72.小隊長デヴィ
王都へ向かう途中混血の女の鳴き声を聞き、救助に向かったハルト達。そこにはエクセル王子の小隊長デヴィが混血の女を攫おうとしているところであった。
女を助け、デヴィと対峙するハルト。先にデヴィが得意の長棒を振り回してきた。
「がああああ!!!」
ガンガン!!!
ハルトはその攻撃を剣で受け止める。隙をついて剣の斬撃を繰り出す。
カン!!
同じく振り回した長棒で剣を弾くデヴィ。その回転を利用し再度棒を振り下ろすデヴィ。
「シールド!!!」
ガン!!
ハルトは頭上にシールドを張りこれを防ぐ。一旦後ろに下がる両者。デヴィが言う。
「なるほど、護衛士か。ただ、いつまで守り続けられる?」
デヴィは長棒を頭の上で勢いよく回すと先ほどよりも力強くハルトに叩き込んだ。
「がああ!!!」
ガン!!!
その一撃を剣で受け止めるハルト。ハルトも負けじと剣を構え連撃を繰り出す。
「はあああ!!!」
カンカンカンカン!!!
両者一歩の譲らず激しく剣と棒を打ち合う。
「シールド!!!」
「はあ!!」
バリン!!
時折ハルトが張るシールドも、デヴィの力ある棒技の前に打ち砕かれる。再び距離を置き対峙する二人。お互い少しずつ疲労の色も見え始める。
「はあ、はあ、罪人の癖に、しぶとい奴……」
デヴィが棒を構え荒い息をしながら言う。ハルトが答える。
「お前に構っている暇はない。次で終わらせる!!」
ハルトは剣を構える。デヴィが顔を赤くして大声で言う。
「やれるもんならやって見ろ!!!!」
長棒を振り回しながら突進してくるデヴィ。ハルトは剣を構えたまま左手を前に突き出す。
「シールド、多連!!!」
ハルトはデヴィの前と左右にそれぞれ囲むようにシールドを張った。それに気付いたデヴィが長棒を振り回し、一度に三枚のシールドを破壊する。
バリン!!!
「こんなもんが効くか!!! ……!?」
壊したシールドのすぐ裏には剣を撃ち込んでくるハルトの姿があった。突進していたデヴィはそれに気付き、慌ててブレーキをかけて後方に飛び跳ねる。
グサッ!!
「なっ!?」
ハルトの攻撃をかわそうと後ろに飛んだデヴィ。しかし自分の背中に何か鋭利な物が刺さったことに気付いた。
「な、何だよ……!?」
振り返るとそこには頭を下げた一角獣が立ち、その角が自分の背中に刺さっている。
「く、くそおおお……」
「はあああ!!!」
ザン!!!
「ぐはっ!!」
更に正面からハルトがデヴィに斬り込む。吹き上がる鮮血。デヴィが怒りの表情で叫ぶ。
「こんなところに馬が、くそくそくそっ!!!!」
それを聞いたハナが怒って言う。
「アタイはウマじゃないわよ!!!!」
そう言って角を抜くと、後ろを振り向き思い切り後ろ足でデヴィを蹴り飛ばした。森の奥まで吹き飛ぶデヴィ。ハルトはすかさずデヴィの部下に剣を向け叫ぶ。
「さあ、次はお前達だ!!!!!」
その横にクレアも来て剣を構える。
「ひ、ひえええええ!! デヴィ様がやられた!!!!」
頭を失ったことで動揺し散り散りに逃げる部下達。ハルトは当然ながら逃げる部下共を追わず、そのままやり過ごした。
「ちっ、無駄な時間を使った。ハナちゃん、行くぞ!!!」
ハルトはそう言ってクレアをハナの背中に乗せ、再び出ようとする。
「ま、待って!!」
気付くと助けた混血の女がこちらに走ってくる。
「わ、私も連れてって! こんなとこに置いてかれたら困る」
今更ながらに彼女の存在を思い出したハルトが言う。
「お前は、一緒の男に連れて……!?」
ハルトは彼女と一緒に居たエルフの男を探したが、いつの間にかに逃げたのかいなくなっていた。
「なんて情けない男だ……」
ハルトは姿が見えなくなった男を思い溜息をつく。混血の女が言う。
「ねえ、だから私も連れてって! お願い!!!」
女は顔の前で両手を合わせてハルトに頭を下げる。ハナが言う。
「アタイは構わないよ。ひとりぐらい増えても。今は召喚力で走っているから、疲れるのはあんたよ、ハルト」
「うーん、しょうがないな。乗れ」
そう言ってハルトは混血の女に手を差し出す。
「わあ、ありがと! 私はリーズよ。ヒト族とエルフの混血、よろしくね!!」
そう言ってリーズはハルトの前に横向きに座った。
「じゃあ、行くぞ!!!」
ハルトが張るに合図を出し、勢いよく走り出す。
「きゃあ!」
急に動き出したハナに吃驚してハルトに抱きつくリーズ。それに気付いたクレアが怒って言う。
「ちょ、ちょっと、あなた! なんでそんなに抱きついてるのよ!!」
リーズが答える。
「だって仕方ないじゃん。こんなに速いウマは初めてだから」
リーズはハルトを思いきり抱きしめながらにこにこする。
「あ、あなた! 私の方が先なんだからね!! 勘違いしないでよ!!!」
「えー!? 聞こえない!!」
リーズはとぼけた顔をしてクレアに答える。
「なんですって!!」
そのやり取りを聞いていたハナがハルトに言う。
「ねえ、ハルト。ちょっと静かにできないのこの子達」
ハルトが苦笑いをして言う。
「仕方ない……」
「はあ、そもそもアタイはウマじゃないんだけどね……」
ハルトはそんな事よりも、一人増えたことによる召喚力消費の方が体に重くのしかかっていた。時々意識がぼんやりとする。
それから更に走ること数時間。ハルトやラフネ達は日が落ちる少し手前で本日の移動を止め、野営の準備に取り掛かった。
「もうダメ……」
ハナから降りたハルトは、そのまま倒れるようにその場に寝込んだ。それに気付いたリーズとクレアがハルトを抱き上げる。
「ハルト、ハルト!!」
ハルト以外の者が野営の準備を始める。リーズは脇で寝かされたハルトを顔を、頬を赤くして見つめた。




