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護衛士ハルトとふたりの姫様  作者: サイトウ純蒼
第四章「エルセント王国の悲しき英雄編」
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62.ゴブニル要塞

副隊長ゴジャを倒したフレア。

それを見たゴブニル軍の兵士達は散り散りになって逃げだす。



「ありがとう、リティ。助かった」


「いえ、戦いはこれからです」


「ああ、行けるか?」


「はい!」


リティはそう元気よく返事をすると、緑嵐槍を構えて歩き出すフレアと共に進む。



要塞の門まで辿り着いた二人だが、門を守備していた兵まで逃げて行ったらしく易々と要塞内に入ることができた。


意外と広い要塞内。中庭のような広場があり、周りには木々なども茂っている。中央には立派な神殿の様な建物が建てられており、それを挟むように手前に二つの塔が見える。

フレアがどこから捜索しようか迷っていると、リティが中庭の隅に倒れている負傷兵を見つけた。


「ヒト族です!!」


その負傷兵は『独立と勝利軍』の紋章の入った服を着ていた。


「おい! 大丈夫か!!!」


フレアはすぐにその負傷兵の元に駆け寄り声を掛ける。回復魔法を掛けるリティ。意識が朦朧としていたようだが、少し回復するとフレア達に気付いて口を開いた。


「ひ、東の塔に……、仲間が……、助けてくれ……」


「分かった」


フレアとリティは負傷兵を木陰で休ませると、東側にある塔へと駆け寄った。



ドーン!!


フレアが勢いよく塔の扉を開けた。

反応はない。しかし彼の五感には、ひしひしと敵兵がいることを感じ取っていた。


「う、うわあああ!!!」


カン!!


「ぐわあああ!!!」



塔内部に踏み込むと同時に襲い掛かるゴブニル軍の兵。そしてそれを槍を振り回し撥ねのけるフレア。要塞内部にも突如現れた『想望の英雄』のことは伝わっており、一部の兵は脱出を、そして残った兵の多くも震えながら身を隠していた。



「はああああ!!!!」


カンカンカン!!!


フレアの槍の音が薄暗い塔内で響き渡る。戦いながらもその多くが逃げ始めるゴブニル軍。フレアが叫ぶ。


「降参せよ!! 剣を置く者に槍は向けぬ!!!」


戦意消失する中、多くの兵がその声を聞き剣を置いて平伏し、そして残りの兵も我れ先にと逃げて行った。

目が暗闇に慣れて来たフレアとリティが奥の間がある事に気づき、歩みを進める。



「なっ……!?」


その光景はある程度は予想はし覚悟もしていたが、とても尋常なものではなかった。

多くの兵が鎖に繋がれぐったりしている。男は殴打されて呻き声を上げており、絶命したのか動かない者も多い。そして女も暴力を振るわれおり、更に衣服ははだけその多くが凌辱されていた。


「ううっ……」


その光景を見たリティが口に手を当てて顔を背ける。そして奥には独立軍の副リーダーであるメルカも姿もあった。他の女同様に服は破られ無惨な姿を晒している。


「メルカ!!」


それに気付いたフレアが名前を叫ぶ。意識朦朧としていたメルカだったが、フレアの姿を見ると目を見開き大声で叫んだ。


「来ないで!!!」


「!?」


耐えられなかった。

憧れの英雄にこの様な姿を見られることが。彼女にとってはそれはどんな凌辱よりも辛い事であった。

メルカの体はガタガタと震え、涙がボロボロと流れる。

それに気付いたリティが自分の来ていたローブを脱いで彼女に着せた。


「もう大丈夫」


リティは鎖を外し優しくメルカの肩を抱く。遠くにいたフレアが言う。



「すまなかった。遅くなって……」


背を向けて話すフレア。そして以前優しくタオルを差し出してくれた彼女の笑顔を思い出す。メルカは下を向き声を殺して泣いた。




リティとフレアでまだ生存している者の救助を行う。地下神殿の奇襲、街への襲撃、そしてこの拷問。リズが居なかったことだけは不幸中の幸いであったが、次々と起こる出来事にフレアの心は張り裂けそうであった。

ただ、それと同時にある事が頭から離れなかった。



――奴がいない



『独立と勝利軍』のリーダー。

ヒト族のみんなが彼を頼り、そして心の支えとなっていたかの者。フレアがそう思っていると、その者の声が塔内に響いた。



「遅かったな、英雄さんよ!!」


その声を聞きフレアは槍を持って塔外に出る。


「楽しませてもらったよ、十分」


それは『独立と勝利軍』のリーダー・バドであった。




「バド……」


フレアは槍を持ち現れたその男に対峙した。拉致されたはずのバドだったが全く怪我などはしておらず、逆にゴブニル軍の兵士を連れている。フレアは極力冷静になり自分を落ち着かせて言った。



「これはどういうことだ、バド……」


バドは腰の左右に付けた剣を握り言う。


「まだ分からんのか、ボンボンめ! 俺様はゴブニル軍最高幹部のバド様だ。これまでの協力感謝するぜ」



フレアは体をガタガタと震わせながら対峙するバドに言う。


「お前、まさか仲間を売って……」


バドがニヤニヤしながらフレアの言葉に答える。


「いや違うね。俺は最初からゴブニル軍。だから()()は売ってねえぜ」


フレアは手にした槍を強く握り下を向いて言う。


「……なぜ、こんなことを?」


バドが呆れた顔で言う。


「お前はホント甘ちゃんだな。ゴーニル様に反抗する奴らを炙り出すには、反乱軍を結成するのが一番。ちょっと資金をつぎ込めばそいつらが阿呆みたいに志願して来てよ。そこを一網打尽って訳だ。ぎゃはははっ。……で、お前も同じだ。勘違い英雄さんよ」



――プツン


切れた。

何か大切なものがフレアの中で斬れた音がした。フレアは無言で緑嵐槍を構えると気合を入れた。


「はああああああ!!!!」


その迫力に驚くバド。フレアが言う。



「来い、バド!!! 貴様の存在そのものを私が消してやる!!!!!」


一瞬驚いたバドだが、その言葉を受けて腰に付けた二本の剣を抜いた。

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