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二百四十四話 「なんで……お前がっ……!?」


 黒い翼の女の人が立っていた。

 年齢は五十代くらいか。


「うーん、この身体を奪った時のように上手くはいきませんね」


「身体を奪った……!?」


 身体を奪う、短剣。

 結びつく答えは、型無の構成員ということ。


「型無の構成員が何故ここに!?」


 私は大剣を構えた。


「良いんですか? この身体はコラキという娘の親の物ですよ」

「……!?」

「無事に取り返したかったのではないですか?」


 コラキ・ウィンドミルの母親の身体……!?

 何故ダンジョン、フルトゥーナのボス部屋に!?


 考えが頭の中に色々と浮かんでくる。


「それと、『何故ここに』ですか……。そんなの構成員の一人がピンチになっているから助けに来たに決まっているじゃないですか」


 そう言って型無の構成員は師匠のいる戦場へと飛んで行った。


 早い……!?

 本来、あの身体の持ち主はそんな速度で飛べないはずだ。

 むしろ、飛ぶのを忌避していた種族のはず。


「師匠!」




 ――だから今回は頑張ってね。


 異形蟻と相対している今も頭の中は時空龍の放った言葉に翻弄されていた。


 ――この会話は二回目よ。救援が駆け付けるあとちょっとであなたが死んじゃって私の力が発動したの


 異形蟻に集中しなければならないのに出来ない。


「まさかあいつの望みは俺を混乱させる事だったのか?」


 俺を混乱させるために、異形蟻の討伐を何回繰り返したのかを言った。

 しかも、それは嘘かもしれない。

 本当は一回目なのかもしれないし、二回目以上なのかもしれない。


 俺はどうして死んだんだ?


 異形蟻にやられるとは思えない。

 後ろでコウジ達とやり合っている過去の無限龍にやられたとも思えない。


 そうこう考えながら異形蟻の足を切り落としていって機動力を削ぐ。


「きいいい! 良い気になりやがってお前なんて触れられれば一発なんだから!」


 異形蟻が何かを喚いている。


 異形蟻の異形化時の能力は、対象の傀儡化。

 対象に触れ卵を埋め込み子が産まれると、対象は異形蟻の命令を忠実に遂行する操り人形になる。


 が、異形蟻にとって俺との相性は最悪だ。


 俺は何度も死にかけ、その度に肉体の機械化を行ってきたため子を埋め込む場所が限られている。


 わざわざそれを異形蟻に伝える義理も無ければ、異形蟻に触れられる隙も見せていない。


 正直簡単だ。

 それも、簡単過ぎて不安になるほど。


 後ろの状況はどうだ?


 コウジがメロシィヌの力の使い方を完全に理解して過去の無限龍を追い詰めている。


 よく見たら更に後ろに戦い好きの神の姿が見える。


 戦い好きの神は赤いおちょこに酒を注いで酒を仰ぎながらコウジとラフティリ達の戦いに見入っている。


 あれは勝負あったな。


 こっちも勝負をつけるか。


 異形蟻の最後の足を切り落とし、地に落ちた本体に短剣を向ける。


「言い残す事は?」

「あんたなんか私の助けが来たら一発でやられちゃうんだから!」

「そうか……助けは来ないようだな。ではさらばだ」


「――師匠!」


 弟子の声が聞こえ、足が止まった。


 それと同時に黒い風切羽根が飛んで来たため、短剣で羽根を切り落とす。


「何者だ」


 新しく現れた人物、五十代くらいの黒い羽根の鳥獣人族に短剣を向けそう言った。


「あ、どうもスタルギサン。私は型無のクローマです。これから長いお付き合いになると思うので、お忘れなきよう」

「そうか、死ね」


 宙を飛び、翼を広げる鳥獣人族に短剣の照準を合わせる。


「良いんですか? この身体はあなた方が探し求めていたコラキ・ウィンドミルの母親の物ですよ」

「それは殺してから考えれば良い」


 地を蹴り飛ぶ。

 わざわざ翼なんか生やさなくともあれくらいの敵なら一瞬だ。


 だが、俺の攻撃は当たらなかった。

 代わりに、クローマの持っていた氷の結晶に短剣が当たった。


 ――ピキ。


 それは音を立てて割れる。


「これ、なんだと思います?」

「……まさか」


 慌てて後ろで戦っていたコウジ達の元、地面に散らばっていた無限龍の結晶を見る。


「正解です。答えはコウジサン達が必死に戦って無力化させた無限龍の欠片でした」


 無限龍の無限化を防ぐための行動を慌てて行おうと思い、氷の結晶に食らいつく。

 だが、遅かった。


 それは俺の口の中で大きくなっていった。


 これでは消化が間に合わない。


 俺は諦めてそれらを吐き出す。

 それらはもう既に人の形を成していた。

 あまりにも早い、生成。


「化け物め……。しかし、傀儡化された無限龍から生まれる無限龍にも卵が不随しているとは限らない」

「その通りです! だからこれは賭けです! 果たして異形蟻によって傀儡化された無限龍は増えてもこちらの味方をしてくれるのか!?」

「イカれている……」

「誉め言葉ですね、ありがとうございます」


 生まれたばかりの姿で立ち尽くす無限龍が二体地面に立ちすくむ。

 新たに生まれた二体の無限龍は状況を飲み込もうとしている。


「おい、お前」


 一体目の無限龍が異形蟻に声を掛ける。


「敵はどいつだ」


 二体目の無限龍が異形蟻に体液を垂らし、俺の切り落とした足を復活させる。


「あいつらよ! 私と鳥獣人族以外の全員!」


「そうか」

「分かった」


 ……最悪だ。


 無限龍が二体敵に回った。

 いや、二体どころではない。

 無限龍はその名の通り、無限に増えていくため敵は無限。


 クソ兄貴が……!

 なんちゅー面倒な能力を奪われやがって……!


「ははは! これは面白いですね! 私達が賭けに勝っちゃいましたね! さぁ、裸だと不格好なので、これでも着てください! そして全部めちゃくちゃにしてください!」


 クローマは黒い風切羽根で二つの黒い衣装を作成し、無限龍に着せた。


 二匹の無限龍の猛追が始まる。


 一匹が殴りかかって来たと思ったら、二匹目が後ろから飛び蹴りをお見舞いしてくる。

 一匹が回し蹴りを放って来たと思ったら、二匹目が組み付いてこようとする。

 一匹がブレスを放って来たと思ったら、二匹目がそれに追随してブレスを吐いて来る。


 ……捌き切れない!


 一匹一匹の戦力は今の無限龍に到底敵わないが、二体同時だとこんなにも厄介になるのか!


「スタルギのおっさん、手伝うか?」

「ああ、頼む。だがその前に……ラフティリ! 粉々にした無限龍の欠片を一つ残らず捕食しろ! 無限龍の倒し方は食事による消化しかねえんだ!」

「ムエ――!」


 後ろでラフティリが無限龍の欠片を除去しているのが見える。

 これでこれ以上増える事はないだろう。


「何か勘違いしていないか?」

「俺をそれで無力化出来たつもりなのか?」


 無限龍の猛追が止んだ。


 すると、何をトチ狂ったのか、二匹の無限龍が自身の指を嚙みちぎり、ペッと指を吐き出す。


 無限龍の数が増える。

 二体だったのが、五体に。

 五体だったのが十体に。


 どんどん数が増えていく。


「ははは! 面白い! 面白いです! 異形蟻をメンバーに加えたかいがありました! こんな面白い事が出来るんですね、無限龍は!」


「――凍てつく大地……!」


 コウジがメロシィヌの力を使い、無限増殖していた無限龍を止める。


「俺がこいつらを凍らせ続けるから、スタルギのおっさんとラフティーで二人を倒してくれ!」


 全ての力をフルに使ったコウジが地面に手をつけながらそう言う。


 俺はラフティリと目配せをし、異形蟻の元へ走って行った。


 早く、先程よりも早く。

 異形蟻を切り刻んでいく。

 早く命を刈り取らなければ。


「ムエエ――!!!」


「はははー! 鬼さんこちらー!」


 ラフティリはクローマと名乗った奴を竜化したまま追いかけ回す。


 とにかくこれで無限龍は増えない。


 後は俺が決着をつけるだけ――


 ――光のゲートが現れた。


 動き出そうとした俺の身体が止まり、目が完全に光のゲートに視線が吸い込まれる。


 俺はあのゲートを知っている。


 ゲートから出て来たのは、五十代くらいの黒い翼の鳥獣人族と、全身白色の男。


「嘘……だろ…………」


 全身白色の男から目が離せない。


 竜王家で誰よりも狂っていて、誰よりも正しい道を歩く事をやめなかった男。


 光線龍、テリオ・ネスティマス。


「あれ、久しぶりだね。スタルギ君」


 光線龍はそう言いながら、指からビームを放ち凍っていた無限龍を呼び起こす。


 均衡が完全に崩れた。


「なんで……お前がっ……!?」


 なんで、型無に組みしたのか。

 なんで、型無に良いように使われているのか。

 なんで、平気で無限龍を撃ち抜くのか。


 言いたい事が色々あり過ぎて、頭がグルグルと回る。


「これ以上の数を凍らせるのは無理だ!」


 コウジがそう叫ぶが、光線龍は無情にも無限龍を撃ち抜いていく。


 コウジが必死に結晶化・異形化の力を使い、無限龍をその場に留まらすが、限界が来たようだ。

 凍り切らなかった無限龍がコウジを蹴とばす。


 コウジは物凄い勢いで飛んで行き、出入り口の扉にぶつかり地面に落ちる。


 コウジが居なくなった事で押さえを失くした無限龍が一斉に暴れ出す。


「ムエエ――!?」


 それはラフティリの元にも飛び火し、俺も五人くらいの無限龍に囲まれた。


「なんでって……仲間がピンチだからさ? 助けに行くのが構成員としての務めだしさ」

「お前はテリオ・ネスティマス。竜王家を導く光だろ!」

「いや、私はただのテリオ。導くのは型無の人達だけさ」

「いやっ! お前は、俺達の光であろうとしたはずだ!!」

「うーん、うるさい」


 光線龍がこちらに照準を合わせてビームを数発放つ。

 無限龍に囲まれている事で満足に動けない俺は、ビームを数発食らってしまった。


 あのテリオが兄妹に攻撃するなんて信じられない。

 魂が入れ替わっても身体が拒否するはずだ。


「うん、ここに居る人達は皆適正がありそうな上に、二人は異形化経験者みたいだね。全員回収しようか」


 光線龍が絶望的な言葉を発する。


 これで終わりか……。

 時空龍の言ったように終わってしまうのか……。


 ――バン。


 扉を開く音が聞こえた。


「アギオさん、急いで急いで! ここにコウジが居るはずなんだからさ!」

「焦らすな。どうせ急いだ所で誰も何も逃げやしない」

「ダフティも急いで急いで! 一か月くらい行方不明になっていた僕達の友達ラフティーもいるんだよ! ……て、えー!? なんかメロシィーちゃんが倒れているんだけど!」


 騒ぎながら入って来た奴が、メロシィヌを抱き抱え安否の心配をする。


「俺は大丈夫だ。それよりも――」

「俺? メロシィーちゃん自分の事俺なんて言ったっけ? それに微妙に声も違うような……」

「コウジ様お得意の憑依ってものかもしれませんね、ブラリ様」



「まさか、ブラリ……?」



「うん? 僕の事? 僕なら、ブラリ・スイザウロ。十六歳。スイザウロ学園の逆問題児とも呼ばれているね」











五章 龍と龍と龍と竜と竜の円舞曲
























「さあ、そろそろお目覚めの時間だよ。自分のことは分かる?」


 ……ぼーっとした頭に声が響く。


 なんだか久しぶりに声を聞いた気がした。


「その感じじゃ無理そうだね。もう少ししたら話そうか」

「自分の事は分からないけど、何をすれば良いかは分かる」


「守れば良い。家族の事を」



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