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護衛士ハルトとふたりの姫様  作者: サイトウ純蒼
第三章「亡国セレスと忘却の老人編」
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47.昇華

(マルク、そして隊長、申し訳ない。そう簡単に諦めるなと言うことじゃな……)


ガレフは救助に現れた、まるでバイス隊長のようなハルトを見て改めて思った。そしてその隣に浮く大きなウナギを見て言う。


「無事契約できたようじゃな」


「ああ、ありがとう。助かった」



しかしガレフは思った。

ハルト達の加勢は感謝する。ただ、



――彼らが加わってどこまで戦えるか? 


という事を。


どうすれば勝てるだろう、ガレフは今ある駒を見回し考えた。

一方ベルサージは突如現れた召喚士の不意打ちにさらに激怒して叫んだ。



「何ですか、あなた達は!!! 折角いい所だったのに、許さない!!!」


それを聞いたガレフがハルトに言う。


「気を付けろ、ハルト。相当の使い手だ」


「ああ」


ハルトも手にした剣をしっかりと握り直す。



「はああああ!!!!」


今度はガレフにケルン、そしてハルトにクレアの四人が同時にベルサージに斬り掛かる。


「ファイヤーボール!!」


ベルサージが反撃の為に、両手から複数の火球を繰り出す。


「ライトシールド、多連!!!」


それを防ぐようにハルトがシールドを張る。


ドンドンドン!!!


「護衛士!? きえっ……!!!」


火球を防がれたベルサージが悔しそうに言う。すかさず斬り込む四人。


「はっ!!!」


それぞれの攻撃が次々とベルサージを襲う。


「くそっ、くそっ!!」


それを後退しながら剣撃をかわすベルサージ。そして移動しながら魔法の詠唱を行い、少し離れた所から再び魔法を発動する。


「黒き波(シュワーツウェル)!!!!」


再び暗黒に染まり震えだす空間。そして発生する黒き波。すぐにハルトがシールドを張る。


「ライドシールド!!!」


バリ、バリ、バリン!!!


しかしその黒き波はハルトのシールドに当たるとそれを歪め、そして破壊し始める。ガレフが叫ぶ。


「防御ーーーっ!!!!」


ガレフの声に皆が防御姿勢をとる。


「ぐううううっ……、ぐわああ!!!!」


暗黒の波に耐える一同。鎧を突き抜けてくる衝撃波。全身が締め付けられるように痛い。



「はあ、はあ……」


ハルトは敵のこれまでにない強さに身震いをした。

過去に英雄と呼ばれた真紅の五鬼将はおそらくガレフ達のことであろうが、その彼らがここまで追い込まれている。その現実をハルトは身を持って感じる。



ガレフはふうと息をついてからハルトの【ヒトナキモノ】を見つめる。



――隊長、力を借りるぞ……


ガレフは近くにいたクレアを呼び寄せる。そして懐から一つの指輪を取り出すと、クレアのその細い指にはめた。驚くクレア。


「えっ、ええ!? ガ、ガレフさん、こんな時に、きゅ、求婚!?」


クレアは顔を赤くしてそう言ったが、ガレフや他のみんなの真剣な顔を見て舌を出して言う。


「そんな訳ないわね……」


ガレフが言う。


「ワシがもう少し若ければそれもいいかもな」


ガレフは笑顔をでクレアに言うと、真剣な顔に戻ってスティンを見て頷いた。スティンが言う。


「副隊長……」


「頼むぞ」


ガレフはそう一言言い残すと、長剣を構え再びベルサージに向かって走り込んだ。


「長技・赤き閃光(オーツレンス)!!!」


他の隊員達は皆思った。


――どこからこんな力が出てくるのだろう



現役中でもなかった副隊長の大技の乱発。

それをこの年齢なっても放ち続けるその精神力。体力こそ落ちたかもしれないが、やはり彼は真紅の五鬼将・頼れる副隊長ガレフ・フォーゼルなのだと。



「ぐうおおおおお!!!!!」


ガンガンガン!!!


ガレフの連続攻撃を受け止め、そしてかわすベルサージ。その気迫に押されている様子。それを見たスティンが急ぎハルト達に叫ぶ。


「ハルトはそこ! クレアはここへ!!」


スティンの指示で素早く移動する五鬼将とハルト達。


「よし!!」


皆が移動し終えると、それはまるで五芒星のような形となった。五鬼将の三人、真っ赤な鎧のクレアに返り血で赤く染まるハルト。スティンはまるで真紅の五鬼将が再び揃ったかのような錯覚を覚えた。そしてハルトに向かって叫ぶ。


「ハルト、【ヒトナキモノ】を中央へ!!!」


ハルトは五芒星の中央にルフトアールを移動させた。そしてスティンが何か詠唱をした後、大声で叫ぶ。


「昇華っ!!!!」



その声に反応するようにクレアに付けた指輪が白く光り、音を立て砕け落ちた。そして天から白い光がルフトアールに降り注ぎ、その体が少しづつ変化していく。


「こ、これは……!?」


ルフトアールはハルトの目の前で真っ白な巨大ウナギに変化し、神々しい光を放ち始める。そして落ち着いた声でハルトに言う。



――我は神のウナギ(ゴッテスアール)。ハルト、我に命《めい》を与えよ。



「神のウナギ(ゴッテスアール)……!?」


急な出来事に混乱するハルト。スティンが叫ぶ。


「説明は後だ!! 奴を討て!!!」


ハルトが我に返り言う。


「ああ、神のウナギ(ゴッテスアール)よ、ベルサージを倒せ!!!」


「承知した」


神のウナギ(ゴッテスアール)はゆっくりとベルサージの方に空を泳いで行き、全身から迸る雷を発生させた。



「ガレフ!!! 下がれ!!!!!」


ケルンの声に気付き、よろよろと後退するガレフ。



「神の雷(ゴッテスドナー)!!!!」



神のウナギ(ゴッテスアール)がそう叫ぶと、その頭上の空が一瞬で真っ黒な空に変わり、そして轟音と共に雲が光り始める。危機を感じたベルサージが逃げようとするが、その前に天から巨大な柱の様な雷《いかづち》がその頭上に落とされた。


ドォーーーーン!!!!


「ぎゃああああああ!!!!!」



その落雷はまるで大きな爆裂魔法の様であった。

地面を揺らす爆音。隣国までも届くような閃光。そして離れていても体を麻痺させるような雷波。クレア達もその余波に体を守る様に耐える。

神の雷(ゴッテスドナー)はベルサージの結界の上から、まるでそれを無視するかのようにその体を貫いた。



「ぐっ、な、何だそれは……」


雷の直撃を受け、真っ黒に焦げたベルサージが小さくつぶやく。そして何か他に小さく呟きながら倒れ絶命した。


「す、凄い威力……」


ハルトは自分の予想以上の力に驚きを隠せなかった。そしてベルサージの近くで倒れているガレフを見て叫んだ。



「ガレフーーーー!!!!」


ハルトはガレフに向かって走った。そして彼を起こし呼びかける。


「ガ、ガレフ、しっかりしろ!!!」


すぐにルルが駆けつけ回復魔法を掛ける。


「ああ、ありがとう。ハルト……」


少し楽になったのかガレフが起き上がって言う。


「……驚いた。想像以上の破壊力じゃ。お主はこれからもっと強くなるぞ」


「これは一体何なんだ?」


ハルトは宙に浮く神々しい神のウナギ(ゴッテスアール)を見て言った。ガレフが答える。


「これは【ヒトナキモノ】の昇華。一時的に昇華させ能力を上げる。お主、疲れたじゃろ?」


緊張が一瞬解け、どっと疲れが出るハルト。かなりの召喚力を使った様だ。神のウナギ(ゴッテスアール)の召喚を維持し続けるのが精一杯だ。

そしてガレフは懐にあったペンダントをハルトに渡した。


「これはお前さんが持っていた方が良いじゃろう」


スティンらも駆けつけて言う。


「副隊長、無理すんなよ……、全く……」


ガレフが笑って言う。


「すまぬ、思った以上の強敵でな、………!!」



ガレフがそこまで言うと、突然目を見開いて周りを見始める。


「何奴っ!!!!」


ガレフがそう叫ぶと空間の一部が黒くなり、そして黒き煙と共にそれは人型へと変化した。そこに現れる人影。


「なっ……」


ハルト一同その突然の訪問者に驚く。その訪問者が言う。



「私は魔人グラリス。私の可愛い同志をここまでやられては黙ってはおけぬのでな」


ハルトはその聞き覚えのある名前の主を見て、再び体が動かなくなる自分を感じた。

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