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護衛士ハルトとふたりの姫様  作者: サイトウ純蒼
第六章「戦場に響く少女の歌編」
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85.メタルゴーレム

魔物討伐に向かったハルト達。その採石場にいたのは銀色に光るメタルゴーレムであった。ハルト達に気付いたメタルゴーレムがゆっくりと起き上がり、そして近付いて来る。



「それっ!!」


カンカン!


少し離れた場所からまずルルが弓矢を放った。しかし案の定、その矢はメタルゴーレムのボディに当たると甲高い音を立てて地面に落ちた。


「そんな軟な攻撃じゃ効かないわよ」


ハナが皆に言う。


「行くぞ、クレア!!」


「ええ!!」


抜刀したクレアとハルトが素早くメタルゴーレムへと走り込む。大きくて硬い体のせいか、動き自体は鈍い。二人はゆっくりと歩みを進めるメタルゴーレムの左右に分かれ、気合と共に斬りかかる。


「はあああ!!!」


ガン、ガン!!!


「硬っーーーーい!!!」


ふたりの剣は確実にメタルゴーレムのボディに入ったが、その堅い体に剣が跳ね返される。痺れる手を押さえる二人。一旦後方へ下がる。



「ハ、ハルト、どうするのよ!!」


クレアが不安そうに言う。ハルトも困った顔をして答える。


「どうするって、こんな硬い奴戦ったことないし。ちょっと考え……、わっ!」



そうこう話している間にメタルゴーレムはハルト達の近くまでやって来て、その大きな腕で殴りかかって来た。


ドーーーン!!


辛うじて攻撃を避ける一行。メタルゴーレムの腕が地面にめり込む。


「ハルト、これちょっとまずいわよ」


冷静であったルルも心配してハルトに言う。


「と、とりあえず攻撃を避けて……、わっ!!!」


再びメタルゴーレムが近くにやって来て、今度は両腕でハルト達の近くの地面を強く叩いた。


ドン、ドーン!!!


「うわあああっ!?」


攻撃の振動で揺れ始める地面。そのせいで数秒逃げるタイミングを失うハルト。その隙をメタルゴーレムは逃さなかった。


「グオオオオオ!!!!」


「危ない、ハルト!!」


ドン!!!


「ぎゃっ!!!」



「えっ? 嘘……」


そこにはメタルゴーレムの直撃を受けるハナの姿があった。

メタルゴーレムの地面への攻撃。その振動で一瞬逃げ遅れたハルトを、メタルゴーレムは意外と素早い動きで攻撃した。そしてそれを助けるかのように、ハナがハルトを吹き飛ばして自身にその攻撃を受けた。


「ハ、ハナちゃん!!!」


ハルトを助ける為にメタルゴーレムの攻撃を受けたハナ。直撃を受けたその後ろ脚はおかしな方向へ曲がってしまっている。


「ぐぐっ、これは、痛いわねえ……」


足をやられたハナがその場にうずくまる。ハルトは直ぐにハナの近くに行き足を見る。曲がってしまった足が痛々しい。


「ハ、ハナちゃん!! 貴様ああああ!!!!」


ハルトがメタルゴーレムに向けて剣を構える。メタルゴーレムは両手を上げ大声で叫ぶ。



「許サナイ!! 眠リをジャマするヤツは、許サナナイ!!!!」


その言葉に反応するハルト。


「眠り!? 何を言っている? まさかお前、眠いのか?」


メタルゴーレムが答える。


「眠イ!! 我ノ眠りヲジャマすることは、許サナイ!!」



「ハルト……」


足を折られうずくまっているハナが言う。


「ハルト、あのデカブツと契約しちゃいなよ」


「えっ!?」


驚きハナの顔を見るハルト。ハナが続ける。


「アタイは怪我しちゃったし、それにもともと移動するのが得意な種族。戦闘向きじゃないのよ、アタイは」


「それは……」


ハルトが少し寂しそうな顔をする。


「それにあんたは知らないと思うけど、召喚界って結構寝心地いいわよ。あのデカいのも気に入ると思うわ」


「……わかった」


ハルトは悩んだ末にそう答えた。ハナが笑顔で言う。


「あんたと一緒に居られて楽しかったよ。さあ、最後にアタイの力見せてあげるわ」


「うん、頼むよ。ハナちゃん!!!」



ハルトは剣を構えるクレア達を手で制し、ハナと共にメタルゴーレムに対峙する。ハナが言う。


「ハルト、あんたは下がってな!」


ハナはそう言うと、前足だけでゆっくりと立ち上がった。そして空に向けて大きな声で咆哮し、やがて体が真っ白な光に包まれる。


「それって……」


ハルトがそう言うと同時に、白き光の中から現れた真っ白な馬、ペガサス。美しい羽を大きく開き堂々たる姿で見る者を圧倒する。



「王子様の白馬……」


それを見ていたルルが目を輝かせて言う。



「行くわよ!!!」


ハナはそう言うと、自身にこれまでとは比べ物にならないほどの強い魔力を集め始める。


「ハ、ハナちゃん……!?」


少し下がった場所で見ていたハルトも心配して名を呼ぶ。美しい白馬を取り囲むように発生する魔力と風。ハナは限界の限りの魔力を溜めてから叫んだ。



「エグザッド・ストリーム!!!!」


ハナがそう叫ぶと、メタルゴーレムの周りの空気が轟音を立てて渦を巻き始める。やがてそれは一筋の竜巻となってその硬い体に巻き付いた。


「があああああ!!!」


更に魔力を込めるハナ。やがてその重い体のメタルゴーレムが少しづつ浮き始める。


「ハナちゃん……」


美しい白い体。そこから放たれる痛いほどの魔力。まるで生命を削るかの如く持てる力をぶつけるハナ。


「上がれえええええ!!!!」


ハナがそう叫ぶとメタルゴーレムの体は一気に空高く舞い上がった。


「グゴゴオゴオオオ!?」


空中に飛ばされ焦りながら体をバタバタと動かすメタルゴーレム。それを見上げたハナが言う。



「……これで終わりよ。はい、落ちな」


その言葉と同時に消える竜巻。浮力を失ったメタルゴーレムが一気に地面に落ちる。



ドーーーーーン!!!!


空から落とされたメタルゴーレムは、近くにあった巨大な岩に頭から落ちた。砕け散る岩。周りに破壊された岩が飛び散る。メタルゴーレムはその場にドンと音を立てて倒れた。



「ハナちゃん!!!」


ハルトは直ぐにハナの元へ駆け寄る。ハナは全精力を使ったのか、いつもの一角獣に戻っている。ハルトはハナの身体に手を当てながら言う。


「無理しやがって、まったく……」


その目には光るものが見える。ハナが言う。


「さあ、早くあのデカブツと話付けてきな!」


ハナは前足も曲げ座り込むとハルトを交渉に行かせた。頷き急ぎメタルゴーレムの元に行くハルト。気を失いかけていたメタルゴーレムがハルトに気付く。



「邪魔をスルナ……」


ハルトが言う。


「眠いんだろ? 特上の寝床、お前にやるよ」


「特上……?」


メタルゴーレムは倒れたままハルトに言う。


「ああ、俺と契約しろ。多分ここの奴らがお前の寝床を荒らしちゃったんだろ。だから俺がゆっくりと休める場所、くれてやるぞ」


ハルトは笑顔でメタルゴーレムに言った。


「本当カ?」


頷くハルト。メタルゴーレムも頷いて目を閉じる。ハルトはハナとの契約を解いてから、召喚域を張りその鉱石の頭に手を置いて言った。



「我が名はハルト。古の盟約により汝と血盟召喚の契りを結ばん。求ム、汝を求ム。我が血肉を食らい我の叫びに応じよ!! その名は【メタルゴーレム】!!」


メタルゴーレムは目を閉じたままゆっくりと消えて行った。

契約を終え、直ぐにハナの元に駆け寄るハルト。再びその体に手を当てて言う。



「ありがとう、ハナちゃん。お前が居てくれたおかげでルルを助けることができた」


ハルトが感慨深く言う。ハナが答える。


「何、湿っぽいこと言ってるのよ。アタイもあんたと一緒に旅できて楽しかったわよ」


ハナはそう言うとぺろりとハルトの顔を舐めた。


「うん、ありがとう。ハナちゃん……」


ハルトはそう言ってハナに思いきり抱き着く。



(まっすぐ生きなよ、ハルト……)


ハナは心の中でそう囁いて消えて行った。

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