25.招かざる客
翌日もハルトはリーヴァ達飛竜団と共に魔物退治に出掛けた。
目的は里へのお礼だったのだが、壁の上と言う高地で戦うことは意外にもハルト達にとっては良い訓練となった。戦いの中でライトシールドの上位であるブロンズシールドも習得。
二人の意見も聞かなければならないが、ハルトはもう数日はここに居てもいいかなと思い始めていた。
そんな中、その招かざる客は現れた。
「報告します、下界の門より冒険者三名出現!! 現在、飛竜団と対峙しております!!」
リーヴァの代わりに臨時に斥候団の指揮をしているリレルの元に、連絡部員より報告があった。
「何だと!?」
報告を受け驚く臨時団長のリレル。すぐにリーヴァに向かって頭を下げて言う。
「先に参ります」
そう言うと大きな翼を広げリレルが飛び立つ。
「リーヴァ、どうする?」
ハルトはリーヴァに尋ねる。
「……ハルト、人を斬る覚悟はあるか?」
一瞬戸惑ったハルトだがリーヴァの顔を見て答える。
「必要ならば」
「分かった、加勢に向かう。乗ってくれ!!」
ハルト達はリーヴァの背中に乗り急ぎ下界の門へと向かう。
ハルト達が下界の門へ到着すると、三名の冒険者を飛竜の群れが囲むように対峙していた。
冒険者は男二人に女一人。ひとりの男は重鎧を身に着け、もうひとりの男は比較的軽装である。女の方は大きな杖を持っているので魔法使いか何かだろうか。
そしてよく見ると冒険者達は小さな子供の飛竜を人質に取っている。
リーヴァは急ぎ飛竜達の前に降りる。先に来ていたリレルが叫ぶ。
「リーヴァ様!!」
リーヴァが答える。
「人質とは卑怯な。リレル、ここはまず私が行こう」
「はっ!」
そう言うとリレルは一歩下がる。
リーヴァはハルトに小声で言う。
「ここまで登って来た冒険者。分かっているとは思うが、それなりの手練れだ。気を抜くなよ」
「ああ。人質とは卑怯な真似を! リーヴァ、考えがある。悪いが一度戻すぞ」
そう言うとハルトは何やらリーヴァに伝えてから召喚界へ帰した。
冒険者達が急に現れたハルト達を見る。そしてヒト族であるハルトに気付いた重装備の男が大きな声で言った。
「おっ? 何だ、先客がいたのか!! ヒト族じゃねえか。仲間よ!!」
重装備の男は大きな斧を地面に突き刺してハルトに言う。
「おい、お前!! ヒト族同士仲良くしようぜ!! 果実も分けてやるぞ。何不自由なく暮らせる。言葉は喋れるが、こんな畜生共よりもヒト族同士楽しくやろうぜ!」
「ハルト……」
リレルは心配そうに、そしてそこにいる全員がハルトを見つめる。ハルトはふっと笑って答えた。
「ああ、そうだな。こんな畜生共と一緒には居られないな!!」
「ハルト……!?」
その言葉に改めてハルトを見るリレル。ハルトは何か小さく詠唱してから、冒険者達に大声で言う。
「こんな奴らが仲間だなんて、まっぴらごめんだぜ!! 行けえええーー!!!!」
「えっ!?」
冒険者達は自分達の足元に、自分のものとは違う大きな影がある事に気付く。
「う、上っ!!!」
女魔法士が頭上にある何かに気付いて叫ぶ。
「グワアアアアァァァ!!!!!」
その何かは冒険者達の頭上から一直線に、彼らへと降りる。
ドン!!!
「ぐわあああっ!!!」
「リーヴァ様!!!!」
リレルがその名を叫ぶ。空から現れたのは斥候団長リーヴァ。ハルトが冒険者の上空に召喚し急襲させた。
「ルル、今だ!!」
ハルトの指示を受け、ルルが素早く弓を射る。
ヒュン!!
「うわっ、痛いててっ!!!」
ルルの放った矢は人質として捕らえていた軽装の男の腕に命中。その痛さに思わず人質を離す。
「はああああっ!!!」
それを待っていたかのように隙をついてリーヴァが子供を救出する。それを抱えすぐに仲間の元へ飛び帰るリーヴァ。
仲間の元に戻された子供の飛竜を、その親竜が涙を流して抱きしめた。飛竜達の喜び鳴く声が響く。
「お、お見事です、リーヴァ様!!!」
急襲、そして救助。活躍したリーヴァをリレルが称える。リーヴァが言う。
「私ではない。すべてハルトの指示だ。何て奴だ!」
ハルトはリーヴァの方を向いて大きく頷く。
「くそ、くそ、くそっ、何だ、あいつら!!!!」
リーヴァの攻撃を受けた転倒していた冒険者達が起き上がり叫ぶ。重装備の男がハルトに言う。
「お前、仲間にでもしてやろうと思ったが、もう許さねえ!!!!」
ハルトが大声で言う。
「言っただろ? 畜生共の仲間にはならないって。それに……」
ハルトは両手を広げて言う。
「俺にはもうこんなに素晴らしい仲間がいるんだぜ!!!」
「ハルト……」
それを聞いたクレアにルル、そしてリーヴァ達飛竜に笑みが浮かぶ。
「何だと……、もう我慢ならねえ。やっちまうぞ!!!」
重装備の男が他の二名に言う。
「ああ!」
「分かったわ!」
冒険者の女が杖を前に何やら詠唱を始める。重装備の男は斧を前に構える。そして軽装の男も何やら小声でつぶやくと、ハルトの顔を一瞥してから叫んだ。
「召喚、【グリスリー】!!」
冒険者の前に大きな魔法陣が現れる。そしてその中から更に巨大なクマ型生物が出現。そしてハルト達を見て大声で吼える。
「ガウオオオオォォォ!!!」
それはハルトの倍以上、近くで見るとまるで壁の様な大きなグリスリーであった。
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