫ぶ。


「ふざけてないで、早く!!」



再び召喚を行うハルト。しかしやはり何も出ない。焦りながら何度も詠唱を唱えていると、不意にハルトの頭にある言葉が流れた。



――サキュバス


「!? ……召喚! 【サキュバス】!!!」


すると今度はハルトの横に魔法陣が現れ、そこから妖艶な大人のサキュバスが出現した。



「えっ、ええええっーーー!?」


驚くハルト。



「だ、誰、それ!?」


それを見たクレアとルルが大声で言う。ハルトが驚いた顔で答える。


「い、いや、知らない。誰だよ、お前……?」


サキュバスは甘い口調でハルトに言った。


「あら、イヤだわ。昨晩私にあんなことしておいて、酷いわ」


ハルトにウィンクを送りながら話すサキュバス。

みるみる顔を赤くし妄想が膨らむクレア。ムッとするルル。ハルトが慌てて言う。


「そ、そんなことより早くあいつを倒せ!」


そう指示を出したハルトにサキュバスが答える。


「だ〜め、私は肉弾戦は無理よ。夜の肉弾戦なら……、うふふふっ」



「ハ、ハ、ハルドおおおお!!!!」


顔を真っ赤にしたクレアが、剣を振り上げて()()()に向かって斬りかかる。


「うわっ! 何やってんだお前!!! 敵は向こうだ!!!」


クレアが頭から湯気を出して叫ぶ。


「う、うるさい!! 不純物め!! 叩き斬ってやる!!!!」


仕方なしにハルトは、シールドでクレアからの攻撃を防ぎ、そして自身は剣を抜き魔物に向かって行った。





「……で、ちょっと詳しく話を聞きたいのだが」


魔物達を退治したハルトが足を組んでふわふわと浮くサキュバスに尋ねる。

醸し出される妖艶な大人の女性の雰囲気。均整のとれた美しい肢体。朝だと言うのに発せられる色香が凄い。


「く、詳しくって、あなたが契約したんでしょ!!!」


まだ顔を赤くして大声で言うクレア。ハルトが答える。


「いや、だから全然覚えてないんだよ。本当に……」


「あら、あんなに激しかったのに覚えてないの~、悲しいわ」


サキュバスはハルトに近付くと、その顔を指でつつつと滑らせて言った。


「必要以上にハルトに触らないこと」


ルルがサキュバスの手を軽く叩く。


「あ~ら、これは失礼。怖いこと」


妖艶な笑顔を皆に見せるサキュバス。ハルトが思い出したように言う。



「あ、もしかして昨晩水を飲みに行った時に……」


「そうよ」


サキュバスが笑みを浮かべて言う。


「そうか。川の水を飲んだら急に眠くなって朝方までそこで寝てたんだが、あれはお前の仕業か」


サキュバスが顔を赤らめて言う。


「仕業だなんて……、合意のことでしょ?」


「ぬぬぬっ、不潔な奴め……」


クレアが火を吐きそうな声でつぶやく。


「ちょっと魔法を漂わせてね。私と契約して貰っちゃった」


サキュバスはハルトの周りをふわふわ飛びながら言う。


「おいおい、テッちゃん、メタルゴーレムはどうなったんだ?」


ハルトがサキュバスに尋ねる。


「知らない」


「お前なあ……」


ハルトが溜息をついて言う。サキュバスが【ヒトナキモノ】になった以上、メタルゴーレムは解約されたようだ。別れの挨拶もできなかったことが心残りである。サキュバスが言う。


「と言うことで、よろしくね。ハルト」


そう言ってハルトにべったりくっつくサキュバス。クレアが慌てて言う。


「ちょ、ちょっと待った。どうしてそんなにくっつくの!?」


サキュバスが答える。


「あら、どうしてって。私はもう()のものだからよ」


クレアが再び顔を赤くして言う。


「どどどどど、どういう意味よ!!」


「うふふ、そう言う意味よ」


と言ってサキュバスはクレアの胸を見つめる。視線に気付くクレア。サキュバスが言う。


「私の勝ちかしら」


クレアはサキュバスを見つめる。

豊満なバスト、引き締まった腰、そしてすらりと伸びた長い脚。服もその魅力を十分に引き出すかのように胸元の露出が強調されて色っぽい。無機質な軽鎧を着た自分とは比べ物にすらならない。


「そんなことは、そんなことは、ない…………、と思う……」


妖艶な笑みを浮かべてこちらを見るサキュバスを見てクレアのトーンが下がる。


バン!


ハルトに触れていたサキュバスの手を再びルルが叩く。


「言ったでしょ。必要が無ければ触れる必要はない」


手をくねくね振りながらサキュバスが言う。


「あらあら、怖いこと。まあいいわ。じゃあね」


と言って召喚界に戻るサキュバス。




(肉弾戦ゼロか……)


ハルトは戦闘不向きなサキュバスでどう戦おうかひとり考え込んでいた。クレアが尋ねる。


「ハルト、あのサキュバスのことなんだけど……」


ハルトが答える。


「ああ、()()()どうしよう……」


バン!!!


「痛ってええ!!! 何するんだよ!!!!」


「ににに、肉弾戦って、あなたやっぱりド変態ね!! そんな事ばっかり考えてるんでしょ!!!」


「はっ!?」


「ハルトのえっち」


「ルルまで何を言って……、たのむよお……」


ハルトはふたりの誤解を解く為に、その日一日分のエネルギーと時間を費やした。

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