こんなとこにいるとは・・・
ついにあの子が登場!
馬車を走らせること数時間。俺達は大都市エクセラルードへとたどり着いた。門番がソフィアさんに何かを確認したあと、兵士が馬車の扉を開け、こちらを確認した。
不審物がないか確認すると、扉を閉める。そしてソフィアさんに一礼すると、門番の兵士たちがどいた。
そのまま中へと入っていくと、人々の楽しそうな声が聞こえてくる。
「さすが大都市と言われるだけあって人で賑わっているな」
この前のヴォルグタウンも賑やかだったがそれを上回っている。それだけ栄えている都市なんだろう。
外の騒々しい声により、ジェームスが目を覚ました。
「んぁ・・・もう着いたのか?」
「おい・・・よだれ出てるぞ。汚いな」
「わりぃ」
そう言ってタオルでよだれを拭くジェームス。
「店はどの辺にあるんだ?」
「ソフィアに写真を渡してるから、今探してくれているわ」
馬車はそのまま街の中心にまで進んでいく。近くに噴水があり、子供たちが元気に遊んでいる。騎士の姿も見えた。やたらと重装備で、結構辛そうだ。ああいう装備は苦手なんだよな。
広場にて馬車を止めると、ソフィアさんが小屋に馬を連れて行く。
「着いたみたいね。出ましょう」
そう言われて俺達は馬車の外へと出る。
「あ~やっぱ外は気持ちいいな!馬車の中だと揺れっぱなしで少し酔っちまったぜ」
冬の寒さに負けないぐらい太陽が照っており、眩しかった。
ソフィアさんが戻ってくる。
「ここからは歩きます」
「ん~!空気が心地良いわ」
レミリーは背伸びをすると、開放感溢れる外に目を輝かせる。
レミリーの隣にソフィアさんが付くと、俺達は目的へと向かっていく。
レミリーの白銀の髪はとても目立つ上に、メイドと騎士を連れているためか、道中、彼女は当然注目を浴びることとなった。道行く男たちはレミリーやソフィアさんの美貌に振り返り、見惚れるものまでいた。
「レミリー、注目を浴びているようだな」
「仕方ないわ。私の髪は目立つもの。それに長い間外に出られなかったから肌も白いし」
それもあるが一番の要因は彼女の可愛さにあるということを本人は自覚していない。まあ、自身の可愛さを鼻にかけるような奴よりは断然良いが。
「・・・周囲に怪しい者はいないようです。少し警戒レベルを下げましょう。
まぁ、一部不埒な表情でお嬢様を見ている者がいますが」
「しょうがねぇさ。お嬢様は可愛いんだから。それにソフィア姉さんに対しても、見惚れてる奴いるぜ」
「え・・・」
ソフィアさんが何故か一瞬狼狽えた。
ん・・・?こういう時ソフィアさんなら別にそんなことどうでもいいですとか言いそうなものなのに。恥ずかしいのか?
ソフィアさんは顔を隠すように写真を見て、店がないかチェックしていく。
そうして歩き続けて数分、ソフィアさんがあるお店の前で止まった。
「・・・ここですね」
「中々綺麗なお店じゃない」
「飲食店エレニアだって。あの人、自分の名前を店名にしちゃったのかよ」
そうして俺達は中へと入って行く。いらっしゃいませーという声と共に店員が現れた。
レミリーが前に出る。
「エレニア=ローズアルデヒドはここにいるかしら?」
「店長ですか?はい奥にいらっしゃいますが・・・」
「良かった。じゃあ入らせてもらうわね」
そうして俺達4人は奥へと入って行く。昼食時なのか、店内はそれなりに客が入っていた。
奥には、一人の女性が料理を作っている最中だった。目には髑髏マークの入った眼帯を付けている。
「いらっしゃい。何名様―――」
そしてレミリーを見て目を見開かせた。
「久しぶりね。エレニア。覚えているかしら」
「お嬢!!!」
エレニアは料理の手を止めて、店員に見ておくように言うと、こちらへとやってくる。そしてレミリーの頭から足先までを見た。
「まさか本当に来てくれるとは思わなかったよ。それにまたすごい綺麗になった」
「ありがとう」
二人は握手を交わす。そして今度はソフィアさんを見た。
「ソフィアも久しぶりだな。元気にしていたか?」
「ええ、元気です。それにしっかりと護衛させていただいています」
「そりゃソフィアに護衛されるほど頼もしいものはないさ。私も安心して任せられたからな」
そうして笑うエレニア。男勝りな口調だが、非常に引き締まった体型をしていて、体をなまらせないよう鍛錬を積んでいるという想像が容易にできた。あと胸がでかい。
続いてエレニアはジェームスにも気づく。
「お、おお・・・?えっと」
名前を当てようとしているのか、考え込むエレニア。
「ジェームスですエレニア姉さん。いい加減名前覚えてくださいよ」
「そうだった、ジェームスだ!相変わらず女に飢えてそうな顔をしているな!」
「ええそりゃもう・・・。なので姉さんが相手してくださいよ」
ジェームスがそう言うとエレニアが高く笑った。
「ハッハッハ!お前が私より強くなったら考えんでもないぞ」
「なるほど。つまり相手する気なんてないってことかよ・・・。くそぉ・・・」
ジェームスは悔しがった。それに考えんでもないぞってことは例えジェームスがこの人より強くなったとしても全く考えない可能性もあるってわけだ・・・ジェームス、頑張れ。
最後に、エレニアはこちらに気づいた。
「ん?随分男前な奴がいるじゃないか。お嬢、こいつはどうしたんだ?もしかして、お嬢のコレかな?」
そうしてエレニアが小指を立てる。
どう言う意味かはわからないが、何故かレミリーが顔を赤くした。
「違うわ。彼は、最近入ってきた私の護衛騎士よ」
「ふーん、なるほどねぇ・・・。
じゃあ改めて、エレニア=ローズアルデヒドだ。ここで飲食店を経営している。以前まではお嬢の護衛騎士をしていたが、色々あってこっちに来たんだ」
そうして握手を求められたため、俺は握り返す。
護衛騎士をしていたという割には、手は全然ゴツくなく、女性らしい、柔らかい感触だった。
「ユウト=ヴィルヘルムだ。宜しく」
そうしてひとしきり紹介を終えたあと、俺達は席へと着いた。
「でもお嬢。外に出て大丈夫だったの?」
「ん・・・まぁそれがちょっと色々あって」
そうしてレミリーはエレニアに簡単に事情を説明した。大丈夫かと思ったが、エレニアもレミリーが吸血鬼であることを知っていたため、すんなり話が通じた。
「なるほど・・・そんなことが。じゃあさしづめユウトはお嬢にとって救世主ってわけになったんだな」
ソフィアさんと同じことを言われる。俺はどう反応していいか分からず、頭を掻いた。
「ええ。彼は私の命の恩人よ」
「おおー・・・」
そうして、エレニアが耳打ちしてくる。
「ユウト、こりゃもうちょっと頑張ればお嬢をおとせるぞ。是非頑張ってくれ」
思わずコーヒーを吹き出しそうになった。
「聞こえてるわよエレニア」
「ん?ごめんごめん」
エレニアが舌を出してごまかす。淡々と言ったつもりだったのだろうが、レミリーの顔は赤くなっていた。それを見て、エレニアがにやにやと笑う。・・・こっち見んな。
「でもどうして突然こっちに来たんだ?何かあったのか?」
「ん、ああ・・・それはね」
そうしてレミリーは婚約が嫌で逃げ出したことを伝える。すると、エレニアがため息をついた。
「あら・・・、あいつまだお嬢に求婚してたんだ。折れないね」
「もはやただのストーカー野郎ですよ。きもいっす」
「私がなんとかしてあげたかったのですが、家の事情に介入することは私でも不可能でした」
「ふーん・・・。で、まあそれが嫌で逃げ出したってわけか」
・・・そうだな、まあ他ならぬお嬢の頼み。私が一肌脱ごうじゃないか」
「本当?ありがとう!」
「任せてくれ。でもとりあえず、長旅でお腹も空いているだろうし、私がみんなにご馳走しよう。勿論無料だ」
その言葉にジェームスが飛び上がって喜んだ。しかしレミリーは首を横に振る。
「流石にそんなことはできないわ。ちゃんとお金は払うから」
「ん・・・?そうか。じゃあまあ、お値段に見合った美味い料理提供するからさ!!」
そう言うと、やけにあっさり引き下がるエレニア。
そうして厨房へと引っ込んでいった。
料理が出来るまでの間、俺達は他愛ない話で盛り上がる。たまにソフィアさんもクスっと笑ったのが意外だったが、俺達はくつろぐことができた。
そうしている間に、料理が運ばれてきた。
「お待たせしましたー」
随分やる気のない声だな・・・。
それに何処かで聞いたことのある声だ。
そう思い顔を上げた時、そこに立っていた人を見て俺は思わず手に持っていたコップを落とした。
コップはひっくり返り、そのままテーブルを転がると、床に落ちて割れてしまった。
しかし、そんなことはどうでもよかった。
なぜならそこには一緒に人間界へと飛ばされた、シズクがいたからだ。




