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護衛士ハルトとふたりの姫様  作者: サイトウ純蒼
第六章「戦場に響く少女の歌編」
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88.現れた刺客

「えっ! そ、外!? そ、そんな、外でなんて私、恥ずかしい……」


ゆでダコのように真っ赤になり両手を顔に当てるクレア。それを見たルルがクレアに言う。


「違うわよ、クレア。敵、敵襲よ!」


その言葉に初めて我に返るクレア。急ぎ窓の外を確認。


「な、何あいつら!?」


ハルトが小声で答える。


「分からないが、あまり嬉しい客じゃないな。行くぞ」


ハルトは準備を整えると階段を降り、邸宅の外へ出た。


「何者だ! お前ら!!」


ハルトに続いてルルとクレアも外に出る。そして少し遅れて武装したランベルと守備兵もやって来る。



「何って、こんな時間、こんな格好でお茶でも飲みに来たと思いますか」


男達の中心に立っていた者が答える。ハルトが言う。


「ああ、そうだな。おっさんとお茶飲んでも美味しくねえからな」


「言うねえ、クソガキ」


「グルルウウルウウウウ……」


男の後ろではこちらに牙を剥く魔物達が見える。それに気付いたランベルが言う。


「ああ、あれは家を襲撃した魔物!!!」


ハルトは視線を外さないまま頷いて言う。


「そうだろうな。また来ると思ってたよ。さあ、こいつら捕まえて吐いて貰うか!!」



ハルトは手を前に出し召喚の詠唱を始める。


「我が名はハルト。その名に契りし盟約により汝を呼ばん!! 召喚【メタルゴーレム】!!」


ハルトが詠唱を終えると空中に魔法陣が現れ、その中から銀色に光るメタルゴーレムが現れる。


ドーン!!


メタルゴーレムは地面に勢いよく降り立つ。メタリックの美しいボディが月明かりを反射して光る。ハルトが言う。


「よし、行くぞ! テッちゃん!!」


メタルゴーレムは少しだけ後ろを向いてハルトに言う。


「……テッちゃん?」


ハルトが頷いて答える。


「ああ、メタルゴーレムとか名前が長いんで、鉄みたいに硬いからテッちゃんにした」


メタルゴーレムはハルトの顔を黙って見つめる。


「……イイ名だ」


「そうか気に入ってくれたか、じゃあ、行くぞ!!」


「ウム……」


そこからはハルト達の一方的な攻撃が始まった。見たこともないメタルゴーレムに驚き苦戦する襲撃者や魔物達。特に後半はテッちゃんの独壇場となり襲撃者達は簡単に白旗を上げた。

縛り上げた襲撃者や魔物達を見てランベルが言う。



「ハルトさん! こいつ、調教師《テイマー》です!!」


それに気付いたハルトが答える。


「テイマーって、猛獣や魔物を手懐ける奴の事か?」


「そうです! だからこの魔物達は彼に調教されていたのかと……!?」


そこまで言ったランベルとハルトが目を合わせる。


「おい、と言うことは、今回の魔物襲撃にやっぱりベラス団は関係ないんじゃないか?」


「そ、そうですね……、だとすると父は一体何をしに行かされたのか……」


そう話しているとルルがハルトのところにやって来てある短剣を見せた。



「ねえ、ハルト。これ奴らが持っていた短剣だけど、ここの柄にある紋章って……」


「それは、スタン王国の!!!」


その紋章を見たランベルが大声で叫ぶ。ハルトが言う。


「ああ、今朝ランフォード宛てに来ていた手紙にも同じ紋章があった。間違いない」


「どうしますか、ハルトさん……」


ランベルが少し怯えた声でハルトに言った。ハルトが答える。


「決まってるだろ。行くぜ、俺達も。お前のオヤジのところへ!!」


「は、はい!!!」


ランベルも大きく頷きながら言った。



危険性が低くなったランフォード邸の留守を守備兵達に任せて、ハルトはランベルらと共にランフォードが向かったベラス団の拠点へ向かった。

まだ夜も明けぬ深夜であったが、ランベルの的確な道案内のおかげで迷うことなく歩くことができた。しかしそんなハルト達の前にひとりの長剣を持った男は立ちはだかる。



「よお、久しぶりだな。ハルト」


その声。その大きな剣。そしてその覇気。

ハルトの間に立ちはだかったのは、決して忘れることのできない相手であった。



「ゼノ……、何で、お前がここに?」


ゼノは大きな剣をいつもの様に肩に担ぎ余裕の表情で答える。


「何って、これがお茶でも飲みに来たように見えるか?」


「流行ってるのか、それ。お前らの間で」


ゼノはちょっと首を傾げて言う。


「言っている意味が分からんが、しばらく俺に付き合って貰うぜ」


「ゼノ……」


ゼノの後ろにいたシノンが眉間にシワを寄せて言う。


「ゼノ……、もうこんなことは……」


ゼノはそれを遮る様に言う。


「大丈夫だ。これで最後」



そう言うと自慢の長剣を前に構える。ハルトも皆を制すと、一歩前に出る。一瞬の静寂。先にゼノが動いた。


「はああああ!!!」


「シールド・多連!!!」


ガン!!!


最初の一枚はゼノの剣撃にて砕け散った。それでも何とか攻撃を受け止めるハルト。


「召喚! 【メタルゴーレム】!!!」


ハルトはゼノの頭上に魔法陣を出現させるとそこからメタルゴーレムを召喚した。


「グオオオオ!!!!」


ドーーン!!


勢いよく地表に降りるメタルゴーレム。ハルトが叫ぶ。


「テッちゃん、目標あの黒い服の男!!!」


「ウガッ!!」


突如現れた大きなヒトナキモノに驚き後退するゼノ。そして言う。


「随分強くなったな。それもかなりヤバい奴だろ?」


ゼノはメタルゴーレムを指さして言った。


「急いでるんだ!! 悪いがこんなところでいつまでもグダグダしてられない!!!」


メタルゴーレムはハルトの合図と共に地面を両手で大きく叩きつける。衝撃音と共に揺れる大地。それに驚いたゼノが一瞬の隙を見せる。そこへ剣を振りかざし斬り込むハルト。


「はあああ!!!」


シュン!!


紙一重のところで攻撃をかわすゼノ。


「小癪な!!!」


今度はゼノが態勢を整え、長剣を振りかざしハルトに斬りかかる。ぴょんと後方に飛ぶハルト。それを追い剣を振るゼノ。


ガン!!!


ゼノが振り下ろした剣を右手を出したメタルゴーレムが防ぐ。


「くっ!!」


攻撃を防がれ一旦後退するゼノ。ハルトを見て言う。


「何て硬いんだ。普通の剣じゃ斬れないな」


「なあ、ゼノ。悪いが先に行かせてくれないか。本当に急いでるんだ」


ゼノはそんなハルトの声をかき消すように言った。


「悪いが俺も簡単には引けないんでね。もうちょっと相手して貰うぞ!!!」


そう言いながら長剣を上段に構え斬り込んでくる。


「ウガアアア!!!」


メタルゴーレムがハルトの前に立ちゼノの連撃を防ぐ。


ガンガンガンガン!!!


「まだまだっ!!!」


ガンガンガンガン!!!!!!


絶え間なく切り込むゼノの剣。メタルゴーレムが攻撃を繰り出すと一旦下がり、そして再び連撃を開始する。そんな攻防がしばらく続く。




ガンガンガンガン!!!


(ホントに硬ええ。こんなに硬い奴がいたとは……、さて、そろそろいいか)


ゼノは一度剣を引くとシノンがいる後方まで下がる。そしてハルトに向けて大声で言った。



「じゃあな、ハルト! また会おうぜ!!」


そう言うとゼノはシノンを連れて森の中へと消えて行った。


「くっそ!! 随分と時間を取られた。急ごう!!!」


ハルトの声に皆が頷く。




一方、ベラス団の拠点にやって来たランフォードは、その魔物の主であるダべラスの前に立っていた。周りには多くの魔物達がランフォードを睨む。玉座のような椅子に座るダべラスにランフォードが言う。


「和平交渉にやって来た」


ランフォードの額に汗が流れた。

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