ロジャートとの出会い
話し合いが終わったあと、俺達は2階へと案内された。
「出発は明日だから、今日はゆっくり休むといい。じゃあ、何かあったらまた呼んでくれ」
そうしてエレニアは1階に戻っていく。残された俺たちは、それぞれの部屋へと行く。俺とジェームスは同部屋だ。
部屋へもどる前に、俺はシズクが仕事へ戻ろうとしたのを引き止めた。
「シズク。その写真代の弁償というのはあとどのぐらい働けばいいんだ?」
「んー・・・一週間って言ってた」
「結構な額だったんだな。じゃあ頑張ってこい」
そうしてシズクが仕事へと戻る。相変わらずやる気のない声だったが、接客するぐらいは問題ないだろう。
ソフィアさんからもらったお金で返してもよかったが、シズクが自分で蒔いた種だ。俺が出すのは間違っているだろう。それに俺の金じゃないし。
あまり他人と馴れ合うのが嫌いなシズクにとってもいい経験となるはずだ。
「さーてと。まだ時間はたくさんあるからさ、ちょっとこの辺散策しに行かね?」
「勝手に外へ出ていいのか?」
「そりゃ許可は取りに行くさ。というわけで行こうぜ」
俺はジェームスに誘われて街を散策することになった。ソフィアさんに許可をもらったあと、店をあとにする。レミリーも行きたそうにしていたが、
ソフィアさんから話があると言われ、連れて行かれた。
「とりあえず何か食おうぜ」
「ついさっき昼食だっただろ」
「今からのは別腹だ」
こいつは一体どれだけ食い意地がはってるんだ。食欲はリリカといい勝負をしているぞ。
そうして食品屋から適当に食べ物を買って食べながら、俺たちは大通りを歩いていく。道行く女性たちがちらちらとこちらを見てくるのが気になった。
「なぁ、なんか俺たち見られてないか?」
「あ?多分見てるのは俺じゃなくてユウトだろうよ。お前わかってて言ってるだろ」
「ん?」
「いや、もういいわ・・・」
そうしてジェームスとどうでもいい話をしながら歩いていると、ふと気になる話が聞こえてきた。
「また誰かがゾルバ団に殺されたらしいぞ」
「うそだろ・・・その情報は確かか?」
「さぁ・・・俺も詳しくは知らん。それに噂だし」
ゾルバ団?変な名前だな・・・。
気になった俺はジェームスに聞いてみる。
「ゾルバ団って何だ?」
すると口いっぱいにホットドックを詰め込んでいたジェームスが飲み込むと、こう言った。
「俺もソフィア姉さんから知らされた程度で詳しくは知らんが、まあ単刀直入に言うとオカルト集団だな。竜族を信仰していて、そこのトップは竜族だって噂もあるけどまあ嘘だろ。ただ、王族に噛み付くこともあるから、王宮の人達からは警戒されてるな。ま、とは言っても王宮は円卓の騎士様と現勇者によって守られてるから突破するのはまず無理だろうけどな」
「なるほど」
この前読んだ本には竜族は滅んだって書いてあるから竜族ということはないだろう。
しかし、ゾルバ団か・・・。何か胸騒ぎがするのは気のせいか。
「どうした?」
「いや、なんでもない。この後はどうする」
「ん~もう少しぶらぶらしようぜ」
そうして俺たちは2人でひとしきり街を回ったあと、再びエレニアの店へと帰ろうとしたところで、ある武器屋が目に入った。
「おい、ユウト。武器屋があるぞ。お前今何も武器を身につけてないし、この際何か買ってみたらどうだ?」
「そうだな」
確かに俺は今丸腰の状態だ。武術が特に優れているわけでもないので、今襲われたら危ないだろう。それにソフィアさんからお金はたくさん頂いている。
ちょうどいいと思った俺は武器屋内へと入った。
「おーいっぱいあるなぁ。俺も何か買おうかな~」
剣、槍、斧、レイピア・・・安いものから高価なものまでたくさんあった。
俺はじっくりと、品定めをしていく。安いからといって決して粗悪なわけではない。高いものでもコレクションとして置いておくようのものもあるし、切れ味の悪いものもある。
その中で俺はある一本の武器に目を惹かれる。
「これは・・・刀か」
「おーお客さん。刀を知ってらっしゃるんで?これは海に囲まれた大陸から輸入してきた一品でね。これが最後の一本でさぁ」
海に囲まれた大陸・・・。聞いたことがある。
「ユウト、この武器を知っているのか?」
「ああ。本で読んだことがある。確か日本とかいう国で使われているものだな・・・」
「日本・・・」
「俺も本での知識程度しか知らないが、何でも武士と呼ばれる人達が身につけているものらしい」
「ふーん・・・」
しかし、そんなものがここに売っているとは・・・。
刀には、鍛冶屋の魂がこもっていると聞く。だから切れ味も相当鋭いものだと。
・・・。
・・・・・・。
「よし、これを買うよ」
そうして刀を一本買った俺は、店を出る。遅れて、ジェームスもやってきた。俺の刀を興味深そうに見ている。
「珍しい武器を使うんだなぁ・・・」
「俺も触れるのは初めてだ」
「ふーん・・・」
そうして武器を買い終えた俺たちは、再びエレニアのお店へと戻り、休憩した後、夕食をとり明日に備えて皆各々の部屋へと戻っていく。刀を見たソフィアさんはやはり珍しそうに見ていた。しかし、どうやらエレニアもこっちに来てからは刀を使っているらしく、色々とアドバイスをされた。
早いとこ鍛錬もしていかないとな・・・。
そうして出発の朝はすぐにやってきた。
軽めの朝食をとった後、俺たちはすぐに出発した。
弁償の件については、一旦保留にすることにして、シズクもついてくることになった。
「そんなに遠くもないので歩こうと思うが、問題はないな?」
「勿論よ。もう馬車での移動は飽きたもの」
「安全面的には馬車の方が良いですが、お嬢様がそういうなら」
満場一致で歩くことに。とはいえ、たったの1kmなので、30分ほどですぐについた。そこは、レミリーの屋敷にも劣るものの、そこそこの大きさを誇る屋敷だった。
「なぁあれ、門前にメイドがいるような気がするのは気のせいか?」
背の小さいメイドが周囲を警戒していた。
「ああ。あれは警備兵だよ。ったく相変わらず変態な趣味してるよあいつは・・・」
「メイドの警備兵・・・」
そうして視線がソフィアさんに集中する。
「なんですか?」
「いえ、なんでも」
「じゃあ中に入るぞ」
エレニアにそう言われ、門内へと入って行く。エレニアと一緒だからだろうか、すんなり通してもらえた。
花壇や噴水をこえて屋敷へと入る。すると、そこでは働いている小さきメイド達の姿が。というかメイドしかいない。
エントランスを進み、渡り廊下を通り、書斎へと入る。
「なんで書斎に?」
「ん?そりゃあいつは十中八九ここで寝てるだろうからな・・・っとやっぱりか」
エレニアは山積みになった本をどかしていく。すると、本に埋もれている男を発見した。男はテーブルにうつ伏せになった状態で爆睡している。
「おい、ロジャート!起きろ」
「んぁ・・・?」
エレニアが大声を出すと、男はゆっくりと起き上がる。そして傍に置いてあるメガネをかけると、こちらを振り向いた。
「エレニアじゃないか。こんな朝早くにどうしたんだ?」
「昨日連絡しただろ。匿って欲しい人たちがいるって」
寝起きだというのに、ハキハキとした言動で聞いてくるロジャートという男。髪はボサボサで寝癖がつきまくっている。
つづいて男はこちらの存在に気づいた。
「ふむ・・・」
男は俺達のつま先から頭まで一人ずつゆっくりと見たあと、ため息をついた。
「なんだ。ちっぱいじゃないのか・・・。ざんね―ぐはっ!?」
「え?」
「お嬢の前でなんてこと言うんだお前は!」
エレニアがロジャートを殴って黙らせる。レミリーは意味がわかっていないようで首をかしげていた。
ロジャートは飛ばされたメガネを拾い、再びかける。殴られた箇所を痛そうにさすりながらこう言った。
「エレニアが殴ってくれたお陰ではっきりと思い出したよ・・・。じゃあ君がエミリーくんだね?君のことはエレニアから色々と聞いてるよ。
どうやらちょっと面倒なことになったみたいだね」
そうして握手を交わすロジャートとレミリー。
「はい。ですが宜しいのでしょうか。私の我が儘でこのようなことをしていただいて」
「なぁに、エレニアには大きな借りがあるからね。それを返せると思えばたやすいご用だよ。しかし、こんな朝早くに来るとは思わなかったよ。
知っていたらちゃんともてなしたのに」
「ロジャート、また研究か?」
エレニアがそう質問すると、ロジャートは頷く。
「まあとりあえずこんな汚いところじゃなくて客間に案内するよ。
そこで詳しい話をしたいと思う」
そうして俺たちはロジャートに案内されて客間へと向かった。




