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護衛士ハルトとふたりの姫様  作者: サイトウ純蒼
第六章「戦場に響く少女の歌編」
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87.来客

翌朝、メタルゴーレムと契約したハルト達がランフォード邸に帰って来た。当然ながらその変わり果てた姿に驚く一行。ランフォードは笑顔で迎えてくれたが、疲労の色がありありと見えた。



「ありがとう、ハルト。まさか仲間にしてしまうとは。あはははっ、まあいいだろう」


ハルトは採石場での事をランフォードに報告した。今後は闇雲に採石を行わないよう指導すると約束してくれた。ハルトが聞く。


「で、これは一体どういう事なんだ? 詳しく教えてくれ」


ランフォードは悲しい表情をしてハルトにすべてを話した。


「……何てことを、ココは大丈夫なのか?」


ランフォードは下を向いて首を横に振る。ルルとクレアはまだ怪我に苦しむ人達の治療を始めた。そこに守備兵からランフォードの元に連絡が入った。


「王都の使いの方々がお見えです」


「王都の使い?」


ハルト達はその言葉に何か嫌な感じを覚えた。




ハルトと共に王都の使いを迎えランフォードは、軽く会釈をしてからその後ろにある荷車に目をやった。


「王都からの伝令ご苦労様です」


ランフォードは締まった顔で使いの者に言った。それに答える使者。


「この度は大変な目に遭われ、亡くなられた方もいたようでお悔やみ申し上げます」


使者の者達は軽く頭を下げた。そして続ける。


「今回のベラス団の襲撃、王都では大変重く見ておりますが争うつもりはありません。そこで王都はベラス団と不戦調停を行いたく、その使者としてランフォード卿が任命されました」


「なっ!?」


突然の話に驚くランフォード。使者は更に続ける。


「まやかしの歌を歌う少女の救助も兼ねております。お疲れとは存じますが、これより向かわれたいとのことです」


「これから、すぐに行けと言うか?」


ランフォードが驚いた口調で尋ねる。黙って頷く使者達。

聡明なランフォードは今起きていることを瞬時に頭で整理する。魔物の襲撃は間違いないが、それがまだベラス団の仕業だとは分からない。そんな相手に不戦調停だと? ココの居場所も分からないのに救助? そして彼らの後ろにある荷車に目が行った。



「その荷車は何ですか?」


ランフォードの質問に使者が答える。


「贈り物です。不戦調停に向かうのに手ぶらと言う訳にはいかないでしょう」


ランフォードは荷車に近付くと荷物を覆っていた布を少しずらした。中には金や装飾品、そして名産の果物などが積まれている。使者が言う。


「我々は常にベラス団を脅威と感じていました。今回、これは丁度いい機会です。これを機に友好関係を結べたらと国王はお考えです」



――いい機会だと?


ランフォードは殺された自分の配下の者のことを思うと、とてもそんな風には考えられなかった。納得いかない点は幾つかあるが、国王からの命だとすると断る訳にはいかない。使者から渡された手紙には確かに国王の印が押されている。



「俺も行くぜ、ランフォード」


その話を聞いていたハルトがランフォードに言った。使者の目線がハルトに集まる。


「こちらは?」


使者の質問にランフォードが答える。


「私の客人です。魔物討伐を手伝ってくれました」


「そうですか」


使者は興味なさそうに答えた。そしてランフォードに言う。


「それでは我々はここで待ちますので、どうぞご準備をお願いします」


「お前達も行くのか?」


使者は無表情で答える。


「ええ、ランフォード様の護衛です。あと、誰がこの荷車を押しますか?」


「……分かった。ちょっと失礼するよ」


ランフォードはそう言うと、ハルトを邸宅の中へ連れて行った。



「ハルト、一緒に来てくれれば心強いのだが、それよりもお前にお願いしたいことがある」


頷くハルト。


「ハルトにはここに残って息子のランベルを守って貰いたい。親バカと言われそうだが、ランベルの事が気になる。何卒お願いしたい」


ランフォードはハルトに深々と頭を下げた。


「いいわよ、ここまで来たら何でも。美味しいご飯頂いたし。ね、ハルト」


気付くとハルトの後ろにルルとクレアが立っている。ルルが笑顔でランフォードに言った。


「ランフォードさん、ここは私達に任せて行って来てください」


「ルル……」


ハルトはルルの顔を見て言った。ランフォードが言う。


「ありがとう。ハルト、それでいいかな?」


ハルトが頷いて言う。


「ああ。ルル達がここに残るなら俺も行けないしな。護衛士だし」


ハルトは苦笑いして言う。


「そうだな、ちなみに私も護衛士だが、知っていたか?」


ランフォードがハルトに笑顔で言った。


「そうだったんだ、大先輩だな」


「はははっ、年寄りなだけだよ」


ランフォードは笑って答えた。ハルトが真顔になって言う。


「気をつけて。何か嫌な予感がする」


ランフォードも同じく真剣な顔になって答える。


「ああ、それは私も感じている。おかしな点が多過ぎる。十分気をつけるよ」


ランフォードはハルトに手を差し出す。それをしっかり握るハルト。


「では、行って来る」


ランフォードはそう言うと少しだけランベルのところに寄り、そして王都の使者の者達と一緒にベラス団の拠点へ向かった。



ハルト達は去り行く使者達の顔の不気味な笑みを見逃さなかった。クレアが言う。


「ねえ、ハルト。本当に行かなくて良かったの」


ハルトが答える。


「ああ、ランベルやここにいる人達の護衛を託された。少なくともそれを果さないと動けない」


「うん……」


クレアは少し不安そうな表情を浮かべた。




「あら~」


ルルが嬉しそうな顔をする。

その夜、ランフォード邸の寝室に通されたハルト達は、そのベッドを見て驚いた。


「えっ、このひとつのベッドで三人一緒に寝るのか!?」


驚いたハルトが言う。メイドが答える。


「申し訳ございません。部屋の多くが破壊されて、使えるのがここぐらいしかなくて……、それでは……」


そう言うとメイドは部屋を出て行った。

少しだけ嬉しそうにベッドを見つめるルル。対照的に顔を赤くするクレア。


「あ、あなたと一緒に寝るだなんて!! い、いやらしい!!! こ、こ、子供ができちゃう!!!!」


両手を顔に当てて言うクレア。ハルトが溜息をついて言う。


「そんなで子供ができるか。馬鹿なのか、お前は」


それを聞いていたルルが言う。


「それじゃあクレアはそこのソファーで寝れば? 私はハルトと一緒でも構わないよ」


ルルが頬を赤くしてクレアに言う。それに気付いたハルトが言う。


「ああ、それだったら俺がそのソファーに……」


そこまで言いかけたところでクレアが大声で言う。


「ダメ、ダメ、ダメーーー!!! それはダメ!!!! いいの、一緒に寝るわ。三人一緒よ!!!」


クレアは頭をくらくらさせながら言う。クスクスと笑うルル。しかしハルトは急に真(・)剣(・)な(・)表(・)情(・)になって言った。



「心配するな。多分寝させて貰えないから」


それに反応するクレア。半分白目になって言う。


「ね、寝させないって、どどど、どういう意味なのお。い、いやらしいっーーー!!!!」


クレアは顔から湯気を出して言う。ハルトは窓際に立って外を見ながら言った。


「お前、相変わらず何考えてんだよ。外見ろよ、お客さんだ」


ハルトの視線の先には邸宅を囲む複数の兵と、魔物の群れがあった。

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