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俺が眷属になったら何故か弱くなりました。  作者: リザイン
第一章 吸血鬼と婚約者
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可愛い子には刺がある

「ふむ・・・」


 客間へと着いた俺達は自己紹介した後、さっそく事情を説明した。

どうやらエレニアが軽く説明はしていたようで、そこまで驚くことはなかった。

 レミリーの説明が終わったあと、ロジャートはメイドに紅茶セットを持ってくるように頼んだ。ほどなくして全員分の紅茶がテーブルに置かれると、やっとのことで口を開く。


「事情は大体わかったよ。

 さっきも言ったけど匿うぐらいなら全然構わないさ。

 落ち着くまでここで過ごすといい」

「お前にしては珍しいじゃないか。普段なら、対価を要求してくるのに」

「まあ、エレニアには借りがあるからね・・・。今回は特別だよ。

 ただ、セキュリティには細心の注意を払っているけれど、最近変な事件が発生しているから気をつけたほうがいい」

「変な事件?」


 俺がロジャートに聞き返すと、ロジャートは頷いた。


「君たち、ゾルバ団って知ってるだろ?」

「ゾルバ団・・・?あぁ、ジェームスが教えてくれたやつか」

「そのゾルバ団が最近民家に乗り込んでは金品を奪って行くという事件が多発しているんだ。しかも抵抗した一部の市民は殺されてね」

「―!?」


 昨日市民が言っていたことか・・・。しかしこんな都市部にそんな野蛮な連中がいるとは。

 殺された、という説明に皆の表情に緊張が走る。

 シズクは、特に興味もないのか窓の外で飛んでいる鳥をじっと眺めていた。どことなくつまらなさそうだ。

 そして、次に口を開いたのはエレニアだった。


「その件については私も一応調べていてな。現状だと盗まれたと報告があった件数が10件、そのうち殺されたのが7名だ。死因は全員、何者かによる刺殺。犯人はまだ捕まっていないから役所には市民たちから苦情が殺到しているらしい」

「なんだそれ。恐ろしい事件だな」

「ああ。

 こんなことをするのはゾルバ団ぐらいしかいないのに、肝心の奴らは関係がないの一点張りだからな。つまり、証拠がない」

「なるほど・・・」


 その後も詳しい話を聞いた結果わかったことは、

 どうやらそのゾルバ団っていう人達はかなり嫌われているらしい。というのも、ゾルバ団の連中は血の気が荒いやつが多く逆らった者を殴り殺すということも少なくないらしい。それなら普通街の治安部隊が捕らえに行きそうなものだが、ゾルバ団の連中は普段は雲隠れしており、アジトが何処にいるかもわかっていないらしく、治安部隊も血眼になって探しているとのこと。

 そのような連中が跋扈(バッコ)しているおかげで最近引っ越す者があとを絶たないという。栄えているようにも見えたこの街にも闇はあったということだ。確かに昨日ジェームスと街を回ったとき、ちらほら空き家があったのを思い出した。

 

「まあ僕のとこの警備も完璧というわけではないから、みんなも十分気をつけて、自分の身は自分で守るようにしてくれ。僕からは以上だよ」


 そうして紅茶を飲み始めるロジャート。傍にある書類に目を通しながら、黙ってしまった。

 俺は、窓辺でぼーっとしているシズクに近づくと、既に冷めている紅茶を渡した。


「ユウト?」

「何してるんだ?」

「別に。ただ、人間界はつまらないなって思っただけ」

「そういうなよ。暫くはこっちで過ごすことになるのだろうし」

「・・・帰りたい」


 シズクは昨日からずっとレミリー達の会話に混じることがなかった。俺が呼べば一応そばには来るものの、大抵は一人で端の方でおとなしくしている。人見知りが激しいだけなのか、それとも人間が嫌いなのか・・・。


「でもまさかシズクがバイトをちゃんとするなんて思わなかった」

「どう言う意味?」


 少し睨んでくるシズクを無視しつつ、続ける。


「お前なら関わりたくないとか言ってそのまま逃げると思ってた」

「・・・最初はそうしようと思ってた。けどあの女、相当な手練れ。逃げようとしたら私も無傷じゃいられない可能性が高い」

「お前もそう思ったか。多分俺じゃ全く歯が立たない。まあ、今なら尚更勝てない」

「それは当たり前」

「・・・」


 そうしてシズクは紅茶を飲むと、立ち上がった。


「何処に行くんだ?」

「散歩」

「じゃあ俺も行こう」

「・・・ストーカー?」

「違うわ!」


 俺も立ち上がると、先に客間から出たシズクを追いつく。ジェームスも付いてきた。


「ユウト、散歩なら俺も付き合うぜ」

「俺じゃなくてシズクな」

「細かいことはいいじゃないか」

「・・・」

 

そうして3人で屋敷内を歩いていく。メイド達がしっかり掃除しているおかげか、内装はとても綺麗だ。

 しかし、ひとつ気がかりなことがあった。


「なぁ、なんでこの屋敷はメイドしかいないんだ?」

「俺に言われてもな。けど皆ちっちゃくて可愛いな~」



 右にシズク、左にジェームスという立ち位置の状態で、俺たちは歩き続ける。俺がシズクと一緒に来たのには理由がある。

 というのも、シズクの念話がもし通じるようになればユキとリリカに合流するのが容易になるからだ。

 というわけで俺はシズクに聞いてみることにした。


「シズク。まだ念話は通じない状態か?」


 するとシズクは頷いた。


「ずっとかけてるけど、通じない」

「ユキはともかく、リリカは応答率いいんだけどな。何かに巻き込まれたのだろうか」

「わからない。だから私も心配」


 二人のことだからなんとか生きてはいるだろうが・・・。早いところ見つけないと。あいつらはいい意味でも悪い意味でも目立つからな。もし目をつけられたら確実に面倒だ。特にリリカは普通に喧嘩を売りに行きそうで心配だ。

 そうしてシズクと話し終えたあと、それを見計らってジェームスも話に参加してくる。


「そういえばさ、俺とシズクちゃんってこうして面と向かって会うのは今日が初めてじゃないか?ほら、昨日はごたごたして話せなかったし」

「そうだったか?じゃあ一応紹介しておいたほうがいいか。

 シズク。こいつは、レミリーの護衛をしてるジェームスってやつだ」

「よろしくな、シズクちゃん」


 そうしてジェームスが握手を求めるが、シズクは無視。そのまま先に行ってしまう。俺とジェームスは慌てて追いかける。


「あれ?もしかして聞こえてなかったか?シズクちゃん。俺がユウトの友達のジェーム――」

「うるさい・・・」

「えっ」


 静かに怒りを表すシズク。


「・・・私に話しかけないで。それによろしくするつもりもないから」

「おい、流石にその言い草は」

「・・・ユウト以外の男は信用できない」

「シズクちゃん、もしかして怒って――」


 ジェームスがそう言おうとした瞬間、彼の首元には俺の刀の刃金があてられていた。シズクが抜いてジェームスにあてたのだ。


「次私の名前を呼んだら、貴方の首を撥(ハ)ねる・・・」

「そ、そんなに怒らなくても・・・」


 突然のできごとにジェームスは、剣を抜くこともできず突っ立ったままだった。明らかに顔が青ざめている。


「じゃあ、苗字を教えてもらえると、俺、嬉しいかな~なんて・・・」


 シズクは鼻で笑うとこう言った。


「・・・話すこともない人になぜ苗字を教えなければならないの?」

「・・・」


 そう言ってシズクは俺の鞘に刀を収める。

 ジェームスが胸をなでおろす。


「いやぁ、えっと君結構な手練だね。まさか一瞬で俺の間合いに入るとは・・・」

「シズクは元々暗殺を職業としていたからな。それに加えて俺が鍛錬したというのもあるが。だから相手に隙があればそれこそまばたきをする間に間合いに入り込まれる」


 俺も最初はシズクに間合いにはいられないようにするのが大変だったからな。

 しかしそれにしても何故シズクはこうも身内以外に対しては攻撃的なのか・・・。いや、でもレミリーとは普通に話していたよな・・・。

 気分を害したのか、シズクは自身に透明(ステルス)の魔法を唱えると、何処かに行ってしまった。

 ジェームスを見ると、あからさまに落ち込んでいる。


「俺、シズクちゃんに嫌われた・・・・?」

「なんとも言えないな・・・。でも俺も最初はあんな感じだったぞ」


 シズクは元々敵だったからな。最初に比べれば今の態度はまだ軟化したほうだと思う。

 

「うー・・・。ユウト。シズクちゃんの苗字はなんていうんだ?」

「残念だがそれは教えられない。知りたかったら本人に聞け」


 それにシズクはシズクであって、苗字などないからな・・・。

つまり何が言いたいかというと、シズクはジェームスとは関わりたくないってことだ。


「ちょ、だって聞こうとしたら俺今度こそ殺されるって!多分というか絶対シズクちゃん、俺より数倍は強いよ。さっきのも、一歩間違えれば俺殺されてた」


 それはジェームスに隙がありすぎるからだろう・・・。シズクは相手の隙を見つけてそこに入り込むのが達人なだけで、隙さえ見せなければジェームスでもいい勝負ができると思うんだが。


「でもシズクちゃんも、お嬢様に劣らずすごい可愛いよな。

 ユウトは一体どうやってあんな可愛い子とお知り合いになったんだよ」

「しらん」


 そうして羨ましそうに見てくるジェームスを無視して、俺はしばらく屋敷を回ったあと、再びレミリー達がいる場所へと向かった。

  




 










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